羽生雅の雑多話

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サモス島&クシャダス旅行記 その4~世界遺産ヘラ神殿とサモス考古学博物館

 21日は、夕方6時過ぎのフライトでI氏がアテネに旅立つため、4時半にはスーツケースをはじめとするすべての荷物を引き取りにホテルに戻ってきて空港に向かうことになっていたので、当初はヘラ神殿だけを訪れる予定でしたが、前日に見るはずだったサモス考古学博物館が休みだったため、どうにか両方に行けないかバスの時刻表を睨みながら前夜に検討。タクシーでまわらなくてもなんとかなりそうだったので、6時半起きで行動を開始しました。

 

 朝食は7時半からなので、オープンと同時にレストランに行って急いで食べ、8時20分発のピタゴリオ行きのバスに乗車。サモス考古博物館があるサモスタウン(ヴァティ)は反対方面なのですが、7時50分発か10時10分発しかなく、ちょうどいい時間がなかったので、遠回りになりますが、ピタゴリオを経由していくことにしました。ピタゴリオまで行けば、そこからはホテルの前を通る路線とは別のサモス行きがあったので。――なのですが、結局のところは乗ったバスがピタゴリオからはその路線のバスに変わったので、ピタゴリオで降りずに乗車したままサモスへと向かいました。ホテルからサモスまでの運賃は一括で2.6€ぐらい。

 

 9時半前にサモスに到着し、サモス考古学博物館へ。ここの代表的な所蔵品は、ヘラ神殿から出土したクロース(青年)像と呼ばれる、高さ4.75メートルに及ぶ巨大全身像。1973年に左腿が発見され、80年に体が発見され、84年に頭部が発見され、左足の膝下が欠損してはいますが、それ以外はほぼ完全な形で発掘された、奇跡の像です。なんといっても2500年以上前――紀元前580年ぐらいの物ですから……。彫りはアルカイック系で、エフェソス考古学博物館のマルクス・アウレリウス像のように緻密という印象はないのですが、それはあくまでも表現方法の違いであり、膝のあたりの筋肉や握りしめた右手なんかは超リアルで、ちょっと鳥肌物でした。

f:id:hanyu_ya:20190907223605j:plainクロース像

f:id:hanyu_ya:20190907223650j:plainクロース像の解説と、体が発掘されたときの写真

f:id:hanyu_ya:20190907223732j:plainクロース像の解説 その2

f:id:hanyu_ya:20190907223802j:plainクロース像の解説 その3

 

 チケット売り場があり、クロース像が展示されている建物は比較的新しく、巨大像を展示するために後から作られたと思われ、その建物を出ると、器や道具など細々した物が展示されている古い建物がありました。

f:id:hanyu_ya:20190907223905j:plainクロース像など大きめの出土品が展示されている新館

f:id:hanyu_ya:20190907223939j:plain奉納品など小さめの出土品が展示されている旧館

f:id:hanyu_ya:20190907224012j:plain獅子の象牙彫刻(紀元前6~8世紀)。細かいです。

f:id:hanyu_ya:20190907224109j:plainサモス考古学博物館の展示品で一番惚れ込んだ鳥の石像。間抜けな感じの造形と美しい着色による顔の表現が実に見事です。ラメ感のある緑色は何を使っているのかわかりませんが、大いに気になります。

 

 サモス考古学博物館を出ると、次にヘラ神殿に行くため、バスターミナルへと向かいました。途中に酒屋があり、サモス産のワインやサモス産のウーゾを売っていて、専門店なので種類も豊富で、現地価格の上に土産物屋価格でもないため激安だったので、何本か買うことに。瓶を持って遺跡巡りをするのは悩みましたが、酒好きにはこれ以上ない土産だと思ったので、結局50ミリリットル瓶を9本買いました。もうこの旅でサモスの町に来ることはないので。

 

 サモスからホテル前やピタゴリオを経由してヘラ神殿の最寄りのバス停まで行くイレオン行きのバスは1日4便で、次のサモス発は14時。けれども、イレオンからピタゴリオやホテル前を経由してサモスに行くバスは、そのバスが戻るわけで、よって15時発。しかもそれが最終便なので、14時サモス発でヘラ神殿に行った場合、バスでホテルに戻るためにはとんぼ返りしなければならず、見学時間が確保できないので、11時サモス発ピタゴリオ経由サモス空港行きのバスに乗って終点の空港まで行き、そこからはタクシーを使うことにしました。サモス空港はピタゴリオとヘラ神殿のあいだにあり、ピタゴリオから神殿まで車で15分ほどとのことだったので。空港ならばタクシー乗り場があり、発着便がある時間帯であればタクシーがいないということはほとんどありませんし。

 

 空港から10分ほどタクシーに乗り、目論見どおり12時前にはヘラ神殿の入口前に到着。アテネパルテノン神殿の4倍はあったといわれるサモスのヘラ神殿ですが、どんなに広くても3時間もあればゆっくり見ても15時発のバスには乗れるだろうということで、チケット売り場でチケットを買って入場すると、そこは陽射しを遮るものが一切ない炎天下の広大な廃墟で、まず遺跡見学の苛酷さが想像されました。

 

 気を取り直して、目の前に伸びる聖道を歩きはじめ、聖道と、ゲネレオス作の家族の彫像のレプリカを発見。本物は午前中に行ったサモス考古学博物館に展示されていましたが、レプリカとはいえ、遺跡の中の、本来在るべきところにある姿を見るほうがありがたみがあるなと思いました。置かれた位置関係や背景、遺跡の中での規模感などがわかって、その像が実際どんな役割を果たしていたのかイメージが湧きやすいので。

f:id:hanyu_ya:20190907224808j:plain聖道

f:id:hanyu_ya:20190907224604j:plainゲネレオス作、とある家族の像(レプリカ)

f:id:hanyu_ya:20190907224839j:plainサモス考古学博物館に展示されている実物

f:id:hanyu_ya:20190907224726j:plainレプリカの近くに立っている説明書き

f:id:hanyu_ya:20190907224919j:plainゲネレオスの像(右)とヘラ神殿の柱(左)

 

 サモス島はヘラの誕生地といわれ、それゆえヘラ信仰が盛んで、彼女の神殿が建てられました。紀元前750年頃に建てられた最初の建物は幅約6.5メートル、奥行き約33メートルだったそうですが、天災などで壊れるたびに立て直され、ギリシャ最大の神殿となり、ヘロドトスによると幅55メートル、奥行き109メートルだったとのこと。まあ、大神ゼウスの姉であり正妻でもあるという、オリンポスで一番地位の高い女神の神殿なので、ゼウスの娘であるアテナの神殿などに劣るわけにはいかなかったのでしょう。ゼウスの娘は何人かいますが、正妻は一人であり、唯一無二の存在ですから。よって、パルテノン神殿よりも大きかったというのは頷ける話で、現地で広さを体感し、確かにそのとおりだったのだろうと思いました。ずいぶん前ですがパルテノン神殿には行ったことがあり、大きさは分かっているので。余談ですが、私はアテナとアポロンとヘルメスが好きなので、パルテノンとデルフォイには最初のギリシャ旅行で行きました。

f:id:hanyu_ya:20190907223401j:plain1本だけ現存している大理石柱。復元されたが、実際の高さの半分ほどとのこと。

f:id:hanyu_ya:20190907223438j:plain遺跡図。左の、多数の黒丸で表された建物がヘラ神殿で、黒丸は柱を表し、一番下の右から4番目の白丸が復元された柱の位置。柱は155本あったそうです。

f:id:hanyu_ya:20190907223522j:plain神殿の端(遺跡図の一番左端)から眺める復元柱。柱の遠さから建物の大きさが想像できます。

f:id:hanyu_ya:20190907225021j:plain遺跡の敷地。広いです。

 

 端から端まで遺跡を歩いていたら、入ったところとは違う出入り口を見つけたので、地図で確認すると、最寄りのバス停はそちらからのほうが近いと思われたので、戻らずに遺跡を出て、バス通りへと向かいました。

 

 15分ほど歩くと車道に出たのですが、そこでフレッシュオレンジジュースという、灼熱の太陽の下、1時間半も歩きまわった身には垂涎の看板を発見したので、これは飲むでしょうとI氏と合意して周囲を見渡したのですが、それらしき店はどこにもなく、代わりに近くの木陰の下のテーブルで新聞を読んでいるおじサンがいたので、「カリメーラ」と声をかけて訊ねようとすると、「ジュース?」と訊かれたので、「そう」と答えると、隣の小屋に入っていきました。後を追って中に入ってみると、そこがお店になっていて、オリーブオイルやオリーブ石鹸の他、樽から量り売りのワインなどが売らていて、さらに冷蔵庫があって、そこから絞ったオレンジジュースの入ったプラスチック製の水差しを出して、コップに注いで渡してくれました。すべてがどう見ても自家製で、ワインはドレッシングボトルのような瓶入りの物もあったので、一緒に購入。木陰でオレンジジュースを飲んでひと息つくと、バスの時間までまだ1時間以上あったので、近くにあったヘラ神殿最寄りのバス停は無視して、出発点であるイレオンの町まで歩くことにしました。

f:id:hanyu_ya:20190907225055j:plainバス停近くの小屋の店

 

 町に入り、バス停を探して、ピタゴリオと同じく町の中心と思われる海沿いに向かって歩いていると、しばらくして飲食店が多く集まる広場に出ました。カフェのテラスにいた店の人にバス停について訊ねたら、ここだとのこと。その店の前にバス停はありませんでしたが、とにかくこのへんなのだろうと思い、時計を見ると2時前だったので、ならばこの近辺で食事でもするかということになり、海辺にテラスを出している海に面したレストランに入りました。

f:id:hanyu_ya:20190907225135j:plainイレオンの海辺にある昼食を食べた店

 

 ヨーロッパのレストランでまともな食事をするときは2時間は必要と考えているのですが、この時は正味1時間しかなく、かといってケバブのようなファストフードを食べる気にもなれず、カラマリとパスタを頼んだのですが、やはり出てくるのに時間がかかり、食べ終わったのは3時10分前。席で待っていられなかったので店の中まで行って急いで会計をしてもらい、バス停まで走りました。イレオン始発なので、出発が遅れることはなく、オンタイムで発車。

 

 乗ったバスは空港、ピタゴリオ経由のサモス行きで、乗り換えなしでホテルの前まで行ってくれるので、目論見どおり3時半には部屋に帰着。I氏はアエロフロート便で日本からギリシャに来ていて、モスクワ経由のフライトの都合上アテネで1泊することになっていたのですが、もはや日本に帰国するだけなので、荷物整理をし、要らないものは、あと2泊する私に残し、荷造り完了。4時半になると部屋を出て、レセプションでタクシーを呼んでもらい、空港へと去っていきました。

 

 イレオンで昼食を食べたのが3時前で遅い時間だった上に、I氏が残していった要らない物の中に、1リットル入りで買って飲みきれなかったオレンジジュースやら日本から持ってきた非常食やらがあり、夕飯を食べに街に出る必要はなかったので、この日はこれで終了です。