羽生雅の雑多話

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ドイツ城めぐり旅行記 その4~ホーエンツォレルン城

 翌日は城巡りの最終日で、ハイデルベルク城以上に長年行きたかったホーエンツォレルン城へと向かいました。

 
 ドイツには「三大名城」と「三大美城」といわれる城があり、このどちらにも名を連ねるのがノイシュヴァンシュタイン城ホーエンツォレルン城です。ちなみに、名城の残り一つはハイデルベルク城で、美城の残り一つはエルツ城。なので、ノイシュヴァンシュタイン城に行ったあと、かの城に匹敵する、次に行くべき城はホーエンツォレルン城だと、ずっと思っていました。その決意からかなりの年月が経ってしまいましたが……。
 
 ということで、肝心のホーエンツォレルン城で時間が足りないというのは避けたかったので、短い旅程でしたが丸一日をあてて、この日は城に行って帰ってくるだけにしたため、朝はわりとのんびりで、10時前にホテルを出発。駅に行って10時15分発の列車に乗車し、11時19分に最寄り駅であるヘッヒンゲンに到着後、駅前のバス乗り場から出ている11時25分発のシャトルバスに乗って、ホーエンツォレルン城へと向かいました。
 
 到着した駐車場でバスを降りると、あたりはすごい霧で、ほとんど何も見えず。とりあえず道の向こうに登山口みたいなところがあったので、その方向にあるはずの城を目指して登りはじめました。
 
 20分ぐらいぬかるんだ山道を歩くと、城門の前に着き、隣にチケットオフィスがあったので、ガイドツアー付きのチケットを購入。ガイドツアーの時間に合わせて、見学ルートを決めようと思ったので、ツアーの開始時間を訊ねたのですが、ここではわからないから中で訊いてくれと言われたので、中に入ることにしました。

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ゲートタワー。後ろに城があるのですが、まったく見えません。
 
 どこから見るか悩むほど広大で、標高855メートルの山の上の城なので見晴らしも抜群のはずなのですが、この日は本当に何も見えず、視界がきく範囲である中庭などはすぐに見終わってしまったので、ガイドツアーが始まるまで土産物屋を物色。ノイシュヴァンシュタイン城で買った城の全体像がわかる鋳物の置物をホーエンツォレルン城ヴァージョンでも見つけたので、それとマグネット&ステッカー、そして「プロイセン王家の発祥の城」(日本語版)というカラー冊子を買いました。なんといってもこの城は、ドイツ皇帝ホーエンツォレルン家の故郷ですから。マリア・テレジアと領土争いを繰り広げ、サンスーシー宮殿を建てたことで有名なフリードリヒ2世、そして、私がある種の尊敬の念を抱いているビスマルクが仕えたドイツ皇帝ヴィルヘルム1世を輩出した家系です。

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中央広場。イースターの飾りがまだ残っていました。

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聖ミヒャエル礼拝堂のステンドグラス
 
 つまり、ドイツ三大名城とはいずれも王家ゆかりの城であり、ノイシュヴァンシュタイン城バイエルンルートヴィヒ2世が建てた城なので、いわばバイエルン王家であるヴィッテルスバッハ家の城、ハイデルベルク城はプファルツ選帝侯家である同じくヴィッテルスバッハ家の城、そしてホーエンツォレルン城プロイセン王家――のちにドイツ皇帝一家となったホーエンツォレルン家の城ということで、やはり他の城とは格が違います。家の名誉をかけて築かれ、世代を超えて発展させられ守られてきた、王や一族の権威を象徴し威厳を保つための建物です。彼らの絶対的にして絶大な権力があったからこそ実現し存在する、人権が確立された今の時代には創造し得ない夢の建築物です。だから惹かれるのかもしれません。
 
 そんなわけで、昔から城やら宮殿やらを好んで見てきましたが、このホーエンツォレルン城で、とりあえず若かりし頃から必ず行こうと思っていたところは制覇しました。ベルサイユ、シャンボール、シュノンソー、アルハンブラ、アランフェス、セゴビア、シントラ、シェーンブルン、リンダーホーフ、ヘレンキムゼー、ツヴィンガー、サンスーシ等々……紫禁城にも行きましたし。
 
 ちなみに、ホーエンツォレルン城は現在もホーエンツォレルン家が所有する私的財産で、歴史的建造物として一般に公開されてはいますが、管理も運営もホーエンツォレルン家がやっています。ガイドの説明によると、現当主は44歳で、次代は6歳とのこと。公共の物ではないからなのか、ガイドツアーで見学するコースもきれいに整えられていて、靴の上から履ける大きなスリッパの着用が必須で、城の内部も単なる展示という感じではなく、部屋の装飾に合わせて季節の花が飾られたりしていて、とても行き届いているように思われました。私的博物館なのに、そこで見られるものは世界中の多くの人々が知る歴史上の人物の遺品で、きわめて公共性が高いという、なんか不思議なギャップがありました。記念品展示室には最後のドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の王冠とかフリードリッヒ大王のマイセン製旅行用食器とか普通に展示されていましたし。本来なら、ポツダムのサンスーシ宮殿や首都ベルリンの博物館島あたりにあってもおかしくない物ですが……どちらも世界遺産ですし。
 
 45分ほどでガイドツアーが終わったあと、ガイドに勧められた地下室に降りると戻ってくるのが大変なので、その前にミュージアムショップの前にあるレストランでランチを食べることにしました。ホーエンツォレルン城は山頂の一軒家で、他に食事ができるような店はないため、2時過ぎといえども混んでいて満席でしたが、ちょうど会計をする客がいたので、少し待てば相席ではない席に案内できると言われたので待つことに。10分弱の待ち時間で入れました。

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ガイドツアーが終わって出てきたら、少し霧が晴れたような気がしました。

 席に着くと、とりあえずゼクトを頼み、メニューを見たら、ここにもホワイトアスパラガスを使った料理があったので、ゼクトが来たときにアスパラガスサラダを注文。ゼクトはピッコロサイズの瓶で出てきて、なんとホーエンツォレルン城のラベルだったので、「ここのオリジナルか」と、ゼクトを持ってきた店主らしき貫禄のあるおじサンに訊くと、「そうだ。ここでしか飲めない」との返事。確かにショップにも売っていなかったので、持ち帰りで買うことはできるかと訊いたら、「できる」と言うので、自分が飲む分とは別に2本購入しました。イチゴをあえたサラダも、マスタードソースで食べることが多いボイルドアスパラガスとはまた違う味わいで、塩茹でが美味しかったので、上機嫌で店を出ました。

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オリジナルラベルのゼクト

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ホワイト&グリーンアスパラガスとイチゴのサラダ
 
 地下室へ行くと、思ったとおり深く下ることになり、備品倉庫や装甲室を経て、城門とは正反対にあたる場所に出ました。堡塁に沿って城門まで戻ることにし、途中に望遠鏡や見晴らし台らしきものがあり、天気が良ければ素晴らしい眺望が楽しめるのだろうと思いましたが、あいにくこの日は何も見えず。よって、立ち止まることもなく、ただひたすら歩くだけでした。

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堡塁にある歴代当主像とリラの花
 
 霧の中で見えるものは見たので、城を後にし、城門隣のチケットオフィスの前にバス停留所があったので行ってみると、駐車場との往復バスの乗り場で片道3ユーロとのこと。下りなので歩いても15分ほどだとは思いましたが、呼び出し用のボタンがあり、それほど待たずにすみそうだったので、バスを使うことにしました。
 
 城と駐車場を繋ぐバスは、城に近い駐車場の西の端に着き、駅と駐車場を往復するシャトルバスは、より駅に近い駐車場の東の端に着き、なおかつ深い霧のせいでそれぞれのバス停からはもう一つのバス停が認識できなかったので、来たときにはわからなかったのですが、駐車場の西の端には大きな土産物屋があり、城のショップには売っていなかったホーエンツォレルン城グッズもあったので、新たにTシャツと缶ケース入りミントキャンディを追加購入。
 
 その後、駅行きのバス停がある駐車場の東の端へ行き、16時5分発のバスが来るのを待っていたら、次第に晴れてきたので、「なんで今頃……」と切ない気持ちになりました。霧の城というのも風情があり、雪景色と同じで、天候次第であり、ねらって味わえるものでもないので、それはそれでよかったのですが、青空の下、緑の木の間から見えたホーエンツォレルン城は、それはそれは美しかったので。

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道を渡って駐車場の向かい側にある林の木々の間から見えたホーエンツォレルン城
 
 シュヴァーベン高原という比較的平坦な土地の山の山頂に建つホーエンツォレルン城は、驚くことに、ヘッヒンゲンの駅に着くまでずっとバスの車窓から見えていました。20分ほどで駅に到着し、時刻表を調べると、次のシュトゥットガルト行きは16時39分発で、10分ほど待ち時間があったので、「もしや駅からでも見えるのではないか」と思い、ホーム上で駅舎が視界に引っかからない場所まで行くと、思ったとおり、林の木々の間からでしたが見えました。すごい城です。現代のように鉄筋コンクリートの建物が一切ない時代には、どれほどの威容を誇ったことか、周囲にどれほどの威圧感を与えたことか、想像に難くありません。

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ヘッヒンゲン駅のホームの端から見えたホーエンツォレルン城
 
 時刻どおりに入線してきた電車に乗り、定刻どおりにシュトゥットガルト駅に着いて城巡りは無事に終了。特に城好きというわけでもないのに4日間オタクの旅に文句を言わずに付き合ってくれたN氏は翌日から北欧に行くため、その日が一緒に食べる最後の晩餐だったので、夕食はいいレストランで食べようということになり、スマホで検索し、ミシュラン星付きの「オリーヴォ」をピックアップ。席が空いているか確認して予約を入れてもらうためにレセプションに行くと、スタッフのおにーサンに、「当ホテルのレストランも星付きで、美味しいよ」と薦められたのですが、アム・シュロスガルテンのレストランがミシュラン星付きであることはもちろん知っていて、当初ここで食べようと思ったので、このホテルに連泊することにしたのですが、私たちがチェックアウトする日まで貸切だと言われたので、ワインセラー&カフェに行った次第で……もしやもう貸切ではなく入れるのかと思い、訊くと、「本当だ、貸切だ、ソーリーソーリー」とのこと。……ドイツでは、自分の管轄以外のことは基本的に知らない、同じ施設内でも情報は共有されないことが改めてよくわかりました。列車キャンセルを知らなかったシュトゥットガルト駅の車掌や、ガイドツアーの時間を知らなかったホーエンツォレルン城のチケットオフィスのおねーサン然り。
 
 7時から予約できたので、そのままホテルを出て、駅前通りをシュロスガルテンとは反対方向に歩き、ちょうど駅舎が終わるところの向かい側にあるホテル――シュタインベルガー・グラフ・ツェッペリンの2階にある店に、5分前に到着。
 
 一番奥の窓際の席に通され、渡されたカルトを見ると、「KOSHIHIKARI」や「HAMACHI」といったアルファベットが目に入ってきたので驚きました。ロードス島やヴィエンヌでもそうでしたが、ここ数年ヨーロッパで評価の高いレストランに入ると、必ずと言っていいほど和食の影響が見られます。「DASHI-BUTTER」とか、和食テイストを取り入れたドイツで食べるフレンチがいったいどんなものか大いに気になったので、5皿のコースにチャレンジし、飲み物はドイツワインにこだわりはなかったので、料理に合わせてペアリングしてくれるマリアージュワインを頼みました。
 
 ミシュラン星付きのレストランで食べる料理というのは、正直に言って、味に驚かされることはほとんどありません。味については必ずや一定のレベルは越えていて、美味しくてあたりまえ、ただし好みに合う合わないがあるので、ミシュラン星付きより美味しいと思える店もたくさんあります。なので、その魅力は味ではなく、ひと言でいえば「意外性」「驚き」「発見」であり、そしてもう少し長い言葉でいえば「見た目の楽しさ」だと思います。目の前に出されたときの驚き、この食材をこんなふうに見せるのか、器も含めて、この色味とこの色味をこんなふうに合わせるのか、そして、それを口に入れたときの予想しなかった想定外の食感……見た目からは想像できなかったり、硬さの中に柔らかさがあったり……また、この組み合わせがこれほど絶妙で相性がよいと教えられる新たな発見もおもしろく、この思いが何度味わえるかが料理の良し悪しであり、これにスタッフのサービスレベルを加えて店の良し悪しになります。自分を驚かせ楽しませてくれた斬新なアイデアと、そのアイデアを形にして味わわせてくれた腕前に敬意を表して、普通の食事よりも高いお金を払うのです。少なくとも私はそう思っています。だから、食べれば消えてなくなる物にかける金額としては高いですが、知恵や技術への対価としては正当で、けっして高いとは思いません。美術・芸術鑑賞、スポーツ観戦などというエンターテインメントと同じです。「オリーヴォ」もいろいろ驚かせてくれ、期待を裏切らず楽しませてくれました。

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しょっぱなからこんなのが出てきました。
 
 この日のコースの全容は次のとおり。

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 終わりよければすべてよし――ということで、シュトゥットガルト最後の夜をたいそう満足な気分で終えて、日程終了です。

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