羽生雅の雑多話

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宝塚メモ~現花男のイチ押し! 踊れてスタイリッシュな水美舞斗

 もう一週間以上前になりますが、宝塚花組公演「MESSIAH(メサイア)ー異聞・天草四郎ー」と「BEAUTIFUL GARDENー百花繚乱ー」を観てきました。

 
 ミュージカルは「邪馬台国の風」よりはマシという程度の作品。雪組の「凱旋門」、星組「ANOTHER WORLD」、月組の「雨に唄えば」と良作が続いていたので、それらに比べると内容も出来もお粗末すぎて見るに堪えず、ときどき目をつぶってしまいました。花組は男役のトップスターと二番手の並びがビジュアル的には宝塚一で、トップのみりお(明日海りおさん)はもちろんのこと、二番手のカレー(柚香光さん)も何処にいても何を着ていても判るし、様になるのですが、二人とも芝居も歌もダンスも下手なので、誰よりも目立つだけに、観ていて何度もつらくて複雑な気分になりました。娘役トップスターの仙名彩世さんは華やかな男役二人と並ぶだけの華がありませんし。
 
 みりおは役柄に恵まれていないせいもあって、芝居がおもしろくなくなっています。華やかで一見恵まれていて人が羨む存在だけど、内では苦悩しているというような役が彼女の真骨頂で、多少滑舌が悪くてセリフが聞きづらくても、それを補う表現力で引き込むのですが、今回のようなみんなを引っ張るカリスマ役は薄っぺらで、滑舌の悪さだけが悪目立ちします。本当にお遊戯会の主役のようです。見た目が秀逸で抜きん出ているので自然と目がいくため、どうしても悪い点が気になってしまいます。適役にハマったときの、みりおの凄さを知っているだけに、残念で仕方がありません。清顕とかティボルトとかエドガーとか。
 
 というわけで、ミュージカルに関しては不満タラタラでしたが、ショーがそんな憂さを晴らしてくれました。「ミツバチ、誰?」→マイティー、「牛、誰?」→マイティー、「青バラ、誰?」→マイティーという、あとで調べたら気になる役が全部マイティーこと水美舞斗さんだったので驚きでした。何故今まで彼女に目がいかなかったのか不思議でなりません。しかも、なんと彼女はカレーと同じ期待の95期生。ここへきて大ブレイクです。たぶんトップスター候補が同期にわんさかいる中にあって、危機感を持って、相当な努力を積んでいるのでしょう。でも、彼女のような組子がいるのなら、まだまだ花組も捨てたものではないと思いました。それに気づいてからは、センターの一、二番手そっちのけで左右ばかり見ていたのですが、そうしたらけっこう見甲斐があるジェンヌさんがいて、楽しくなってきて嬉しくなりました。アンダルシアの歌手役でいい歌を聴かせてくれたちなつ(鳳月杏さん)も、かつてのルコさん(朝香じゅんさん)や蘭とむ(蘭寿とむさん)、まーくん(朝夏まなとさん)系に通じる花男ですし。これがタカラヅカのいいところです。脇や下級生にちゃんと花組の歴史を受け継いでいる男役がいるのなら、トップスターと二番手が花組らしくなくても、まあいいかという気になりました。
 
 そして、はっきり言って駄作であるにもかかわらず、これだけ喜んでいるお客さんがいるということは、みりおとカレーの二人は、芝居も歌もダンスも下手だけど、見ているだけで幸せというジャニーズアイドルのようなものなのかもしれないと思いました。それはそれで、努力しても得られない稀少なスター性なので、そういうスターがいてもいいと思うし、宝塚にとっても貴重な宝なのだと思います。そう考えたら、みりおがトップのあいだの花組はこれでいいのかもしれないとも思いました。良作、名作といったものは望めないかもしれませんが、アイドルのスター性だけで作品を成り立たせる、かつてのジャニーズ映画や帝劇ミュージカルのような、ある意味大作、話題作といったような作品が見られるかもしれません。それにはもう少し華と存在感のあるヒロインが欲しいところですが……。デュエダンもビジュアル的には美しいのですが、どうにも下手すぎて、ガッカリでしたし。
 
 ともあれ、マイティー、ガンバレ! 今後の花組公演は貴女のパフォーマンスを楽しみにして観に行くことにします。