ドミンゴがカレーラスと今は亡きパヴァロッティと共に三大テノールと呼ばれるようになって、はや幾とせ。この公演があることを知ったとき、正直なところ、まだ歌っているの? いったい今幾つ?と思いまして、調べたら今年1月で御年76歳。テノールからバリトンにシフトしつつも、いまだにバリバリの現役とのこと。とはいえ、ナマで聴けるのもあと数年、来日公演も数回だろうと思い、行くことにしました。
オペラやバレエはチケット代が高いので観る頻度は少ないのですが、世界的にメジャーなアーティストの引退公演とか特別共演とか「これは観ないとソン」みたいなものには行くようにしています。前にも書きましたが、「見たい」「見たほうがいい」「見るべし」と思ったものは極力見るようにしているので。オペラもバレエもビジュアルなしで音楽として聴いてもよい曲が多いですし。特にオペラは、マリア・カラスの独特の声が好きで、昔はよくCDを聴いていましたので、楽曲はけっこう馴染みがあります。フィギュアスケートでもよく使われていますし。
で、ドミンゴですが、凄かったです。若いころの本人と比すれば、さすがに声量はなくなっているのかもしれないと思いましたが、潤いのある声と歌は健在でした。声量云々については、もしかしたらオーケストラとの音量調整がうまくいっていなかったのかもしれません。時々歌を消していましたから。まあ、一日しかない公演なので、リハの時間もそんなになかったとは思いますが。
歌が素晴らしかっただけに、オペラの楽曲があまり聴けなかったのが残念でした。オペラからの選曲は第1部だけで、第2部はサルスエラとかミュージカル等からの選曲。オペラを歌うのは体力が必要なので大変だとは思いますし、ドミンゴの年を考えると、まともに歌えているだけでも凄いとは思いましたが、あと何年ナマで聴けるかわからないだけに、ミュージカルナンバーを聴きにきたわけではないんだけど……と、少々複雑な思いでおりました。マイ・フェア・レディとかウエストサイドストーリーとか、これらはミュージカルの中でも名作で曲もいいですし、もちろんドミンゴとフレミングの歌は見事で申し分なく、今まで聴いた中で一番上手いと言ってもよい「踊り明かそう」や「トゥナイト」ではあったのですが(もはや、とても不良が歌う歌には聞こえませんでしたが)。
第2部から皇后陛下がお見えになり、その直後に歌ったサルスエラ『マラビーリャ』からの「恋人よ、わが命よ」は、ドミンゴも気合を入れ直した感じでよかったですが、それにも増して「これぞドミンゴ」と思った個人的なベストは、アンコールで歌った「グラナダ」でした。
フレミングは『メフィストーフェレ』のマルゲリータのアリア、「いつかの夜、海の底に」がよかったです。実はよく知らない演目なのですが、タイトルの『メフィストーフェレ』は悪魔のメフィストフェレスのことですから、『ファウスト』に近い内容のオペラと思われます。
オペラもちゃんと通しで観たいのですが、その余裕があればバレエを観たいので、またこのようなコンサートがあれば、機会を逃さず行きたいと思います。