羽生雅の雑多話

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宝塚メモ~ダンスの花組を再認識させた宙組トップスター・朝夏まなと(+「All for one」リピ感想)

 今年は秋が短いですねぇ。もうすぐそこまで冬が近づいてきているような感じがします。


 例によって記事を書くのが遅くなりましたが、先週の季節外れの台風の前、12月中旬並に冷え込んだゲキ寒の日に、日比谷で宝塚宙組公演を観てきました。演目は「神々の土地~ロマノフたちの黄昏」と「クラシカル ビジュー」。まぁくんこと朝夏まなとさんのサヨナラ公演になります。

 正直いって、いろいろと微妙な公演でしたが、全体を通して一番強く感じたのは、まぁくんは花組のダンサーだなということでした。なーちゃん(大浦みずきさん)ファンから見れば名手であるという印象はないのですが、今の宙組の中にあっては別格で(前回公演のショーで牛役を演じた蒼羽りくさんは、とてもよいダンサーだと思っています)、隣で踊ることが多い二番手のゆりか(真風涼帆さん)と比べても明らかです。前花組トップスターの蘭とむ(蘭寿とむさん)に通じる踊りで、何より、彼女を見ているとルコさん(朝香じゅんさん)がかぶって仕方がないんですよね、顔立ちも立ち姿も。ということで、今の花組からは失われてしまった古きよき花組のカラーをひとり漂わせてくれていました。もはや花組でなくてもいいので、このダンサーの系譜はこれからも続いていってほしいですね。

 で、まぁくんは歌もダンスもソツなく、すべてが無難で、さすがはトップスターという感じでしたが、微妙だった其の一が、次期トップスターに就任することが決まっているゆりか。容姿も体型も申し分ないルックスなのですが、ショーのキンキラ、フリル系のコスチュームがどうにも似合わない……滅茶苦茶カッコいいのに田舎者、という感じです。歌も、なまじセリフが男役らしいいい声なだけに、下手さがよけいに気になりました。お芝居における青年貴族の衣装はとても似合っていたのですが。それに比べると、やはりまぁくんはモロモロ安定していて、見ていて安心感があるな、と……。観劇した日は歌の調子がイマイチでしたが、それはマイクの調子が悪い(合っていない)からのようにも思えましたし……。そんなわけで、終演後、ゆりか率いる宙組にはかなり不安が残りましたが、みりお(明日海りおさん)率いる花組で二番手として実績を重ねてきた経験豊富なキキ(芹香斗亜さん)がジョインすることを思い出したので、ちょっと安心し、改めて妥当な組替えなのではないかと思いました。

 微妙だった其の二は、ウエクミ(上田久美子)さん脚本・演出のお芝居。彼女の世界観は好きなので、観ていてしんどくはないのですが、どうにも作品として不完全な印象が拭えませんでした。歴史物としても恋愛物としても中途半端で、彼女が意図している世界観を持つ世界を構築しきれていないというか、至る所に綻びが見られて、世界に入りきれないというか……世界観が共感できるだけに、違和感をおぼえずにいられないという感じで、しっくりきませんでした。彼女の作品はここのところ要素を欲張りすぎて料理しきれず不完全燃焼といった感じがあります。もっとシンプルな、研ぎ澄まされたような感覚がある作品のほうが得意のような気がしますが、ハコが大きくて出演者も多い大劇場用の作品は見せ場がいくつも必要で、ある程度盛り込まなければならず、それは理解できるのですが、そのために用意された役や場面がうまくストーリーに溶け込んでいないように思えます。ラスプーチンがあんなキャラクターである必要があったでしょうか。彼女の独特な世界観を表現するためだったとしても、その方法は他にもあったと思います。

 ともあれ、まぁくん、お疲れ様でした。そして……

 ゆりか、ガンバレ! ビジュアルは抜群で、下級生の頃からその存在感は抜きん出ていたので、星組時代に「ロミジュリ」の死を演じたときから注目してきました。必ずやトップになると思い、長らく成長を見守ってきたジェンヌさんの一人ですから、これから一皮も二皮も剥けて、ダンディな男役の代名詞になるようなトップを目指してほしいです。取り立てて難はないが、飛び抜けて突出したところもない無難なトップスター朝夏まなと宙組を、類稀なスター性で支えてきたのは、間違いなく彼女です。期待しています。

 さて、ここからは宙組の話ではないのですが、この公演の前の公演――月組の「All for one」は結局3回観ました。同じ月組の「ロミジュリ」以来のハマりっぷりでした。宝塚で心底満足のいく作品というのは貴重だとわかっているので。

 観劇した席はいずれも1階で、1回目10列、2回目11列、そして3回目は15列でしたが、40番でド真ん中だったので、下手だった先の2回とは見え方が異なり、改めてセンターってすごいと思いました。みんなが自分に向かって演じているように見えましたから。当然のことながら、作品はセンター中心に作られているので、特に群舞の見え方が全然違って素晴らしかった。真ん中で歌っている主演のたまきち(珠城りょうさん)の周りで踊っている人たちの動きや踊り、はたまた小芝居がおもしろくて、キョロキョロしていました。「明日を信じて」の歌の場面なんか、真ん中ではなく両脇ばかり見ていました。正面で見る、みやるり(美弥るりかさん)中心のフィナーレのダンスはカッコよすぎてノックアウトぎみでした。この公演は誰一人として、歌が、滑舌が、ダンスが……と思う人がいなかったのがすごいです。よく見れば、いたのかもしれませんが、作品に入り込んでいたためか、この距離で観ても気になりませんでした。

 回を重ねるごとに生徒たちもどんどん成長していきました。2週おきぐらいの間隔で観たのですが、2回目はレイコ(月城かなとさん)がすごくよくなったという印象がありました。存在感が増し、コメディを演じるのもより自然になってきていました。3回目は、レイコに関しては悪役としての完成度が上がったなと思ったのですが、それ以上に驚かされたのがたまきちの変化で、この公演のあいだだけでもかなり成長したような気がしました。初めのころよりずいぶんトップスターらしくなりましたから。正真正銘トップスターなのですが、娘役トップスターのちゃぴ(愛希れいかさん)に圧され負けているようなところがありましたので。

 作品全体を通して、イケコ(小池修一郎さん)演出の効果的な効果音と大きな動きの立ち回りが合っていたのも素晴らしかったし、マントの動きのような細かい身のこなしも素晴らしかった。そして、全編に渡って音楽がとにかくよかった。名曲ぞろいでした。

 それから、組長の憧花ゆりのさん、光月るうさん、専科の一樹千尋さん、沙央くらまさんといった芝居巧者の上級生たちの力もたいへん大きかったと思います。彼女たちの堅実かつインパクトのある演技がなければ、もしかしたらドタバタ劇で終わっていたかもしれません。上級生と下級生がそれぞれに力を発揮して、トップスターたまきちを中心に、役付きのスターも脇固めの生徒も一丸となってここまでの作品にした月組生に本当に感服いたしました。よいものを見せてくれてありがとう。今後も楽しみにしています。