久しぶりの遠征記です。あまりに更新がないので、友人から「無事に生きているのか?」などというメールも来ましたが、相変わらず忙しく、特に変わりなく生きています。
さて、先週末は善光寺に行ってきました。昔はよくお参りをしたお気に入りの寺なので、そろそろ光雲の仁王像が見たい、お戒壇巡りがしたいと思っていたのですが、思っているうちにあっという間にけっこうな年月が経ってしまいました。今年は7年ぶりの御開帳で、コロナ感染対策の外出制限もなくなったので、行くしかないだろうと思い、約9年ぶりに足を運びました。
1月に彦根に行ったあと、2月は動けませんでしたが、3月は二週連続遠征で京都と出雲、4月は愛宕神社&春日大社、5月は福岡&高千穂に行き、合間に花見や宝塚観劇、ラニバin東京ドーム参戦など、例のごとくバダバタしていたら、気が付けば6月。4月3日からの御開帳も今月29日までなので、参拝に向けて御開帳に関する情報収集を始めたら、善光寺のホームページに混雑情報があり、土日はとんでもない混み方をしていたので、なんとか平日に行けないかと仕事を調整し、休める金曜が10日ぐらいだったので、慌ててホテルを手配。善光寺なら日帰りで行けるのですが、せっかく長野まで出向くのなら穂高神社にも行きたいと思い、一泊二日にしました。……なのですが、土曜の天気は雨の予報で、二日前になっても変わらなかったので、松本まで足を延ばすのは断念。信濃四宮で名神大社の武水別神社か上田城、または曇りの予報の高崎で途中下車して上野一宮の貫前神社にでも行くことにしました。雨の日に上高地に行っても楽しくないので。
ということで、木曜は翌日休みにするため9時ぐらいまで仕事をする羽目になり、金曜の朝はとても早起きできず、オンライン購入後Suicaに登録するeチケットで大宮発11時29分の北陸新幹線に乗車。eチケットは変更できる点は便利なのですが、乗車券が特急券と同区間しか購入できないため、乗車駅から下車駅まで通しで買えず、また気が変わっても途中下車とかできないところが不便といえば不便。なので、ウェブで予約しても、なるべく紙の切符を取ることにしているのですが、今回は窓口に行っている時間がありませんでした。長野駅に12時47分に到着し、昼食は車内でタカラ缶チューハイを飲みながら駅弁を食べたので、駅前のホテルに寄って荷物を預かってもらうと、すぐに善光寺方面行きバス乗り場へ。善光寺大門バス停で下車し、大門から表参道を歩いたのですが、仁王門を過ぎた仲見世から回向柱待ちの列が始まっていて、平日の昼間にもかかわらず大混雑でした。
善光寺本堂と回向柱。回向柱からの紐が前立御本尊に繋がっているので、柱に触れることで如来さまと御縁を結ぶことができます。
撮影スポットからの本堂
まずは拝観券がないと何も見られないので、本堂脇東向拝近くに臨時設営されている券売所の列に20分ほど並び、内陣、山門、経蔵、忠霊殿が拝観できる参拝共通券を購入。券売所のスタッフに内陣は1時間半待ちと言われたので、券売所前の仮設授与品所で御開帳限定の幸せ牛守を買うと、とりあえず並ぶ必要のない、券がなくても入れる外陣から参拝しました。とはいえ、外陣からではお参りはできても、御開帳されている前立御本尊はまったく見えないので、お姿を見たければ内陣参拝をしなければならないのですが、参拝待ちの列の最後尾を目指して東向拝から本堂の後ろをぐるりとまわり、西向拝まで来てもさらにジグザグを作っている列を見たら、すっかり並ぶ気が失せました。気温27度で、日傘がないときつい陽射しの上に、湿度も高く蒸し暑かったので。
夕方になれば日帰り客が減っていくらかマシになるかと思い、内陣参拝とお戒壇巡りは後回しにし、御朱印授与所に向かいましたが、こちらも1時間半待ちの行列。ため息をつきつつも、ここに至って、持ってきた朱印帳をホテルに預けたバッグに入れっぱなしだったことに気づき、そのときちょうど最後尾の札を持つ隣の列の係員に、書き置きならこちらの団体用授与所で20分ほどの待ち時間だと教えられたので、そちらの短い列に並び直し、もともと購入するつもりでいた紙札の御開帳限定特別御朱印をいただきました。
御開帳限定の特別御朱印
その後「さて、どういう順で巡ろうか」と悩んでいると、15時からの法要についての案内アナウンスがあり、法要に参加すれば、並ばずに前立御本尊を近くから見られるとのこと。別途祈願料が必要ですが、この状況では渡りに船のような気がしたので、申し込むことにしました。受付は30分前までで、集合時間まで40分ほどあったため、申し込みを終えると、比較的待ち時間の少ない経蔵へと向かいました。こちらは三人ほどが待っていただけだったので、すぐに輪蔵を回すことができました。輪蔵を回すと、中に納められている一切経をすべて読んだのと同じ功徳が得られるといわれています。
経蔵の前にある輪廻塔。円盤状の石に六字名号が刻まれているので、回すと「南無阿弥陀仏」を唱えたことになります。
経蔵を出ると、本堂横の指示された集合場所へ。集合時間の2時45分になると点呼があり、西向拝から内々陣へと案内されました。御本尊の瑠璃壇の前に座り、参加者全員の祈願が終わると瑠璃壇前の戸帳が一瞬上げられるので、最前列の中央付近など座る場所がよければ内側を見ることができます。残念ながら私は見えませんでしたが、善光寺の御本尊は絶対秘仏なので、見えたとしても御本尊の御厨子だと思います。その隣に、御開帳の期間は前立御本尊が祀られています。本当に目の前まで行けて、内陣参拝とは比較にならない近さで拝むことができました。内々陣を出るときに渡された封筒に入っていた御札は御開帳特別仕様で、諸難消除の御守と御開帳限定の五色の散華も一緒に入っていたので、参加してよかったです。
御札と御守と散華。祈願料は1件につき3,000円〜。1件5,000円というところもあるので、今回は奮発して二つ祈願してもらいました。
法要に参加しても入れるのは内々陣だけなので、お戒壇巡りをするためには改めて行列に並ばなければならないのですが、お戒壇巡りは御開帳期間外も可能で、普段は並ばずにできるので、今回はあきらめることにしました。最近は冬に白馬や志賀高原に行くときに寄るぐらいですが、戸隠と東山魁夷の絵が好きなので、昔はよくストレス解消に長野市を訪れたものでした。日帰り圏内なので、思い立ったらすぐに出かけられたので。そして、戸隠五社や東山魁夷館の帰りに善光寺に寄るのが常でした。なので、お戒壇巡りも何度か経験したことがあるため、1時間半も並んですることもないだろうと思いました。それに、法要のスタッフも言っていましたが、お戒壇巡りは御本尊の下にある錠前に触れて如来さまと縁を結ぶことが目的なので、回向柱を通じて結縁できるときは巡る必要はありませんし。けれども、経験したことがない人は一度はやってみるといいと思います。初めてお戒壇巡りをしたとき、24時間明かりが絶えず暗闇というものが存在しない現代において真の闇が味わえるのは、ここぐらいだと思い、えらく感動しましたから。何故なら、明かりのない世界のこと、闇の怖さ、光の尊さといったものを否応なしに考えさせられたからです。出口の光の眩しさや、それを目にしたときにおぼえる安心感は、実際に体験してこそわかります。
次に、本堂より閉まるのが早いので、大勧進へと向かいました。善光寺は御本尊が日本最古の阿弥陀如来像と伝わり、創建されたのが日本仏教の宗派が分かれる前なので無宗派の寺ですが、天台宗と浄土宗によって管理運営され、天台宗の本坊が大勧進で、浄土宗の本坊が大本願になります。大勧進でも御朱印授与所の前には列ができていたので、境内の出店で手作りのリンゴジュースを1杯買って一気飲みし、ひと息入れてから列に並びました。15~20分ほど待って、大勧進限定の「牛朱印」をいただき、祀られているとは知りませんでしたが、鬼大師の御朱印もあったので、そちらも頂戴しました。そのあとゆっくりと鬼大師こと元三大師良源が祀られている護摩堂に参拝し、お参りを終えて境内を出ようとしたら、赤門近くの授与品所で、今まで見たことがない、これまでおぼえのない強烈なインパクトのダルマを発見。とても素通りできず、無視したら後悔しそうだったので購入しました。ただの奇妙なお土産だったら買わなかったのですが、護摩堂の御本尊――智証大師円珍作と伝わる不動明王像に祈祷済みであることが書かれた紙が背中に貼付された、正真正銘大勧進の授与品だったので、ついつい衝動買いしてしまいました。
大勧進限定の「牛朱印」と鬼大師の御朱印。いずれも牛型の御開帳朱印入り。「牛朱印」は「ごしゅいん」と読みます。
大勧進の授与品所で購入したアルクマだるまと、本堂脇の授与品所で購入した幸せ牛守。「牛に引かれて善光寺参り」という言葉があるように、善光寺と牛は切っても切れない関係がありますが、アルクマは地元長野県のPRキャラクターです。熊本県のくまモンみたいなものですね。アルクマはリンゴの被り物を着けた歩く熊なのですが、アルクマだるまは、上にヘタが描かれて赤いダルマがリンゴに見立てられていて、アルクマのリンゴの被り物の代わりになっています。
牛守に入っていたおみくじ。幸せに導く心がけは「剛毅朴訥」だそうで……内容は悪くない中吉でした。
続いて向かった忠霊殿には史料館が併設されていて、そこに展示されている高村光雲作の仁王像が大好きで、久しぶりに見るのを楽しみにしていたのですが、どこにも見あたらなかったので、どうしたのか受付スタッフに訊ねたところ、出張中で、そのスペースが今は特別展示になっていて、御開帳が終われば戻ってくるとのこと。史料館所蔵の仁王像は善光寺仁王門の仁王像の原型として制作されたもので、個人的には運慶・快慶作の仁王像に匹敵する傑作だと思っています。近代の仏像も中世の名像に劣らないと思わせてくれた貴重な作品なので、ここまで来てお目にかかれないのはかなりショックでしたが、仕方がありません。文句を言ってどうにかなるものではありませんから。
光雲の仁王像の代わりに展示されていた作品の一つ、「仁王狛犬」。小松美羽さんという現代アーティストの作品です。
仁王門の阿形。1/4サイズではありますが、この像の全身が柵越しではなく見られるのが、史料館の像なのです。残念!
仁王門の吽形
忠霊殿から本堂の近くに戻ってくると、内陣参拝の列はまだ長蛇でしたが、回向柱待ちの列は短くなっていたので、回向柱に触れて如来さまと結縁。あとは山門登楼が残っていて、こちらは8時まで開いているのでライトアップしてから登るのもいいかと思っていましたが、時計を見ると時刻は4時過ぎで、3時間ほど歩きまわって疲れもピークに達し、暗くなるまでブラブラするのもしんどかったので、日没を待たずに登ることにしました。以前は下から見上げるように鳩字の額を間近で見ることができたりしましたが、今回は通路が決められていて自由に動けなかったので、一周して、さっさと降りてきました。
山門から見る本堂と回向柱
山門を出ると、共通券でできることはお戒壇巡り以外すべて終えたので、長野駅に戻ることにし、バス停を目指して表参道を歩いていたら、左手に、門を入るとギャラリーになっている宿坊を見つけました。どこか見覚えのある気がしたので入ってみると、自宅の玄関に飾っているほおずきの照明飾りを買った店でした。その時は宿坊という認識はなく、ギャラリー風の雑貨屋だと思っていたのですが、実は白蓮坊という宿坊の一角で、当坊の限定御朱印が目的で店に入ってくる人もいました。店内には天然石やトンボ玉のアクセサリーの他、作家作品の万華鏡などが置いてあって、以前もそれに興味を引かれて入店したことを思い出しました。今回も気になる万華鏡をいくつか覗いていると、店のスタッフが声をかけてくれ、ショーケースの中にあった明らかに量産品とは違う作品も出して見せてくれました。
「ギャルリ蓮」がある白蓮坊
白蓮坊の限定御朱印。月替わりで、絵が毎月異なるそうです。こちらは6月バージョンで、5月バージョンは仁王像でした。
次々と現れる素敵な映像に驚かされて、しかも万華鏡によってそれぞれ違う美しさを見せてくれるので感嘆の声をもらして喜んでいると、「これも見て、これも見て」と、店頭に出していない一点物の作品も次々と出してくれました。その中に、今まで見たことがないオイルタイプの万華鏡があって、その映像は、美しいのはもちろんですが、繊細で品があり、物語性まで感じられる、まさしく芸術の域に達した作品でした。これは高いだろうと思って値札を見たら、案の定いい値段でしたが、こんな作品には望んでもそうそう出合えるものではない、これぞ一期一会で、善光寺如来が結んだ御縁と思ったので、意を決して購入。万華鏡が好きで、機会があれば作品展を見て、アーティストが作る万華鏡がけっして安いものではないことは知っているので、作品の質からすれば妥当な価格だと納得できましたし、作品を購入することで、こういう素晴らしい物を生み出せる才能のあるクリエイターを微力ながらも応援できたらいいと思いました。
今回買った細井厚子さん作の万華鏡。「月とちょうちんあんこう」という作品名で、作家の手作りだという焼き物の本体に月とあんこうの絵が手描き絵付で施されています。隣は昔買ったほおずきの照明飾り。
ほおずきの照明飾りは、スイッチをを入れると、ライトが仕込まれた本物のほおずきが光ります。これを初めて見たときも驚きで、即買いでした。
人混みと蒸し暑さで、ライトアップがどうでもよくなるぐらい疲れていましたが、アルクマだるまのように愉快な物や、万華鏡のように美しい物に出合えたのも、この日この地に導いてくれた善光寺如来のおかげなので、忙しいなか来た甲斐があったと、バスに乗るときには歩き疲れた足の痛みも軽くなり、すっかり楽しい気分に戻っていました。
長野駅に戻ると、5時半になるところだったので、店が混みはじめる前にと思い、1月の白馬スキーの帰りに寄って気に入った、駅ビル内の食事処「長寿日本一長野県長寿食堂」で夕食を摂ることにしました。前に来たときにはなかったのですが、今回は大好きな和牛のメニューがあったので、そちらを注文。15分ほどかかると言われましたが、あとはもうホテルに行くだけで、出発時刻が決まった電車に乗るわけでもなかったので、のんびりと柚子サワーを飲みながら待つことに。食事後、ホテルにチェックインし、日程終了です。
「長野県長寿食堂」の「信州プレミアム牛ひつまぶし定食」。和牛ならではの美味しさで、肉の量も多く、食べた気になるボリュームだったので、大満足でした。
※6月14日追記
昨日たまたま昔一緒に善光寺詣でをしたことのある友人からメールが来て、御開帳前に善光寺に行って、お戒壇巡りをしたが、以前のように真っ暗ではなく、照明がついていて、ガッカリしたとのこと。確かにそのほうが危なくはないですが……これも時代でしょうか。こんなところにまで配慮が行き届いて至れり尽くせりだと、人間の危機感や注意力もいっそう低下するばかりだと思うのですが。
※7月11日追記
大勧進の限定品で「善光寺御開帳記念 ペヤングやきそば 蕎麦風」という物が売っていて、善光寺の本坊である大勧進がオリジナルペヤングやきそばを作ったことにも驚きましたが、それだけではなく、蕎麦風とか八幡屋礒五郎の七味唐辛子付きとか、信州名物を取り入れているのが実に巧妙で、メチャクチャ気になったのですが、かさばるので現地で買って持って帰るのは断念。ところが、帰ってきてから大勧進のオンラインショップでも購入できることがわかったので、御開帳が終わる直前に注文し、それが先週届いたので、本日食べてみました。蕎麦風だからか麺が黒いのですが、普通にペヤングソースやきそばのクオリティで、斬新なアイデアを実際に形にし、味までちゃんと追求して及第点をクリアした企画力と実行力に心底感服いたしました。お見事。
大勧進限定「善光寺御開帳記念 ペヤングやきそば 蕎麦風」の外観。「ペヤングやきそば」の商品名デザインは見慣れた従来品と同じスタイルを踏襲し、「七年に一度の盛儀」「令和4年4月3日(日)~6月29日(水)御開帳」「善光寺御開帳記念」「蕎麦風」「大勧進限定」の文字を書体を変えてあしらい、回向柱が立つ善光寺本堂の写真、牛の絵、八幡屋礒五郎の七味唐辛子のお馴染みの缶のイラストまで、これでもかとキャッチ―な情報を盛り込んでいます。大したものです。ペヤングが嫌いでなければ、これは買います。