羽生雅の雑多話

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Point of Victory~大谷翔平と坂本花織に見た、勝負の分かれ目における勝ち切る強さ

 野球のWBC優勝&フィギュアスケートの坂本花織選手の世界選手権2連覇、おめでとうございます。この二つの試合、凄いものを見せてもらいました。しびれました。事実は小説より奇なりということはわかっているつもりでしたが、「いや、実際にこんなことってあるんだ」と、改めて思い知らされ、唸りました。

 

 まずはWBC。テレビで観はじめたのは決勝戦の8回表、この回から登板したダルビッシュ選手が1点差に追いつかれてからという、本当に最後の最後だけなのですが、9回表に大谷選手に継投し、いきなりフォアボールを与えてノーアウトの同点ランナーが出て、しかも打順が下位から1番にまわり、「おいおい、大丈夫かよ」とハラハラしていたら、セカンドゴロのゲッツーで、あっという間にツーアウト、ランナー無し。そして迎えるバッターはトラウト選手という大谷選手のエンゼルスの同僚で、シーズン中には絶対に見られない貴重な対決。大谷選手は明らかにこの打者で終わるつもりだという160キロ台を交えた渾身の投球で、トラウト選手も粘りに粘ってフルカウントまで持っていき、最後は気持ちいいぐらいフルスイングの空振り三振でTHE END、これぞまさしく「翔タイム」でした。誇張ではなく息を止めて見入った手に汗握る最終回の1イニングを見たときに、この二人で決着がつくのなら、きっと双方のチームメイトも納得するのではないかと思いました。侍ジャパンは大谷選手がトラウト選手に打たれたのなら仕方がないと思うだろうし、米国チームもトラウト選手が大谷選手に抑えられたのなら仕方がないと思えるのではないかと……それぐらいの名勝負でした。また、こうも思いました。アメリカで行われる試合でスーパースターを揃えた本気の米国チームに勝って後腐れなく終わるためには、クローザーはやはりアメリカ大リーグのスーパースターである大谷翔平でなければならなかったのかもしれないと……。彼ならばアメリカのファンたちも仕方ないと思え、二人の対決を名勝負だったと思え、負けたけどいい試合だった、悪い大会ではなかったと思えるのではないでしょうか。

 

 坂本選手は、最終滑走のフリー演技の後半に入っている得点源のトリプル+トリプルのコンビネーションがパンクして、最初のジャンプが1回転フリップになったのに、続く3回転トゥループを何事もなかったかのようにクリーンに跳んでコンビネーションジャンプを成立させたのを見て、目が点になりました。パンクした後にまともなジャンプを跳べるのがまず素晴らしいのですが、それがトリプルとなると、ちょっと記憶にありません。失敗ではなく最初から1回転+3回転が予定されていたかのようで、点数もそのコンビネーションジャンプが成功したときと同等に評価され、加点も付いて5点以上稼いでいました。そしてショートとフリーの総合得点で銀メダルとの差は4点もなかったので、パンク後の3回転トゥループが跳べていなければ金メダルは獲れなかったということになり、結果的にこのジャンプが勝負を決めることになりました。

 

 おそらく勝利というものに偶然はないのだと思います。必ず勝負を決めるポイントがあり、勝てるかどうかはその一瞬にかかっているのだと思います。大谷選手のようにヴィクトリーロードに続く決定的な場面を手繰り寄せられるか、自分が主役になれる舞台を作れるか、坂本選手のように勝ち札を選ぶ判断がとっさにできるか、二人が見せた、ここが勝負の分かれ目と、見ている人も納得する決定的な瞬間を制し、乗り越えることができるか、どんなたたかいにおいても、それが勝利のポイントのような気がします。

 

 ……やばい、涙が止まらない。今、世界フィギュアの会場であるさいたまスーパーアリーナに来ていて、ショーマの演技を見る前にこの記事をアップしたかったので、製氷の時間などに昨日書きはじめた文の続きを書いていたのですが、数分前にかなだいのフリーダンス「オペラ座の怪人」を見終えました。これはちょっと言葉になりません。ついにやり遂げたノーミスの、今の力を出し切った演技……大ちゃん、素晴らしい演技を、そして偉大なる挑戦を見せてくれて、ありがとう(涙)

会場の外にあった「かなだい」こと村元哉中&髙橋大輔両選手のパネル。目標の10位には惜しくも届きませんでしたが、納得の演技だったと思います。