羽生雅の雑多話

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ドデカニソス諸島旅行記 その5~ロードス島・古代都市リンドス

 翌日は、ロードス島の三大古代都市の一つで、その中でも一番美しいといわれるリンドス村へ。

 
 エフドキアホテルは歴史的建造物を利用したホテルで部屋数が少なく、そのため宿泊客も少ないのですが、ホテルの主人が一人で宿泊客各人にオムレツとピタを作るため、朝食にえらい時間がかかります。なので、急いでいる人、時間がない人にはおすすめできません。パトモス島に行くときも、チケットオフィスのおねーサンに言われていた集合時間には間に合わず、出航ギリギリになりましたし。
 
 この日はリンドスに行って帰ってくるだけなので、10時ぐらいのバスに乗れればいいということで、8時過ぎにロビー兼ダイニングに下りたのですが、二組の泊り客とかち合い、いつもと同じように順番にオムレツとピタを焼くので、食事が終わったときには9時半を回っていました。急いで歯を磨き、ホテルを出て旧市街と新市街のあいだにあるバスステーションに行きましたが、チケットオフィスも混んでいて、結局乗れたのは次の10時半出発のバスでした。
 
 始発だったので座れましたが、ロードスタウンとリンドスのあいだのビーチに滞在していて、途中から乗ってくる人たちは座れないほど混んでいました。ロードス島にはリンドス、イアリソス、カミロスという三つの古代都市があるのですが、現代に至るまで古代の面影をまともに伝えているのはリンドスだけで、また、ロードスタウン~リンドス間は30分に1本バスがあるので行きやすいため、人気があるのだろうと思います。合流後に三都市すべてを巡る時間はないだろうということで、友人は私と合流する前日の午後にイアリソスに、当日の午前中にカミロスに行ってきたそうですが、公共の交通機関を使って個人で行くとあまりにアクセスが悪く、しかも2~3時間に1本しかないバスに置いていかれて遭難するかという思いをしたとのことでした。
 
 約1時間でリンドス村のバスステーションに到着。シャトルバスでアクロポリスの麓に広がる村の広場まで行き、下車。そこからは村全体が考古学史跡の認定を受けているため、車やバイクは入れません。そんな中で、唯一の公共交通手段がロバです。したがって、リンドスでタクシーと言えば、ロバのことになります。

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リンドス村のアクロポリス
 
 古代遺跡のアクロポリスは小高い丘の頂上にあるので、ロバタクシーを利用。白い家々が並ぶ石畳の坂を上っていくのですが、自分で歩かずにすむというだけで、スピードは歩いたほうが速いのでは、と思いました。でも、久しぶりに馬上の目線を体験して楽しかったです。私と友人は高校時代の夏休みに小淵沢乗馬学校の体験スクールに参加したことがあるくらい馬好きなので。

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白い壁が続く街並みと、「リンドスタクシー」ことロバに乗る観光客。

 アクロポリスはあちこち修復されていて、それは遺跡としてはどうなのだろうと思いましたが、とにかく景観が美しく、背景に広がる青い空と碧い海とのコントラストが最高でした。何度目かの「これぞギリシャ」です。美しい蒼い海や青い空はいくらでもありますが、はるか三千年の昔に思いを馳せる――悠久の人類の歴史を語り継ぐ遺跡と一緒に味わえるのはギリシャだけです。エジプトのピラミッドの向こうに海は見えませんから。ヨーロッパの人たちはそれがわかっているから、ギリシャ財政破綻させないし、夏には民族大移動のように大挙してこの国を訪れるのでしょう。エフドキアホテルで泊まり合わせ、手間のかかる遅い朝食に一緒になってイライラしていた宿泊客は、ロンドンから来た一人旅の女性と、マンチェスターから来たご夫婦でしたし。彼らイギリス人の他、ドイツ人、フランス人、イタリア人、ロシア人、トルコ人……アジア人はロードスタウンのソクラテス通りで二組ほど中国人観光客を見かけただけですが、ロードス島もパトモス島もコス島も近隣諸国の観光客であふれていました。バカンスシーズンだけとはいえ、ドイツやイギリスから直行便が飛ぶわけです。どの島も、日本では知る人ぞ知る、ほとんど無名の観光地ですが。

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ガレー船の彫刻
 
 アクロポリスを見学し、最後にルーブル美術館にあるサモトラケのニケと同じ作者の作と伝わるガレー船の彫刻を見たあと、帰りは徒歩で村に下りて、お土産を物色。記念なので、リンドスの名前が入っていて、しかも既製品ではなくハンドメイドの物がいいということで、またもや陶器を選び、ミニ鉢を二つ買いました。鉢ばかり買っているのは、以前ヨーグルトを食べるのに欲しかったときに日本でいろいろと探したのですが、気に入るものがなかなか無くて、東京ドームで毎年やっているテーブルウェアショーでようやくトルコ製のきれいな絵付のミニ鉢に出合えて買ったという経験があるからです。形あるものはいつかは壊れるもので、使っていれば欠けたり割れたりするものなので、気に入ったセラミックの器は買っておくことにしています。きれいな鉢に白いヨーグルトを盛って、マンゴーやらイチジクやらのジャムで食べるのがお気に入りです。宮崎の日向夏や熊本の晩白柚、青森の雪人参ジャムで食べるのもいいですが。

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リンドス村で買ったミニ鉢2種と、大きさ比較のために置いたくまモンみくじ。
 
 さて、エーゲ航空の機内誌に、ロードス島の三大レストランとして紹介されていたうち、二つがリンドスにある店でした。村をひととおり回ってもそれらしき店がなかったので、村内ではなく郊外にあるのではということで、あきらめてロードスタウンに戻ってから食事をしようとして広場に行ったら、広場に面しているレストランがそのうちの一つでした。例によって店内に客は二組ぐらいしかいませんでしたが、料金が高めで時間がずれていれば妥当な客数と思い、入ることに。英語版のメニューを渡されましたが、明らかに本日のお薦めらしき手書きの黒板メニューが掛かっていたので、そこからカラマリとシーフードラビオリwithムール貝というのを注文。もちろん白ワインも頼みました。
 
 20世紀最後の年に初めてギリシャを訪れたのですが、そのときギリシャ料理のオリーブオイルがきつくて、ロクに食事ができなかった私を救ってくれたのが、海辺で食べるシーフード料理で、レモンを絞ったカラマリのフライとタラモサラダでした。今ではギリシャ料理以外の物も食べられるレストランが増えて、私自身も慣れて許容範囲が広がりましたが、それ以来必ずと言っていいほど、ギリシャでの前菜はカラマリを食べることにしています。どこにでもある基本的な料理で、店それぞれに特徴があるため、カラマリを食べれば、その店の料理の質がわかるので――コス島で残念な体験をしたように。
 
 1933年創業の老舗「mavrikos」のカラマリはちょっと驚きで、これはしょうゆを使っているのではないかというグリルで、我々日本人の口によく合う、あっさり系の味でした。日本から遠く離れたギリシャの島の村で出合った、和食を思い出させる味付けに感激し、シェフの工夫を感じました。ムール貝のだしがきいた、中身がミートではなくシーフードのラビオリも、ビーチ客もいる開放的な店内の雰囲気からは想像できない、洗練された味。料理に引っ張られて、ついついピッコロワインを2本飲んでしまいました。昼間からハーフボトル強の酒量ですが、これぞ休暇の醍醐味なので、ノープロブレム。
 
 当初の予定どおり、リンドスにいるあいだに目的のレストランで昼食が食べられたので、6時出発のバスでロードスタウンに戻り、夜は部屋で軽く済ませることに。旧市街をぶらぶらしたときに見つけた酒屋に寄って、コス島で飲んだロードス島産のスパークリングワインを買い、飲めない友人は港のスーパーで再び生イチジクとオレンジジュースを買ったので、そのイチジクを少し分けてもらうことにし、つまみは生ハムイチジクを用意することにしました。
 
 ということで、生ハムを調達するため、ホテルの近くにあるスーパーに寄り、お肉やチーズは量り売りだったので200グラムほどスライスしてもらって、ホテルに戻りました。そして、シャワーを浴びて汗を流したあと、屋上のバルコニーで晩酌タイム。夜は昼間の太陽に熱された空気がこもっている室内よりも風が通る外のほうが涼しい上に、騎士団長の宮殿やモスクがライトアップされていて夜景がきれいなので、部屋の中で飲むより断然心地よかったので。

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これは昼間の写真ですが、バルコニーはこんな感じで、日除けがあり、テーブル二つとチェア三つが置かれていました。
 
 スパークリングワインは、コス島で飲んだものと同じくC・A・I・Rとラベルに書かれたものでしたが、コス島で飲んだシルバーラベルのセックより、この日に買ったゴールドラベルのドゥミ・セックのほうが好みの味で、生ハムイチジクも問題なく美味しかったので、実に快適な時間を過ごし、一日を終えました。