池袋で本日の仕事を終えたあと、開館時間に間に合いそうだったので、上野まで足を延ばしました。年末に「クラーナハ展」の招待券をもらっていたので。あまり興味がなかったので前売りは買わなかったのですが、ウィーン美術史美術館はウィーンに行ったときには必ず行く、ヨーロッパでも一、ニに挙げられる好きな美術館なので、他の画家の作品が何か来ていればいいと思って行きました。西洋美術館は「カラヴァッジョ展」が最後で、世界遺産になってからは一度も行っていないということもあったので。
残念ながらあまり気を引かれる作品がなかったので、ざっと見て30分ほどで終了。私にとってルネサンス絵画といえばラファエロであり、ウィーン美術史美術館には彼の「ヴェルヴェデーレの聖母」という名作があるので、「それに比べるとなぁ……」などと思いながらまわっていたのですが、最後のほうで見覚えのある「ユディット」があったのでびっくり。そこでようやく「そうか、クラーナハってクラナッハのことか」と思い至りました。シャルルはチャールズ、ゲオルグはジョージというのと同じでしょうが、悲しいかな、単一民族の日本人的思考では、クラーナハとクラナッハが結びついていませんでした。
それがけっこうショックだったのですが、他にもそういう方、いるのではないでしょうか。ラファエロはなさそうですが、これがミカエルだったら英語読みでは「マイケル展」とかなるわけですから、下手をすれば「King of Pop」の展覧会かと思って、MJは絵まで描いていたのかと誤解してもおかしくないと思います。アートの才能も十分あったと思いますし。ミュージシャンが絵を描くのは珍しいことではなく、デヴィッドも絵は描きましたし。ボウイ展も近々始まるので、マイケル・ジャクソンの「マイケル展」があっても誰も不思議には思わないでしょう。
西洋美術館での鑑賞にあまり時間がかからなかったので、ついでに近所にある科学博物館の「ラスコー展」にも寄ってきました。10年以上前ですが、複製とはいえラスコーⅡに行ってエラく感動したので、何が展示されているのか気になったので。残念ながらこちらもあまり感動できず、昔花盛りのキューケンホフ公園に行った数か月後にハウステンボスに行ったときに感じた何とも言えない気持ちを思い出しました。
やはり、オリジナルというか、あるべきところにある本来の姿で観るものとはこれほどに印象が違うのかと、しみじみ思いました。思えば、興福寺の阿修羅像もそうでした。長らく展示されていた国宝館のガラス越しではなく、360度見られた東博の「阿修羅展」でもなく、興福寺の仮金堂での特別展で、釈迦如来の眷属、八部衆の一人として配置されていたのが一番しっくりきました。それが阿修羅像が造られた目的、本来あるべき姿だったからでしょう。それを認識できたのが本日一番の収穫でしょうか。これからもできるかぎり原物や現場を見るようにしようという思いを新たにしました。
ということで、私は個人的な事情で物足りなく感じたり、複雑な思いにとらわれたりして微妙でしたが、企画展としては、どちらも対象を絞っていたので、散漫なところがなくてわかりやすく、クラナッハやラスコーを紹介するガイドとしてはよい展示だったと思います。