羽生雅の雑多話

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宝塚メモ~当代最強の三人・珠城りょう&愛希れいか&美弥るりか

 4月になり、はや桜も散ってしまいました。


 3月はいつものことながらバタバタしていて、先々週の土曜は教員で春休み中の高校時代からの友人と恵比寿にフレンチを食べに行き、先週の土曜は中学時代からの友人とそのヅカ友と宝塚観劇後にペニンシュラプリフィックスコースを食べてきました。翌日曜は飛鳥山で花見をし、月曜火曜は仕事関連の飲み会、昨日は京王プラザで軽く飲み、ようやく何も外出予定がない土日で、久しぶりに昼まで寝ていました。

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飛鳥山に行く前に寄った雑司が谷の法明寺の八重桜。桜まつりが行われていて屋台が出ていましたが、染井吉野はほとんど終わっていました。

 ということで、記事を書くのが遅くなりましたが、先月末に月組公演を観てきたので、以下その感想になります。演目は、ミュージカル・プレイ「カンパニー~努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)~」と、ショー・テント・タカラヅカBADDY(バッディ)~悪党(ヤツ)は月からやって来る~」。いやもう、どちらもたいへんおもしろかったです。今までにないおもしろさでしたね。観終わってすぐにリピートを決めました。ミュージカルもショーも一筋縄ではいかない作品でしたが。今は月組が一番充実していると思いました。前回の「ポーの一族」もよかったのですが、花組とは勢いとかパワーとか、全体的な組力が違いすぎました。今やダンスは5組で一番踊るし、歌もがっかりするような人はいませんし、芝居は伝統的に上手い組ですし。

 なんといっても主演級の三方が素晴らしかったと思います。絶妙なバランスで、左右にちゃぴ(愛希れいかさん)とみやるり(美弥るりかさん)がいるたまきち(珠城りょうさん)は最強のトップスターだと思いました。雪組のチギ(早霧せいなさん)&ゆうみ(咲妃みゆさん)&だいもん(望海風斗さん)のトリデンテも強力でしたが、今の月組の三人はカラーが明確に異なり、それぞれがそれぞれの特色において抜きん出た存在なので、どんな演目でも何でもできる自由さを感じます。

 5組一男らしいトップスターのたまきちは、実直さや誠実さといった人柄のよさを感じさせる安心感のある容姿に、同じく安心感のある立派なガタイからは逞しさや頼もしさ、ワイルドさといったものがあふれています。スーツや浴衣、さらに柔道着をあんなに男らしく着こなせるトップは他にいません。そのスーツも、どちらかといえばオシャレな感じではなく、サラリーマンの制服的な、いわゆる背広です。文句なく似合っているのに、どこか垢抜けなくて、カッコいいんだけど、いささかダサいような……ショーのバッディは一瞬剛(草なぎ)かと思いました。任侠ヘルパーの弟?みたいな感じ。きわめつけがフィナーレで、長い宝塚観劇歴ですが、お決まりの羽根を背負ったトップスターが黒サングラスをして大階段を降りてきたのは初めてでした。しかも、ほぼ真っ白な衣装と羽根で……でも、たまきちなら許せます。たまきちにしかできない力業です。

 それから、5組一の麗人であり、他に類を見ない唯一無二の存在として、トップスター以上の存在感を放つ二番手みやるり。今回も男か女かわからない超越した魅力炸裂で、明らかにたまきちより目立っていました――ショーのスーツの色からして。みりお(明日海りおさん)も美しいのですが、麗人という言葉があてはまるのは、みやるりのほうで、歴代タカラジェンヌの中でも随一の麗人といっても過言ではないと思います。麗人なのにひ弱さはなく、現実世界ではYOSHIKIGACKTに代表されるようなカッコいい男を作り上げていると思います。あれも世に存在する男性像の一つです。YOSHIKIGACKTが女には見えませんから。数いる男役の中でも、色気のある綺麗な男として、みやるりは完成された男役で、もはや次元が違う完成度の高さだと思います。体の使い方や仕草、目線や表情など、どれをとっても美しい男役として隙がなく、実に見事。まさに眼福です。

 それから、可愛さと強さを兼ね備えたちゃぴ。立ち姿があんなにスッとしていて堂々とし、男役に匹敵する圧倒的な存在感がある娘役も他にいません。ちゃぴを中心とした今回のロケットの場面はすごかったです。定番のラインダンスで怒りを表せる場面が作れるとは思いませんでした。それを可能にしたちゃぴの体全体を使った表現力はもちろんのこと、この場面を作り上げた演出家にも拍手を送りたいです。ロケットメンバーの下級生にもいい経験になったのではないでしょうか。たまきちとのデュエットダンスも見ごたえがありました。まさお(龍真咲さん)とみりおのデュエダン以来のインパクトでしたね。まさみりのデュエダンは、長らく切磋琢磨してきた二人の思いが表れたもので、上手いとか下手とかを通り越したものでしたが。

 他組にはない強烈な個性を放つ三人に付いていき、彼らを支える組子たちも強力です。

 他組にも通じる二枚目男役スターである三番手レイコ(月城かなとさん)は、今回も含めて最近の役柄はやや三枚目よりですが、花組のみりおやカレー(柚香光さん)、宙組のゆりか(真風涼帆さん)に劣らぬ美貌で、アイドル役や王子役が似合いすぎです。そのレイコに対抗できる若手男役スターで、二枚目も三枚目もできるあり(暁千星さん)も最初から最後までフル回転。二人とも今回は王子になったりエビになったりで、何でもアリの大活躍でした。

 さらに特筆すべきは、個性発揮しまくって存在感ありすぎのバイプレイヤーたち。

 変な宇宙人役なのにカッコいい実力派若手男役のまゆぽん(輝月ゆうまさん)は、出てくるたびに気になりました。宇宙人の姿であっても銀行員のデキル男をきっちりと表現していましたし。平サラリーマンの山田役もハマっていて、たまきち演じる青柳の元上司である大塚部長役のゆり(紫門ゆりやさん)との掛け合いが楽しく、やたらリアルでした。私の大好きなロミジュリではパリス伯爵とヴェローナ大公を演じていたこの二人……変われば変わるものです(笑)。

 まゆぽんと同じぐらい妙ちきりんな、頭に地球を乗せた、よく考えると変なドレス姿なのに、毅然とした女王に見える組長すーちゃん(憧花ゆりのさん)もさすが。地球があれほど似合う人もいないでしょう。コスプレではなく、ちゃんと女王の衣装の一部に見えましたから。ちゃぴと同じぐらいの存在感が出せる貴重な娘役です。彼女のおかげで、ちゃぴが浮かずに済んでいますから。

 ちゃぴの後継者と思われる娘役スターなのに、ミュージカルではずっとジャージ姿で、それでも個性的な出演者の間で埋もれることなく、魅力的な女性のスポーツトレーナー役を演じきったくらげちゃん(海乃美月さん)にも拍手。

 ミュージカルでは物語の肝である脇坂専務役を演じ、ショーではオマール海老レイコ&ロブスターありを左右に従えて踊るオイスターじいや役の光月るうさんも、重鎮役にふさわしい落ち着きと貫禄を見せながら、かつコミカル度マックスで、相変わらずいい味出していました。

 そして忘れてはならないのが、芝居、歌、ダンスの三拍子が揃ったテクニシャンのとし(宇月颯さん)。アイドルグループのリーダー役のダンスもトップコンビのデュエダンの影ソロも素晴らしかった。この公演で退団とは本当に惜しいです。いずれ専科に入り、組の枠を超えて広く活躍してほしい逸材でした。私にとってロベスピエールといえば、だいもんでも他の誰でもなく、としであり、アトスはとし以外には考えられません。彼女の男役芸が見られなくなるのはとても残念です。

 今回のショーを手がけたのはウエクミ(上田久美子)さんで、ある意味、感性豊かなウエクミさんらしい作品でした。いろいろと突き抜けたところもありましたが、彼女の世界観は好きなので共感できます。ネットなどを見ていると賛否両論あるようですが、十分に宝塚らしい、宝塚の作品として何の問題もないと思います。宝塚らしくないというよりは、いつものレビューっぽくないということではないでしょうか。今までのレビューが好きな人は、確かに今回の作品は違和感があったかもしれません。私は最近のショー作品の中では出色の出来だと思っていますが。エンターテインメントは、らしさよりも、おもしろくてなんぼ、ですから。

 石田昌也さんが手がけたミュージカルも、日本を舞台にした現代劇で、あのレベルまで持っていったのは素晴らしいのひと言です。原作がある作品ですが、当て書きに近いような絶妙なキャスティングで、それぞれのスターの見たい姿を見せてくれたと思います。個人的には、作中での衣装の変化がよかったと思っています。コスプレではありませんが、現代的な衣装を、たまきちもみやるりもレイコもファッションショーのようにいろいろな形で着こなして魅せてくれました。特に印象的だったのが、柔道着のたまきちと、ウィーンのカフェのみやるり……あの二人を一つの作品の中で見られるのが、今の月組の凄さだと思います。

 また、今回の2作品は両方とも、衝撃と笑いの中にも、きわめて現実的な問題提起を孕んだ作品でもありました。世の劇団が抱える問題や、社会に適合できない少数派たちの問題等々……そのあたりがよりいっそう宝塚らしくなく、拒否反応があったのかもしれません。夢の世界においてまで現実を見せられたくないということで。でも、今の月組のように、それらのテーマを宝塚らしさにうまく取り込んで、宝塚らしく、宝塚ならではの見せ方ができる力があるのなら、どんどんチャレンジしていくべきだと思います。そして生徒も演出家も、固定概念や慣習にとらわれず、これからも様々なトライアルをしてほしいです。“タカラヅカ”という基本は押さえつつも。