羽生雅の雑多話

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宝塚メモ~ついに「GOD OF STARS」と冠される域にまで達した、たたき上げのトップスター、紅ゆずる

 もう半月以上前のことで公演もすでに終わっていますが、ベニーこと紅ゆずるさんのサヨナラ公演に行ってきました。演目は「GOD OF STARS―食聖―」と「Éclair Brillant(エクレール ブリアン)」。

 

 いやぁ、おもしろかった。紅ゆずるの持ち味全開でしたね。フルスロットル。結果、ベニーがトップのあいだの公演は、再演ではなく書き下ろしは全部おもしろかったということになりました。大したものです。あの公演を観て、紅ゆずるが魅力のないトップスターだという人がいるでしょうか。本当に好き嫌いを超越して人を魅了する真のエンターテイナーだと思いました。ベニーは特別好きというわけではないのに、観ればおもしろいことはわかっているので、星組観たい、外せないという感じ。そう思わせることのできるトップスターが、果たしてどれぐらいいるでしょうか。トップスターの一つの在り方、一つの形を見せてくれました。

 

 芝居、ショーともに全体を通して見られる、キレキレのメリハリがあるポージング、決めポーズのカッコよさ、正統派トップスターの柔らかさとノーブルな雰囲気、どれをとっても見事でした。コメディエンヌとして見せる三枚目ぶりと黒燕尾姿に代表される二枚目ぶりは、まさにギャップ萌え(笑)。今回一番印象的だったショーのボレロの場面は、紅ゆずるのビジュアルの端整さなくしては成り立ちません。観客に見られることを意識した、観客を魅せることに徹した、まさしくプロフェッショナル。宝塚で感心するほどプロだと思わされることはあまりないのですが、最近だと、みっちゃん(北翔海莉さん)の歌とチギ(早霧せいなさん)の身体能力を駆使した芝居に匹敵するようなプロ魂を感じましたね。

 

 そんなベニーの下で二番手をやれて、こと(礼真琴さん)も幸せだったと思います。優秀なので歌、ダンス、芝居すべてにおいてソツがない彼女ですが、特にファンというわけではないのに見ずにいられない魅力を放つスター、ファンではない人まで惹きつける抜きん出た特別なものというものがどれほど稀有で大事か、紅ゆずるを一番近くで見てきて、一番多く絡ませてもらったことで、わかったと思います。今回のお芝居は十分ベニーと向こうを張っていました――リー・ロンロンの気弱さを表すクネクネとした動きも含めて。芸事においては三拍子そろっていて何でもできると思うので、トップスター就任後の幅広い活躍を楽しみにしています。

 

 最後に特筆すべきは、みつる(華形ひかるさん)。相変わらず存在感の大きさを感じました。芝居はベニー演じる料理人ホン・シンシンの育ての親兼元雇い主というキーマンで、脇固めでも老け役でもない、どう見ても別格スター。とても専科とは思えません。裏を返せば、星組の組子は人材不足ということかもしれませんが、紅ゆずるというGOD OF STARSがもたらした星組の新しい魅力である、他組にはないおもしろさ――コメディセンスを、これからも失わずにいってほしいと思います。