羽生雅の雑多話

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望海風斗の歌の上手さを再認識させた柚希礼音主演「マタ・ハリ」感想

 昨日は東京フォーラムで、元宝塚星組トップスター、チエこと柚希礼音さん主演のミュージカル「マタ・ハリ」を観てきました。中学以来の友人が一緒に観る予定だったヅカ友が家庭の都合で行けなくなったということで、急きょピンチヒッター。先々週の日生劇場での「黒蜥蜴」、先週の宝塚雪組公演「ひかりふる路(みち)~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~」と続いて三週連続の観劇ですが、5時からのソワレだし、興味のある主人公で、音楽がフランク・ワイルドホーンだから、まあいいかと思い、行ってきました。


 正直いって、最近観た3本の中で一番おもしろくありませんでした。3本を一緒に観劇した友人も「だんだんレベルが下がっている」と言っていましたし。脚本も芝居もおもしろくなく、ただし楽曲はいいので(さすがはワイルドホーン)、半分寝つつ歌だけ聴いていました。しかし、その歌自体もイマイチで、とりあえず曲だけはいいという作品でした。

 まずアンサンブルが壊滅的でした。個々の歌は声も出ていて、特に下手な人はいないのですが、アンサンブルになると酷い。稽古不足なのか、これが限界なのかはわかりませんが、寄せ集め感が満載。声は出ていて迫力はありましたが、きれいにハモらないし歌詞も聞きづらく、声を張り上げればいいってもんじゃないと、つくづく思いました。声量があって音程を外さずに歌える人を集めましたというキャスティングか?と思ったぐらいですから。声量がないよりあるにこしたことはありませんが。

 とりわけメインの三人が残念でした。一番若いアルマン役の東啓介クンは三人の中でも一番歌えているような気がしましたが、ラドゥー大佐役の加藤和樹さんと声質や歌い方が近いので、二人が一緒に歌ってもうまくハモらないし、近いからかぶってしまって、お互いに何を言っているのかわからない。チエと加藤さんは歌っているときは全力で歌っているというだけで全然芝居っ気が感じられないので、もう少しミュージカルの歌というものを勉強したほうがいいです。音程を外さずに迫力のあるでかい声で歌えばいいってもんではないのです。特にソロでは、声が小さくても滑舌がよければマイクが拾ってくれますから、ちゃんと聞き取れますし、場面や感情に合わせて張り上げたり囁いたり大小の抑揚があるものです。二人とも一所懸命歌っているのはわかるのですが、歌い方が一律で、どれも同じ。特にチエは、元男役の性とはいえ、高音がダメダメ。地声に近い低音はまだ芝居をしつつ丁寧に歌っているのですが、高音は音程を外さず声をかすれさせず歌うのが精一杯なのか、芝居っ気の「ケ」の字も感じられず、マタ・ハリではなく完全に柚希礼音。楽曲がいいので、きりやん(霧矢大夢さん)やタータン(香寿たつきさん)の歌で聴きたいと思いながら聴いていました。二週連続で新旧のタカラジェンヌが歌うワイルドホーンを聴いて、やっぱりだいもん(望海風斗さん)って歌が上手いのだと再認識しましたし。

 チエは踊る姿もビミョーでした。露出度が高くて色っぽい衣装なのですが、ガタイが立派すぎることもあって、色気がない。ラドゥー大佐とアルマンが彼女を巡って殺し合うほどのファム・ファタールには到底見えませんでした。この役もちゃぴ(愛希れいかさん)あたりが演じて踊ったらいいのではないかと思いました。

 まあ、最初からチケットを取って観に行った作品ではなく、つまりそれほど期待していたわけではないので、こんなものだろうということで帰ってきました。おもしろくはないけど、わかりやすい作品なので、役者次第でよくなる芽はありそうでしたが。役者がどれだけ掘り下げて芝居ができるかと、美しい楽曲を歌いこなすかで、また印象は変わる作品だと思います。