二日目は、22日から三日間開催される大山の大献灯――和傘祭りを見に行く予定だったので、大山寺と大神山神社の奥宮、そして大山に行く途中にある大神山神社の本社に行こうと思ったのですが、バスの本数が少なく、最寄りのバス停から徒歩10分の本社に行くのに30分しか余裕がないとか、その次のバスにすると2時間以上待たされるとかいった感じで、どう考えても効率よくまわれないので、次の日改めて行くことにし、前日カラコロ工房からホテルに帰る途中で見つけた、堀川沿いにあるレンガ造りの喫茶店――「珈琲館」に行ってコーヒーを飲むことにしました。ホテルで弁当形式の朝食を出してくれたのですが、「松江で美味しい昼食を食べてほしいから少量にしてあります」というコメントのとおり量が少なかったので、デザートのつもりでモンブランクレープも注文。2階の窓際の席に座り、食べながらすぐ下に見える堀川を眺めていると、堀川めぐりの小舟が行きかい、乗っている人も3、4人でわりと少なかったので、急きょ堀川めぐりをすることにしました。乗船場も近く、天気も晴れていて、前日とは打って変わってよかったので。
堀川が眺められる「珈琲館」の2階席。頼んだクレープは、デザートという量ではなく、ちょっとした軽食でした。中身はバニラアイスでしたが。
チケット売り場で一日有効の乗船券を買って、カラコロ広場乗船場から乗船。舟は15分間隔だったので、9時45分発に乗ったのですが、その舟はわりと混んでいて、7、8人ほど乗っていました。一周コースを申し込んだら、途中で乗り換えるように言われたので、靴を脱いで一番乗り口に近いところに座りました。コースは京橋川を東に向かい、途中で左に曲がって米子川に入り、左に曲がって北田川に入り、途中で左に曲がって城山内堀川に入り、行き止まりの大手前乗船場で乗り換え。再び城山内堀川から北田川に戻り、今度は西に向かって塩見縄手の前を通って、ふれあい広場乗船場で折り返し、内堀を通って一周し、カラコロ広場乗船場に戻ってくるというルートで、所要約50分。のんびりとして気持ちよく、いい時間でした。そしてまさに、松江は水都だと実感しました。
舟より堀川。目の前の橋は低いので、くぐるときは屋根が下りてくるため、身をかがめる練習をさせられました。
天気が良くなったので甲羅干ししている亀たち。こっちも気持ちよくなりました。
堀川めぐりのあとは徒歩で松江駅まで行って、12時01分発の特急「八雲」に乗車。松江から米子まで5駅なので、各駅停車でも10分ぐらいしか変わらないのですが、米子駅発の大山るーぷバスの時間が八雲の発着時間に合わせてあるので、次の電車だと間に合わないため、750円の特急料金を払いました。乗車料金は500円なのですが……まあ、時間には代えられません。二駅で24分に米子駅に到着すると、バスが35分発だったのですぐにバス乗り場へ行ったのですが、一日乗り放題の乗車券は車内では買えず、バスターミナルか駅構内の観光案内所で事前に購入するようにとのことだったので、駅に戻って観光案内所へ。外国人旅行者が大山のことを訊いていて、案内所の人が英語が堪能ではないため時間がかかっていてイライラしましたが、なんとか間に合って乗車しました。
このバスは13時15分には大山寺バス停に着くのですが、和傘祭りが始まるのは当然のことながら日没後なので19時30分から。その前に大神山神社奥宮と大山寺に参拝するつもりでしたが、両所は近いので1時間半もあれば十分で、あまり早く行っても時間を持て余すため、2時半ぐらいに行って、寺社仏閣の社務所や御守り授与所が閉まる4時半ぐらいまでに参拝を終えればいいと思っていました。大山寺の参道付近は参拝のあとライトアップまで時間があるので、その間に散策すればよかったので、とりあえずどこかで途中下車して食事でもしようかと思ったのですが、もらった運行ガイドのパンフレットを見ても、バスが停車する施設で興味があるところがなく、考えた末、「リストランテ天空」に行ってみることにしました。周辺の食材を使ったフレンチベースのイタリアンレストランで、宿泊施設があるオーベルジュになっていて、2食付きで1泊4万円ぐらいするところだったので。
リストランテ天空・天空教会バス停で降りてレストランへ行き、予約がないけど食事ができるか訊いたら、できるというので店内へ。
「リストランテ天空」の店内
窓際の席に案内され、1時間後の14時41分発のバスに乗るつもりだったので、コースが食べられるか訊いたら、小一時間で食べられるというので、大山コースとスパークリングワインを頼みました。スパークリングは前日と同じオペラで、大山コースのメニューは下記のとおり。
・境港産本日の魚の昆布締めのカルパッチョと和牛のたたきのマリアージュ
前菜。右の赤身が鳥取和牛「オレイン55」のたたき。
席より見えた窓の景色
権現造りの大神山神社奥宮本殿
弁財天社の立札
大山寺本堂(かつての大日堂)。和傘祭りの準備中。
鐘楼裏の巨石と石像
「コモレビト」のテラスから見えた大山。美しい山です。伯耆富士と称えられるのもわかります。
夜の大山寺参道
大神山神社奥宮参道の両脇に置かれたライトアップされた和傘
参道脇のプロジェクションマッピング。怪しげでよかったです。
大山寺本堂。夜はこんなふうになっていました。スタッフの方、お疲れ様でした。
斜めより、大山寺本堂
月夜の護摩堂
ライトアップされた大山寺山門
・白子のロワイヤルスープ
・ウニのトマトクリームスパゲティ
・境港産 魚のポッシェ 海老のクリームソース
結果的にはギリギリで、デザートとエスプレッソはゆっくり味わえず一緒に出してもらいましたが、とてもよかったです。オードブルのプレートに入っていた和牛のたたきが絶品で、思わず絶賛し、何牛か訊いたら、鳥取和牛「オレイン55」とのこと。知らない和牛だったので、すぐにケータイでメモりました。
前菜。右の赤身が鳥取和牛「オレイン55」のたたき。
席より見えた窓の景色
なんとかコースを完食し、席で会計をお願いしましたが、待っていられなかったので、結局店の入口近くのキャッシャーまで行って支払いを済ませ、店を飛び出しバス停へ。1分前でした。
当社の祭神は大己貴神ことオホナムチ――出雲大社と同じです。記紀が編纂された時代の行政区分では伯耆国ですが、オホナムチの時代には、当然のことながら伯耆という国はなく、出雲大社がある出雲の国と同じく、このあたりはネの国、あるいはサホコチタルの国と呼ばれていました。
参拝後、御朱印をいただき、御守り授与所で売っている天狗の根付を選ぼうとしたら、「手を触れないでください」と言われたので、「大きさも大小あって、色も2色あるのに、手に取って比べて選べないのですか?」と訊き返すと、「どれもみんな同じです」との返事。明らかに同じではないので腹が立ちましたが、これ以上問答しても仕方がないのでガラス越しに凝視すると、大きい天狗は緑1色で、小さい天狗は緑と赤の二つが付いているようだったので、小さいのを買いました。天狗に罪はないので。
とりあえず用も済んだので、さっさと外に出て境内を散策。社殿自体は1800年代に再建された比較的新しい建物なので、特に気になるところもなかったので。境内には、摂社か末社かわかりませんが、下山神社と弁財天社があり、下山神社の社殿は立派なもので重要文化財だそうですが、祭神は鎌倉時代末期の人で、こちらもまったく興味がなかったのでスルー。弁財天社の祭神は、立札に多紀理毘売命・市寸嶋比売命・多岐都比売と書かれていたので、おそらく元々は宗像三女神のうち多紀理毘売命を祀っていたのだと思います。多紀理毘売のまたの名はオキツシマヒメで、彼女はオホナムチの妻ですから。出雲大社の摂社、筑紫社の祭神です。つまり、当社の弁財天は竹生島弁財天ということです。神社における本社と摂末社の関係は基本的に筋が通っていて、辻褄が合っているものです。
権現造りの大神山神社奥宮本殿
弁財天社の立札
ひととおり見終わって時計を見ると4時を過ぎていたので、急いで隣の大山寺に向かいました。大山寺は寺なので入山料を払う受付があるのですが、三井寺などでの経験上、4時半には閉まるので、少々焦りました。隣と言っても、山を下りていかなければならず、参道が自然石の石畳で、かつ登ってくる人がいることも考えると、15分はかかるので。参道の両脇では、着々と和傘祭りの準備が進められていました。
一の鳥居を出ると、左に大山寺の山門に続く石段があるのですが、その前で「和傘祭りのチケットは5時から販売開始します」と拡声器で案内をしているお姉サンがいたので、どこで買えるのか訊いたら、300メートルぐらい下った大山寺参道の真ん中あたりにある特設テントとのこと。ならば10分前ぐらいに行けばよいと思い、石段を上がって山門へ。
山門に入山料の受付があるのですが、4時半前でしたがすでに閉まっていて、けれども中には入れたので、さらに上にある本堂を目指しました。途中、左手に御守り授与所があり、ちょうど片付けをしていたところだったので、急いで朱印帳を出し、御朱印をお願いしました。ギリギリセーフで書いていただけたので、あとは慌てることもなく本堂に向かい、参拝。ここでも和傘祭りの準備をしていて、祭りがあるため、5時で参拝客は追い出されるとのことでした。
大山寺は奈良時代の養老2年に金蓮上人によって開山、今年開山1300年を向かえます。元々大山はオホナムチの時代より神山として信仰されてきました。よって大山に対する山岳信仰があり、大山を拝む遙拝所が大神山神社奥宮の起源で、この遙拝所の近くに金蓮が草庵を結んで地蔵菩薩を祀ったのが大山寺の起こりです。平安時代になると天台宗が統括するようになり、座主は総本山である比叡山から派遣され、ここで任期を勤めたあと、比叡山に戻って昇格するという、僧侶のキャリア形成の場になっていたそうです(byウィキペディア)。
ということで、大山寺は西日本における天台宗の一大拠点だったそうなので、それゆえ松江城普請の時にも当寺によって祈祷が行われたのだと思います。現在の大神山神社奥宮の本殿も神仏習合の江戸時代に大山寺の本堂として建てられたものでしたが、明治の世になると、神仏分離令によって寺と神社は切り離されることになり、本堂は大神山神社奥宮の本殿となってオホナムチこと大穴牟遅命を祀り、本尊である地蔵菩薩は大日堂に移されて、そちらが大山寺本堂となりました。そして現在に至るというわけです。
大山寺本堂(かつての大日堂)。和傘祭りの準備中。
大山寺の境内をひととおり見てまわると、本堂の隣に鐘楼があるのですが、その裏に巨石があったので、ここが大山遙拝所の古代祭祀の跡ではないかと思いました。旧大山寺本堂である大神山神社奥宮の本殿で拝んでも、大山山頂には向いていなかったので。おそらく宝珠山あたりを拝んでいる形になるのではないでしょうか。鐘楼は志納で撞けたので、100円を納めて撞いてきました。
鐘楼裏の巨石と石像
石段を降りて山門を出ると、参道に行列が見えたので、慌てて下って最後尾に並びました。思ったとおり、和傘祭りの入場チケットを買うための行列でした。販売開始の5時までまだ15分ほどあったのですが、みんな行動が早いです。運営スタッフが来たので話を聞くと、混雑回避のため10分ごとに人数を決めて入場させるとのことで、点灯開始は7時半からでしたが、このあたりの列に並んでいる人は3回目の7時50分入場になるだろうとのこと。ただし、一人1枚しかチケットを買えないという規制はないので、前に並んでいる人たちが複数枚買ったら、その限りではないという補足もありました。車で来ているわけではない私は、20時30分発と21時30分発の2本しかない臨時便の米子駅行きバスに乗り遅れると悲惨なことになるので、かなり不安でしたが、なんとか7時50分の回のチケットをゲットすることができました。和傘祭り開催に合わせて米子駅からもるーぷバスの臨時便が出ていて、いつもは15時45分が最終のところ16時20分発、17時20分発があったのですが、16時20分発でも大山寺バス停に着くのは17時10分だったので、それに乗っていたら列に並ぶのはもっと遅くなり、帰りのバスの時間に間に合う回のチケットが買えるかどうかも微妙なところだったので、せっかく臨時便を出して大山に来てもらっても、それでは意味がないのでは――と、この運営システムにはかなりの疑問を抱きました。
ともあれ、入場できるまで2時間半以上もあったので、参道を下りて、参道入口にある大山町観光案内所の上にあるサンセットカフェ「コモレビト」という店に入りました。本当は大山そばが食べたかったのですが、蕎麦屋ではあまり長居できそうになかったので。カフェなら、何かつまみながらアルコールでも飲んで時間をつぶせばいいと思いましたし。
似たような境遇の人たちが多いせいか、店は混んでいて席の空きがなく、ウェイティングリストに名前を書かされましたが、他にカフェのようなところがなく、行くところもないため、順番待ちの椅子が空いていたので、そこに座って待つことにしました。そこでもWi-Fiも使えたので、ヒマつぶしに困ることはありませんでした。テーブル席は空きませんでしたが、一人なのでカウンター席でいいと言うと順番よりも早く案内され、ハンバーガーセットと赤ワインを注文。夕食代わりの巨大バーガーを食べて、付け合わせのフライドポテトをつまみにしながら、赤ワインを飲んでいました。
「コモレビト」のテラスから見えた大山。美しい山です。伯耆富士と称えられるのもわかります。
飲んでいるあいだに日が暮れて真っ暗になり、30分前になったので、店を出て山門へと向かいました。参道の一番下にいるので歩いて15分はかかるので。中秋の名月の二日前だったので月明かりが美しく、夜の参道は神秘的で、何とも言えず魅力的でした。まだ人が並んでいるチケット売り場の特設テントを越えると、またまた行列があったので並んだら、8時の回の列だったので、さらに上へ行き、7時50分の列に並んで15分ほど待つと、時間どおりに入場開始となりました。
夜の大山寺参道
大神山神社の一の鳥居から石畳の参道に入り、参道の途中で右折して大山寺本堂の前を通り、護摩堂の脇から山道を経由して山門の下に出てくるコースで、神社の参道と本堂の前にライトアップされた和傘が並べられていました。
大神山神社奥宮参道の両脇に置かれたライトアップされた和傘
参道脇のプロジェクションマッピング。怪しげでよかったです。
大山寺本堂。夜はこんなふうになっていました。スタッフの方、お疲れ様でした。
斜めより、大山寺本堂
月夜の護摩堂
ライトアップされた大山寺山門
入場規制するほどの混みようなので、長く立ち止まったり、もちろん逆流はできないため、正味15分ぐらいで出口から出てくると、8時10分ぐらいだったので、30分発のバスに乗るため、脇目もふらずに参道を下りました。登りではなかったので10分ほどでバス停に着き、バスはまだいませんでしたが、バス待ちの列ができていたので並んでいたら、5分ほどでバスが来たので乗車。運よく座ることもできました。