羽生雅の雑多話

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ドイツ城めぐり旅行記 その1~羽田→シュトゥットガルト(+シュトゥットガルト・バレエ団「椿姫」感想)

 平成から令和にかけて、ドイツに行っていました。

 
 最近とみに昔より体力が落ちていると感じることが多く、それに伴い、気力も衰えてきたので、いつまで思うように働けて、好きに遊べるお金が稼げるかわからないと思い、長い連休などのチャンスがあれば、なるべく旅に出ることにしています。今回も、次にいつあるかわからない10連休という絶好の機会があったので、ノイシュバンシュタイン城と同じく、学生の頃から必ず行くと決めていた念願のホーエンツォレルン城ハイデルベルク城に行ってきました。起点となる街――シュトゥットガルトバイエルン王国の都であるミュンヘンほど興味がなかったので、ノイシュバンシュタイン城より20年以上遅い訪問となりましたが。
 
 先月26日の午前中に荷造りをし、昼食後に羽田空港へ。3時前に着いて、チェックインカウンターでスーツケースをドロップ後、今回は外貨両替など空港でやるべきこともなかったので、早々にセキュリティチェック、パスポートコントロールを通り、ゴールドカード会員ラウンジで無料のコーヒーとトマトジュースを飲みながら、充電しつつスマホで遊んでいました。
 
 そうこうしているうちに搭乗開始時刻となったので、ゲートへ向かい、17時5分発のシンガポールエアライン便に搭乗。目的地はシュトゥットガルトでしたが、10連休が正式に決まってからエアーチケットの手配を始めたら、時すでに遅く、ヨーロッパ直行便は変更不可のエコノミークラスですらもう40万円を下らなくて、経由便もヨーロッパや日本の航空会社はなかったので、アジアの航空会社の中でも比較的好感度の高いシンガポールエアラインを利用することにしました。以前ラスベガスに行ったときにロスまで乗って印象は悪くなかった上に、スターアライアンス加盟社なのでANAマイレージがたまり、実際トランジットの時間も一番短かったので。
 
 シンガポールチャンギ空港までのフライトは約7時間。ミールサービス後、機内エンターテインメントプログラムにあった映画――「名探偵コナン 世紀末の魔術師」と「銀魂2 掟は破るためにこそある」を観たら、再びミールサービスとなって終了。あっという間とは言いませんが、気が付いたら到着という感じでした。コナンは家にいるときはテレビを見ていますし、銀魂は昔ジャンプで原作を読んでいて、実写版の1作目をパリ行きのエールフランス便の中で観たらおもしろかったので、間違いないだろうと思っていたら、やはりおもしろかったです。前作は志村新八役の菅田将暉クンに驚かされましたが、今回は沖田総悟役の吉沢亮クンと土方十四郎役の柳楽優弥クンがイケてました。でも、あのやたらインパクト大のメンバーがわらわら出てくる中で、それでも主役の存在感を出せる小栗旬クンはさすがだと思いました。
 
 シンガポール到着は現地時間で23時5分。パリ行きの出発時間は0時15分で、1時間10分のトランジットでしたが、飛行機を降りたら23時20分ぐらいで、すでに次の便の搭乗開始時刻を過ぎていたので、急いでゲートを確認し、数ある免税店は無視して、トイレにも寄らずに、大慌てで移動しました。幸い同じターミナル内だったので、10分ぐらいで到着し、まだ優先搭乗の段階だったので、とりあえずお手洗いを済ませ、USBポートのあるシートで充電しつつ空港無料Wi-Fiに登録して接続。メールを読んだり送ったりしていたら、オールパッセンジャーがアナウンスされたので、飛行機内へ。
 
 フライトはここからが本番で、パリまで13時間20分という長丁場なので、ミールサービスが終わったら寝るつもりで映画を観る予定はなかったため、機内エンターテイメントの音楽にあったデュランデュランのベストアルバム「GREATEST」を聴きながらどうにか眠気をこらえて、食事が終わったら即爆睡しました。起きたら午前11時で、パリ到着まであと3時間ほど。もはや寝直す時間ではないと思ったので、音楽プログラムにあったビージーズカーペンターズのベスト盤を聴くことに。昔よく聴いた大好きな「ステイン・アライブ」や「ナイト・フィーバー」を久しぶりに聴いて楽しくなり、また、カーペンターズのアルバムは35周年記念のゴールドグレイテストヒッツだったのですが、1曲目はやはりこれだろうと思っている「スーパースター」から始まったので、一気に上機嫌になりました。私が持っている40周年記念盤は、日本のファンの選曲による編成のせいか「イエスタデイ・ワンス・モア」から始まるので。カーペンターズの好きな曲は30曲以上ありますが、個人的には「スーパースター」で始まって「クロス・トゥ・ユー」で終わるのがベストだと思っていて、昔レコードをダビングして聴きまくっていたカセットテープもその編成になっています。なんといっても、カーペンターズの「スーパースター」はイントロから劇的ですから。デュランデュランは20曲ぐらいの収録曲で「ノトーリアス」のあとは聞き流しましたが、ビージーズカーペンターズはどちらも40曲入りで、スマホで自作文の校正をしながら最後まで真面目に聴いていたので、終わったら到着でした。
 
 パリ着は現地時間で7時35分の予定でしたが、飛行機から出られたのは8時過ぎで、なおかつパスポートコントロールに行くと、今まで見たことのない驚きの大行列が待っていました。こんなに混んでいるのは初めてで、CDG以外でも覚えがなく、EU専用を除くオールパッセンジャーOKの窓口だけで300人ほど、いや感覚的にはもっといたような気がします。思わず「なんじゃこりゃ」と叫びそうになりましたから……というのも、8時59分発ストラスブール行きのTGVに乗るつもりで事前にフランス国鉄ホームページのオンライン購入でチケットを買っていたので。10、20人ぐらいだったら急いでいるからと断って先に通してもらうのですが、この人数ではとても言えない……という感じでした。自分より前の人は相当長い時間待っているはずですし、中には年配者や小さいお子さん連れの人もいて、みんな外国人だから文句も言えないのかもしれませんが、自然渋滞みたいなものなので、文句を言ったところでどうにかなるものでもありませんから……4年前に同時多発テロがあったパリでの入国審査なので、一人一人に時間がかかるのも仕方がないですし、窓口も全部開いていてフル回転していましたし。
 
 結局8時10分ぐらいから並んで、窓口を通過できたのは8時57分でした。30分を過ぎたぐらいから確実に電車に間に合わないと思ったので、スマホでフランス国鉄のサイトにアクセスし、TGVのチケットをキャンセルできないかと試みましたが、予約したときに作成したマイページが開けなくて、できず。ストラスブール駅で旅の同行者と待ち合わせをしていたので、とりあえず遅れるということだけ連絡しました。
 
 シンガポールエアラインはターミナル1に到着したので、ターミナル2にあるTGV駅に着いたのは9時15分。到底8時59分発の電車に乗れるはずはありませんでしたが、次のストラスブール行きは11時半頃だったので、7時35分に飛行機が着くというタイムスケジュールになっている以上、4時間後の電車に乗るという選択肢はありませんでした。結果的にはそうなりましたが……。
 
 自分の見込みが甘かっただけで、誰が悪いわけでもなく恨めないので、改めてチケットオフィスの列に並んで窓口でTGVのチケットを買いたいと言ったら、TGVは反対側だと言うので、向かい側にあるTGVと国際列車専用のチケットオフィスの列に並び直しました。こちらは切符売り場というよりも旅行会社の窓口のようなところだったので、反対側に並んでしまったのですが。順番が来て窓口に呼ばれて、受付のおねーサンに、次のストラスブール行きのチケットがほしいと言ったら、何だかんだと言ってくるので、ホームプリントしてきたオンライン購入のチケットを見せつつ、この電車に乗り遅れたので一番早いストラスブール行きに乗りたいんだと再度言ったら理解してくれ、「36ユーロかかるけどいいか?」と言われました。すでに電車が出発しているので、持っている切符は無効となり、一から買い直す羽目になると思っていたので、前売料金と当日料金の差額+手数料ぐらいの値段でいいと言われて、ちょっと嬉しくなりました。TGVの前売りと当日売りの料金差が大きいことは前回リヨンに行ったときにわかっていたので、早めに手配したのですが……まあ、そこは仕方がありません。
 
 切符を手に入れたあと、疲れたので、時間もあることだし、シャンパーニュでも飲みながら休みたいと思ったのですが、飲めそうな店が見あたらなかったので、近くに発見したスタバで5ユーロのカフェオーレ(高い)を買い、待合室でスマホをいじって過ごすことにしました。シャルル・ド・ゴール空港の無料Wi-Fiもフランス国鉄の無料Wi-Fiも入る場所だったので。11時になると電光掲示板に番線が出たので、有料トイレ(0.8ユーロ)に寄ってから、ホームへと向かいました。
 
 乗った電車は時間どおり13時13分にストラスブール駅に到着し、ホームに出迎えに来ていたN氏と無事合流。昼食を摂ったあと、一緒にシュトゥットガルトに行く予定でしたが、私の到着が遅れてシュトゥットガルト行き電車までの時間があまりなくなってしまったため、予約してくれていた店をキャンセルして、駅前にあるイビスホテルの1階にある「Le DIX」という店に入り、ランチメニューを食べました。

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ランチメニューのメイン。見た目どおり、ホワイトソースがかかったミートボールでした。
 
 食事にあまり時間がかからなかったため、まだ切符を取ってあるTGVの出発時間まで余裕があり、大聖堂まで行けそうだったので、お店でスーツケースを預かってもらおうとしたのですが、断られ、駅の預り所を勧められました。我々もその存在は知っていたのですが、場所がTGVを降りたホームだったので、そこまで戻って預けていたら時間が無くなるということで、持っていくことにしました。預り所の前を通ったとき、預けるのも引き出すのも時間がかかりそうだったのでやめたという経緯もあったので……。
 
 大聖堂までは駅から歩いて15分ほどなので、徒歩でもまったく問題のない距離なのですが、途中から雨が降ってきたので、外観の写真も撮らず中に入って一周し、記念メダルの自販機を発見したら購入して、すぐに出てきました。外も中も、何年か前のクリスマスシーズンに来たときにじっくり見ているので――今回は大規模な工事中でしたし。ただ、前回訪れたときにはまだメダルを集めていなくて、買っていなかったような気がしたので、今回は時間があれば寄りたいという程度でした。まともな見学が目的なら、1時間あっても足りるようなところではありませんから――なんといっても、ファサードを含めた独特の外観が実に見事な世界遺産の建造物ですから、見るなら内部だけでなく外側も一周するべきなので。本当に圧巻です。フランス大聖堂軍におけるシャアみたいな存在です。

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ストラスブール大聖堂の内部。バラバラの服装だったので、合唱の練習をしていたようです。
 
 同行のN氏も数日前からストラスブールに滞在していて、すでに見学を終えているので中には入らず、ツーリストインフォメーションで待ちながら私のスーツケースを見ていてくれました。ということで、大聖堂訪問の主目的は果たしたので、さっさと駅に戻り、0.8ユーロの有料トイレに寄って、15時46分発シュトゥットガルト行きのTGVに乗車。17時4分に到着し、駅前のアルトホフ・ホテル・アム・シュロスガルテンにチェックインしました。――なのですが、予約したのはスーペリアルームで、マットレスが二つに分かれているクィーンサイズのベッドのはずだったのですが、割り当てられた部屋はダブルベッドだったので、すぐさまN氏が交渉に行き、ツインの部屋に変更してもらいました。
 
 変えてもらった部屋に落ち着いたあと、ウェルカムサービスのミネラルウォーターと備え付けのバリスタマシンで淹れたエスプレッソを飲んでひと息入れ、まともに夕食を摂る時間がなかったのでN氏持参のバナナをもらって食べ、6時半になり部屋を出ると、窓から見える、目と鼻の先にある州立劇場へと向かいました。7時開演のシュトゥットガルト・バレエ団の「椿姫」を観るためでしたが、この公演は早い段階でオンラインチケット販売がソールドアウトになり、劇団のホームページに日参して確認し、ようやく出国何日か前にキャンセルが出て、奇跡的に1枚だけチケットが買えたという次第で……そのため、N氏の分が手配できていなかったので、当日券の窓口に並んでみたのですが、思った以上に購入希望者の列が長くて買えず。開演5分前にあきらめ、申し訳なかったのですが、せっかくなので一人で観させていただきました。
 
 シュトゥットガルトの街に興味を引かれるものはなかったのですが、シュトゥットガルト・バレエ団は違います。パリ・オペラ座のエトワール、マチアス・エイマンを観てからハマっているということもありますが、そもそもバレエに興味を持ったのは有吉京子さんのマンガ「SWAN」がきっかけなので、古くは熊川哲也と共演したマイヤ・プリセツカヤのガラ公演や、レニングラードバレエ(現ミハイロフスキー劇場バレエ)に客演した草刈民代の公演、ロイヤルバレエ在団中の吉田都の来日公演なども観てきました。シュトゥットガルト・バレエ団は「SWAN」の主人公とも縁の深いバレエ団で、シュトゥットガルトに行く以上無視できないと思い、公演スケジュールを確認したら、同バレエ団が誇る振付家ジョン・クランコ作品の公演はなかったのですが、現ハンブルク・バレエ団の芸術監督ジョン・ノイマイヤーの振付で、シュトゥットガルト・バレエ団によって初演が行われた「椿姫」の公演が滞在中の日程であったので、これは観なければと思い、予約してあったハイデルベルクのホテルをキャンセルして、シュトゥットガルト泊に変更しました。
 
 「椿姫」のバレエを観たのは初めてでしたが、かなり強烈なインプレッションを受けました。とにかく劇的で、バレエだから当然のことながら音楽のみでセリフはまったくないのですが、振付がすごくて、微に入り細を穿ち、すべてを振付で表現しているという感じでした。20時間以上のフライトのあと3時間のTGV乗車で、機内で寝たとはいえ、明らかに疲労が溜まっていて眠気もここに極まれりという状態だったのですが、間延びするところが一切なくて、振りの一つ一つに意味があるように思えたので、おのずと目が引き付けられ、見逃すまいとして食い入るように観ていました。ジュデやピルエットはもちろん上手いのですが、それらはあくまでも表現の一部でしかなく、それよりも予想を裏切るような体のしなやかな動きが印象的でした。リフトの時の女性舞踊手の脚の形をはじめ、美しく見えるポーズであるのはもちろんのこと、その向きや角度といった細かいところまで徹底して追求されているように思えました。今まで全幕を通して観たのは「ロミオとジュリエット」「白鳥の湖」「くるみ割り人形」、それと「ドン・キホーテ」ぐらいですが、それらとは明らかに一線を画するバレエでした。まだこの舞台しか観ていませんが、何故ノイマイヤーがもてはやされるのかわかったような気がしました。そして、あえて彼のバレエを踊りたがるダンサーもいるだろうなと思いました。高度な技の完成度の高さだけでなく、小さな動きを含めた全身を表現の道具として使ったバレエだったので。身体能力の高さを見せつけたマチアスとは真逆のバレエの魅力――跳んで回るだけがバレエではないことを痛感させられた、パリオペとはまた異なる次元でクォリティの高いパフォーマンスでした。

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3階席より幕間の舞台

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州立劇場の丸天井。十二星座が描かれています。

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1階1列目上手扉前より、幕間の劇場内部。
 
 ちなみに、読めないけれども記念に買ったドイツ語プログラムから想像するに、今回の公演はノイマイヤーの「椿姫」40周年を記念しての上演のようで、そこに差し込まれていた別刷りの配役表によると、この日のヒロイン――マルグリット役はエリザ・バデネス(Elisa Badenes)で、相手役であるアルマン役はシロ・エルネスト・マンシラ(Ciro Ernesto Mansilla)とのこと。全三幕約3時間の公演で、終演は10時。その後カーテンコールが何回かありましたが、1階11列目の上手の一番端の席だったので、ひと足先に抜け出し、来たときにはまだ陽が出ていて明るかったけど、すっかり暗くなっていたシュロスガルテン内のジョン・クランコ通りを横切ってホテルに帰りました。これにて長い一日(?)の終了です。

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終演後の州立劇場外観。夕方のシュトゥットガルトは晴れていたのですが、夜は雨が降っていました。