羽生雅の雑多話

引越してきました! 引き続きよろしくお願いします!

旧古河邸の奥山峰石傘寿展と西洋美術館のアルチンボルド展

 あっという間に9月になりました(笑)。

 
 ほぼ毎年のことなのですが、8月は今や年1のイベントと化してしまった海外旅行に行き、一週間以上日本を留守にするので、その前後は常にも増してバダバタしています。そのため、このブログも先月は一度も更新することができず。月が変わってしまいました。旅行に関しては、今年も貴重な体験をしましたので、旅行記は別途アップする予定ですが、例によって長くなりそうなので、時間の余裕があるときに記事を書きたいと思います。記憶が薄れないうちに。
 
 さっそく秋らしい天候となった本日は、芸術の秋の始まりにふさわしく、国指定名勝と世界遺産という素晴らしい環境で、これまた見ごたえのある美術作品を見てきました。
 
 まずは、仕事でお世話になっている人間国宝の鍛金作家、奥山峰石先生の傘寿展へ。旧古河庭園の大谷美術館での開催だったので、ついでに旧古河邸の見学会に申し込み、1時間のガイドツアーに参加。鹿鳴館の設計で知られるジョサイア・コンドル最晩年の傑作を堪能してきました。レンガ造りの洋館の中に巧みに和室が取り込まれた、和洋折衷の建物で、重厚な観音開きの扉を開けると襖が現れたり、畳敷きの和室の中にフローリングの廊下や出窓があったり、お風呂は大理石の五右衛門風呂風の浴槽と、至る所が不思議建築で、見どころ満載でした。中でも特に驚いたのは、長押や柱がすべて面取りがされていたこと。説明がなければ見落とすような箇所ですが、言われて注意深く見てみると、すべてがそうなっていました。コンドルがやわらかさを出すために職人に指示したという話でしたが、障子の桟はもちろん、細い組子までそうなっていて、ここまでくると、妥協を許さないを通り越して、何やら執念のようなものを感じました。

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 見学会終了後、奥山先生に挨拶をして、展示を拝見。全国から集められた先生の古今の鍛金作品の数々が、シックな木製台のガラスケースに収められて、旧古河邸のカッコいい書斎や娯楽室を背景に陳列されているのは、まるでお邸のコレクションルームにいるようで、実に壮観でした。旧朝香宮邸である庭園美術館の展示の雰囲気に近いものがありましたね。私はもともと、いい美術品はいいハコに飾られて見るべきだと思っている人間なので(それゆえ、百貨店の特設会場の暗い照明の中で絵を見ると、いつも悲しくなります。それがいい絵であればあるほど。)今回の展示はとてもよいと思いました。事前に先生ご本人からも、作品を展示するガラスケースが中々揃わないなど、準備が大変なことも伺っていたので、その難題を見事にクリアした素晴らしい展示に感無量でした。
 
 作品を拝見したあとは、先生からいただいた喫茶券で、同行した仕事仲間と共に、洋風庭園を望むテラスでコーヒーを飲むことに。この庭園もコンドルの設計で、自慢のバラは咲いていませんでしたが、今日は9月下旬並の気温で涼しかったので、風が気持ちよく、出てきたカップ&ソーサーもウェッジウッドのド定番、今や古典柄と言ってもよいワイルドストロベリーだったので、久しぶりに都会のド真ん中で、のんびりとした優雅なコーヒータイムを味わわせていただきました。
 
 その後、閉館時間となったので、先生に挨拶をして旧古河庭園を後にし、同行者と別れて、上中里駅から京浜東北線で上野に出て、ル・コルビュエ設計の世界遺産――西洋美術館で開催されているアルチンボルド展へ行ってきました。
 
 この展覧会のチケットは、絶対に見るということで、ずいぶん前に買っていたのですが、記事にも書いたとおり、6月下旬から7月の3連休過ぎまでは、週末は舞台を観るか旅行に行っていたので、そろそろ行こうかと思ったときには、美術鑑賞好きで、さっさと同展も見てきたスタイリストのSさんに、もう学校は夏休みであることを指摘され、9月まで待つことに。世の学生さんたちはアルチンボルドなんていうマイナーな画家には興味がないかもしれませんが、美術館、博物館、動物園が集まる上野公園はこの時期確実に混んでいるため、結局夏休み明けで、金曜日で遅くまで開館している本日出向くことと相成りました。
 
 ミラノ出身でハプスブルグ家の宮廷画家だったジュゼッペ・アルチンボルドの作品を最初に見たのは、もう20年近く前で、私が好きなシシィことオーストリア皇后エリザベートの没後100年にあたる記念の年に、どうしてもエリザベートゆかりの地に行きたくて、初めてウィーンを訪れたときになります。以後、ヨーロッパの都市もあっちこっち訪れましたが、結局のところウィーンが一番好きで、それゆえ目的地までの直行便がないときには、わざわざウィーン経由にしたりして、たびたび行っているのですが、行けば必ず美術史美術館に寄るので、そのたびに彼の作品は見ています。1870年代に、エリザベートの夫であるフランツ・ヨーゼフ1世が建てたネオ・ルネサンス様式の建物であるウィーン美術史美術館は、展示作品とハコが調和した究極の例ですので。クリムトが壁画を手がけた建物自体が美術品のような館内に、コーヒーやアプフェル・シュトゥルーデルがいただけるのはもちろんのこと、ゼクトまで飲めるカフェもあるので、何時間いても飽きません。
 
 で、アルチンボルドの作品ですが、ややキワモノめいたところがあるので、絵として特別に好きというわけではありませんが、とにかく印象が強烈で、忘れられない絵なので、鑑賞者にそこまでのインパクトを与えられること自体が凄いと思っていて、そういう意味で気になり見過ごせない画家なので、行ってきました。
 
 この美術展開催を知ったとき、ウィーン美術史美術館でも常設展で見られるのは2作品ぐらいなので、個展なんて成り立つのかと思いましたが、案の定アルチンボルド自身の作品は少なく、関連作品で水増ししているような展覧会した。でも、彼の代表作である「四季」と「四大元素」が一堂に会したのは圧巻で、今まで見たことがなかったウィーン美術史美術館蔵以外の作品もきていたので、たいへん満足のいく内容でした。また、自分を撮影してアルチンボルド風の絵をCGで作ってくれるコーナーが設けられていたので、チャレンジしたのですが、そうしたら、とんでもない絵が出来上がり、思わず沈黙……もはや誰だかわからないので、記念に載せておきます。

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 企画展を見たあと、ミュージアムショップでポストカードを買い込み、閉館時間までまだ時間があったので、続いて常設展を見ました。世界的に評価が高い超一流画家たちの二流以下の作品が並べられている展示だったので、あまり興味も湧かず、ざっと見て終えましたが、エル・グレコとギュスタフ・クールベの作品が見られたのはよかったです。この二人の絵はもともと好きなので、知らない作品でも魅かれます。トレドのグレコと、ハンブルグクールベは最高でした。
 
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 その後、西洋美術館を後にして、「ボストン美術館の至宝展」を開催している東京都美術館へ。ボストン美術館蔵品の展覧会は、以前上野の森美術館北斎の里帰り作品を中心に開催したときに見ていて、今回きている歌麿ゴッホの作品などには興味がなかったので、展覧会は見ず、館内レストランの「サロン」に直行。カジュアルフレンチのディナーを食べてきました。西洋美術館にも館内レストラン「すいれん」があるのですが、都美のこちらのお店のほうが内装もメニューも雰囲気もいいので、上野の美術館、博物館に来たときには、時間があればここで食事をすることにしています。東博に行ったときだけは、館内にホテルオークラがやっているお店があるので、そちらに寄りますが。都美の「サロン」は、シャンパーニュの次に頼んだグラスワインが精養軒オリジナルだとスタッフが言っていたので、どうやら上野精養軒の系列のようです。
 
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 テタンジェを飲みつつ、生ハムのサラダと、久しぶりにエスカルゴを食べて、実に有意義な午後だったと、ご機嫌で帰ってきました。