羽生雅の雑多話

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フランス旅行記 その4~モン・サン・ミッシェル、カフェ・ド・ラぺ

 三日目は、天気が悪くて日の出を拝むのは無理そうだったので、満潮を見るため、再び王の塔に行きました。夜は暗くてあまりよく見えなかったので。

 
 塔にはすでにけっこう人が集まっていて、明らかに出遅れた感じ。見やすい場所はすでに埋まっていたので、やや遠い、空いている場所から突出門と橋の周辺を見下ろしました。見物客も回転するので、少し経ったら先に来ていた人がどいて空きましたが。
 
 突出門の前には、島にあるショップやホテルに商品を搬入すると思われる業務用の車が何台か停まっていて、満潮になったら水に埋まるけどどうするんだろうと思っていたら、ギリギリのタイミングで次々と水しぶきを上げて橋の向こうへ脱出していきました。なかなかシュールな光景でした。
 
 満潮が近づくにつれて塔の中も混みはじめ、人垣が二重三重になってきて、いつまでも先頭で陣取っているのは申し訳なくなったので、下に降りてみることにしました。
 
 突出門の外に出ると、歩道橋に行くのはもうアウトで、左右を見なくても同じ視界の中に両側の波が入ってくる状態でした。

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 しばらくして突出門に向かって左手にあるファニル塔の入口に水が入りはじめて、そちらには行けなくなりました。続いて、島の出入口である突出門に水が入りだし、濡れずに通れなくなりました。突出門の脇から門内に入れる迂回路があったので、そこを通って門の裏へとまわり、寄せては返すたびに確実に近づいてくる海水を見ながら、だんだんと海に隔てられて陸から切り離されていく感覚を味わいました。世俗から離れた環境に身を置くことが普通である修道士はともかく、島流しにあった人たちはこれは隔絶感をおぼえただろうなと思いました。
 
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ファニル塔に続く入口。満潮の時は船を使って出入りすることを想定した造りのような気がしました。

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海水が入りはじめた突出門

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島の内側から突出門
 
 あとで選別するつもりで写真をバシバシ撮っていたら、スマホが電池切れに。変圧器を持ってきていたのですが、パリのホテルにはデスクにUSBポートがあり、そちらにUSBコードを差し込めば充電できたので使わなかったため、キャリーバッグに入れたまま置いてきてしまいました。前日の時点で一日もたないだろうなとは思っていましたが、こんなに朝早く切れるとは……不覚。死んだスマホを見つつ嘆いていたら、N氏が自分のスマホを預けてくれたので、引き続きバシバシ撮らせていただきました(Nさん、ありがとうございました!)。
 
 突出門に入ってくる海水をずっと見ていてもおもしろくないので、もう少し高いところからも見てみようということになり、さらに上に行ってみました。当然のことながら下で見るよりも広い範囲が見渡せ、対岸から島に向かって押し寄せてくる白波などもよく見えました。
 
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N氏のスマホで撮影した満潮
 
 そうこうするうちに潮が引きはじめたので、その場を離れて、ファニル塔やガブリエル塔の近くまで行き、水に埋もれた様子を見たあと、そろそろ修道院の受付が開くので、そちらへと向かいました。
 
 ところが着いてみると、オープン時間の9時半を過ぎているのに、受付に行く階段にはロープが張られていて、その前で人がたむろして待っている状態。開くはずなのにまだ開いていないといった感じなので、適当なところに腰かけて待っていると、女性のスタッフが現れて、フランス人ファミリーにはフランス語で、我々には英語で、それぞれ個別にまわって事情を説明してくれました。満潮でスタッフが来られなくて、オープン時間が遅れるとのこと。彼女はその後もずっと階段に立っていて、新しい客が来るたびに逐一説明していました。これぞ神対応だと思いました。
 
 待っているあいだに、こんなに従事している人がいるのかと思うくらいの人数のスタッフが続々と出勤してきて、観光客も続々とやってきて長い列をなし、結局開いたのは1時間遅れの10時半でした。あんなにスタッフが揃わないのでは運営できないので仕方がありません。
 
 ということで、開門直後に行って空いているはずが混んでいて、しかもホテルのチェックアウトタイムが11時半だったので、それまでに戻るつもりで荷物は部屋に置きっ放し。なので、早足でさっさと見学しました。当初この日にオーディオガイドを借りる予定だったため、前日は借りなかったのですが、悠長に聞いている時間がなかったので、借りるのもあきらめました。それでも私は前日に時間をかけてゆっくりと見てまわっていて、その時には悪天候のためか締め切られていて見られなかった西のテラスもその日は開いていたので満足でしたが、N氏は気の毒でした。けれども、人はどうしたって自然には勝てないので、これも仕方がないことです。
 
 11時過ぎに修道院を出ると雨が降っていましたが、ホテルに戻ってチェックアウトし、お昼を食べたら島を出てシャトルバスで対岸へ行き、バスを乗り換えてレンヌ駅に向かい、パリに戻るだけなので、ノープロブレム。
 
 チェックアウト時に1階のレストランの予約をし、11時半の開店とほぼ同時に入店。今回宿泊した「ラ・メール・プラール」は130年の歴史がある老舗ホテル兼レストランで、ホテルの前身である宿屋を営んでいたプラールおばさんが、遠くからやってきた巡礼客のお腹を満足させるために考案した巨大オムレツで知られます。レストランの入口に窯があって、今もその窯でオムレツを焼いているのが特徴。現在はホテル兼レストランの他、カフェやお菓子屋兼食料品店、グッズショップなど兄弟店が島内に10軒ほどあり、モン・サン・ミッシェルで一大勢力を誇っています。
 
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「ラ・メール・プラール」店内入口の窯。たくさんのオムレツが同時に焼かれています。
 
 レストランの店内には所狭しと訪れた著名人のサイン入り写真が飾ってあり、隣のグッズショップには記念メダルの自販機もありました。私が集めているこのメダルは、日付や名前が刻印できる日本の記念メダルと違って、フランス造幣局が製造し発行している物で、観光名所としてメジャーな施設や観光地のインフォメーションなどで、それぞれの場所に因んだ絵柄で販売されています。つまり裏を返せば、その記念メダルが売られている場所は、フランスが認めた訪れるべき名所ということです。モン・サン・ミッシェル修道院と同じく、「ラ・メール・プラール」にも、修道院を中心にした島の絵柄と、オムレツを焼いているプラールおばさんの絵柄の2種類があったので、両方とも買いました。

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今回の旅でゲットした記念メダル。シャンティイの2枚(上段)は裏面にフランス造幣局の刻印が入っていないので、製造および発行元が違うのかもしれません。
 
 一応予約客なので店内奥の席に案内され、前菜のスープと名物の巨大オムレツを注文。ネットで味が薄いというコメントがあったのでマッシュルーム入りにし、食べ切れないことも考慮して、N氏とシェアしました。世間のコメントほど不味いとか味が薄いとかは思いませんでしたが、大きいので、一人で食べると途中で飽きると思います。
 
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名物の巨大オムレツ
 
 次第に混んできて満席になり、来店した客が待たされるようになったので、食べ終わってすぐに店を出て、島を後にし、歩道橋からシャトルバスに乗車。時刻は1時過ぎぐらいで、レンヌ駅行きのバスの出発時間が2時5分でまだ少々時間があったので、陸側のホテル街で途中下車して大きな土産物屋に寄り、サブレと塩を買いました。サブレについては、「ラ・メール・プラール」の物もたくさん売っていたのですが、種類によっては日本のセブンイレブンでも買えると聞いたので一切買わず、モン・サン・ミッシェルの美しい絵柄の缶に入ったメーカー不明の物を選びました。記念ですから、味より見た目です。
 
 買い物後、再びシャトルバスに乗ってビジターセンター近くの終点まで行き、少し離れたレンヌ行きのバス乗り場へ。行きと違って、すでに10人以上が並んで待っていました。
 
 出発時間までにさらに人が増えて、それぞれが荷物を預けたり運転手からチケットを買ったりで乗車に時間がかかったので、バスは7分遅れで出発。TGVへの乗り継ぎ時間がもともと20分だったので、行きは28分あったのに、帰りは13分で乗り換えなければならなくなりました。しかも混んでいたせいか、背負っていたバッグをバスの下にあるトランク部分に預けろと運転手に言われ、機内持ち込みサイズより小さかったので、「はぁ?」と思ったのですが、言い争っても時間がさらになくなるだけなので、おとなしく従いました。土産物を買ったあと荷物が増えたので、エキスパンド機能で広げて大きくしたのがいけなかったかもしれません。
 
 レンヌ到着後、腰痛持ちのN氏には先に駅に行ってもらい、荷物を引き取って後を追いかけ、なんとか無事に15時35分発のTGVに乗車。N氏は行きの教訓を活かし、座席には座らずに、出入口付近のスペースでストレッチをしていたので、私は車内の売店でコーヒーを買ってきて、一人でのんびりと飲んでいました。コーヒーを頼むと必ずと言っていいほどチョコレートが付いてくるのですが、シュガーを断ったら二つくれました。
 
 5時過ぎにパリ・モンパルナス駅に到着し、駅構内にドラッグストアがあったので、N氏が切らした湿布を買ったあと、メトロ4号線でパリ北駅まで行き、一昨日と同じホテルにチェックイン。部屋が前と同じだったので、「同じ部屋だね」と言うと、レセプションのおにーサンが「家に帰ってきたみたいでしょ」と言うので、「そうだね」と答えて、その日の夕食を予定していた「カフェ・ド・ラぺ」を予約してもらいました。
 
 7時に予約を入れてもらったので、30分前に出かけ、メトロの4号線から8号線に乗り換えてオペラ駅まで行き、オペラ・ガルニエの近くにある「カフェ・ド・ラペ」へ。オペラ座の設計者であるシャルル・ガルニエが創った150年以上の歴史があるレストランですが、シーフードスタンドが有名で、せっかく冬に来たので、生ガキが食べたくて、ここにしました。ノルマンディーに行くので、大西洋沿いのサンマロとかに行ければそっちで食べたのですが、そこまで足を延ばす余裕がなかったので。
 
 オイスタースタンドときのこスープ、そして、いつもは1杯目はシャンパーニュなのですが、生ガキといえば白ワインなので、シャブリのプルミエクリュをグラスで注文し、お代わりでサンセールを頼みました。

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「カフェ・ド・ラ・ぺ」店内とオイスタースタンド

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きのこスープとサンセール。たいへん美味だったのですが……。

 どれもこれも美味しかったのですが、食べ終わったあと、行きのフライトと同じく体が熱くなってきて貧血を起こしそうだったので、早々に会計をして店を出ました。外の空気にあたったら回復したのですが、地下鉄に乗ったら、やっぱりダメだという状態になり、ひと駅で降りて、ホームの端で嘔吐。吐いたらスッキリして気分もよくなったので、牡蠣にあたったわけではなく、単なる消化不良と貧血だと思ったのですが、帰りのフライトで喉が痛くなり、これは絶対に風邪の予兆だなと思っていたら、帰国の二日後から熱が出て、医者に行ったら肺炎の手前とか言われたので、この旅に出る前からすでに内臓が弱っていて、免疫力も落ちていたのでしょう。
 
 翌日は夕方4時過ぎの便で帰国だったので、昼過ぎの1時ぐらいまでは時間がありましたが、今回の旅の目的はすべて果たし、もう特に見たいもの、やりたいこと、行きたいところもなかったので、その日の午前中はN氏についていくことにしました。パリ近郊で行こうと思って行っていないところは、もはやフォンテーヌブロー宮殿ぐらいで、そこは3~4時間で行って帰ってくるのはしんどいので。
 
 ということで、サン・ジェルマン・デ・プレにあるボン・マルシェに行きました。1852年創業の世界一古いともいわれる老舗デパートです――行くまで知りませんでしたが。本館は10時開店ですが、食料品館は8時半から開いているので、ホテルをチェックアウトしたあと、例によって荷物を預かってもらい、メトロ4号線から10号線に乗り換えてセーブル・バビロン駅で下車し、まずは食料品館へ。
 
 本当に目新しいいろいろな物が売っていて、欲しいものはあれこれあったのですが、今回は三泊の旅で、スーツケースを持ってくるほどではなかったため、キャリーバッグで来たので、バッグに空きスペースがほとんどなく、これ以上荷物を増やせなかったので、トリュフのパスタとチップスだけ買いました。
 
 10時を過ぎたので隣の本館に行き、N氏が買い物をしているあいだ、一人で店内をぶらぶら。黒の革手袋が去年から行方不明で、茶と赤しかなくて不便だったので、気に入った物があれば買おうと思ったのですが、なかったので、本館では結局何も買わず。
 
 N氏が購入商品の免税手続きを終えると、11時半近かったので、何か食べようということになり、店内にあるカフェのメニューを見ると、11時半からランチタイムになるみたいだったので、とりあえず店に入ってドリンクを頼み、「11時半になったらランチメニューを頼むよ」と言うと、もうオーダーできると言うので注文。何を食べたか忘れてしまいましたが、入っていたソーセージがやたら美味しかったことだけは憶えています。
 
 1時になったので、店を出てN氏と別れ、ホテルに寄って荷物を引き取り、北駅からRER B線でシャルル・ド・ゴール空港へ。行きは朝早かったせいか各駅停車でしたが、帰りは空港までノンストップだったので、これ幸いと四人席を占領し、キャリーバッグを広げて、ボン・マルシェで買った物を詰め込むため、荷物整理をしました。
 
 帰りの飛行機では、行きのこともあり、かつ喉が痛くなりはじめたので、機内であまり飲食できませんでしたが、とりあえずグラスでもらえるシャンパーニュだけは飲みました。せっかくエールフランス航空の便に乗っているのですから。エコノミークラスでも食前酒としていただけます。
 
 ミールサービス後、いつもは爆睡なのですが、今回は残念ながら眠れなかったので、小栗旬主演の「銀魂」と藤原竜也主演の「22年目の告白ー私が殺人犯ですー」を見ました。二人ともチーム蜷川の一員で、若いころから舞台で活躍していて、馴染みのある俳優さんなので。まったく毛色の違う2本の邦画でしたが、どちらもわりとおもしろかったです。特に印象に残ったのが、「銀魂」の志村新八役の菅田将暉クン。NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の時の、強烈な目力と目まぐるしく変わる豊かな表情で圧倒的な存在感を見せた井伊万千代(のちの直政)からえらい豹変ぶりで、久しぶりに若い役者さんでスゴイと思いました。
 
 約12時間のフライトで、1月7日のお昼過ぎに羽田空港に到着。三泊六日(行きも帰りも機中泊なので)のフランス旅行、一応無事(?)に終了です。