羽生雅の雑多話

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京都寺社遠征&明智光秀紀行6 番外編~展覧会「若冲誕生~葛藤の向こうがわ~」in福田美術館

 嵐山にある福田美術館では、3月28日から7月26日まで「若冲誕生~葛藤の向こうがわ~」という展覧会が開催され、昨年新たに発見された「蕪に双鶏図」が展示されていました。2019年5月、関西在住の個人が所蔵していたものを、10月にオープン予定だった福田美術館が買い取ったもので、今回が初公開です。発見当時はネットなどでもけっこう話題になり、私もそのニュースを仕事仲間から聞かされて、今や人気が定着して誰もが認めるメジャー絵師の若冲ですが「まだまだ作品が埋もれていて、新しい物が出てくるんだ」と思ったのをおぼえています。三十代の作と想定できる最初期の彩色画ですが、若くても未熟でも、若冲若冲。病的なまでの細かさは、この頃から存分に発揮されていました。鋭い観察眼と巧みな表現力は天性のもので、長年修業したからといって得られるものではないのだと思います。才能というものは、もともとあるものが何かをきっかけに現れたり、熟成されて開花することはあっても、何の種や兆しもないところから生まれたりすることはないのかもしれません。

f:id:hanyu_ya:20210102204542j:plain伊藤若冲「蕪に双鶏図」。雄鶏と蕪の葉の表現が、いかにも若冲

f:id:hanyu_ya:20200807154936j:plain特に鶏冠から首は若冲の真骨頂。しいて言えば、少々真面目過ぎて、かたさが感じられるというところ。けれども、それが若さであり、若さの良さかもしれません。

f:id:hanyu_ya:20200807155154j:plain伊藤若冲「松に鸚鵡図」

f:id:hanyu_ya:20200807164720j:plain鸚鵡は薄く塗られた胡粉の上から極細の線を重ねて羽毛の柔らかさを表現しています。

f:id:hanyu_ya:20200807164821j:plain白隠慧鶴「楊柳観音図」。白隠禅師の絵、大好きです。円空仏と同じような味わいがあります。計算されたヘタウマさというような。

f:id:hanyu_ya:20200807164902j:plain伊藤若冲「芦葉達磨図」。禅宗の祖である達磨が一本の葦に乗って揚子江を渡ったという逸話が題材で、省略化と誇張表現に白隠や仙厓の影響が感じられる一枚。超細密な鶏図を得意とする若冲ですが、屏風絵などに見られるとぼけた鶏の表情は、細密鶏図にこのあたりの感覚が入り混じった結果、生まれたものなのかもしれません。技巧的な部分はあまり感じられませんが、作品解説によれば、衣の襞の「筋目描き」は、墨の濃さ、水の量をコントロールしなければ描けないものとのこと。ちなみに、賛は狂歌師で幕府御家人の「蜀山人」こと太田南畝。若冲の交友関係が偲ばれ、商人上がりの市政の絵師でありながら、その実力は正当に評価されて、名高い文化人にも一目置かれていたと想像されます。

f:id:hanyu_ya:20200807165123j:plain伊藤若冲「四季花鳥押絵貼図屏風」より。若冲45歳の時の作品。繊細緻密な「蕪に双鶏図」と白隠タッチの「芦葉達磨図」両方のテイストが見られ、この頃には二つの異なる表現方法を同時に取り入れることが可能になったことがわかります。

f:id:hanyu_ya:20200807165226j:plain伊藤若冲「布袋図」

f:id:hanyu_ya:20200807173226j:plain伊藤若冲「髑髏図」。若冲が描いた下絵をもとに彫られた版木で摺られた木版画。先鋭的というか、ホント尖っています。賛の署名は「高遊外」。煎茶道の祖といわれる売茶翁のことです。

 

 その他、曾我蕭白などの作品も展示されていましたが、若冲白隠を観たあとではインパクトが弱く、あまり印象に残りませんでした。それでも十分楽しめました。