羽生雅の雑多話

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宝塚メモ~「私立探偵ケイレブ・ハント」感想(主に正塚晴彦と月城かなとについて)

 本日、日比谷で雪組公演を観てきました。つい数日前、来年7月の同時退団が発表されたちぎみゆコンビが主演。最近の宝塚は男性の観客が増えたと思っているのですが、今日はとりわけ多く感じました。原作が有名な話題作というわけでもないので「何故に?」と思いましたが、退団が発表されたからでしょうか。それとも集客率100%の人気トップコンビならではの多彩なファン層ということなのでしょうか。

 お芝居は久々のオリジナル作品で、正塚晴彦さん作・演出の「私立探偵ケイレブ・ハント」。期待どおり、おもしろかったです。これぞ正塚ワールドという安定のクオリティ。一般受けはしないかもなぁとは思いましたが、いつものことなので気にしません。宝塚に華やかさや単純に楽しめるおもしろさを求めている人は正塚さんの作品とは反りが合わないでしょう。私も他人に宝塚をすすめるときは選ばないですし。タカラヅカっぽくないから。

 でも、個人的には、原作のない宝塚のオリジナル作品で正塚さんほどおもしろい作品を書く人はいないと思っています。宝塚というメチャクチャ縛りがある劇団の座付きなのに毎度よく期待を裏切らずにいてくれると感心しています。最近では上田久美子さんも好きです。これぞウエクミという独特な世界があって……。大劇場デビュー作の「星逢一夜」も、その前の「翼ある人びと」もよかったですし。私はこの作品を観て、まぁがトップになってもいいと思いましたから。「銀河英雄伝説」のキルヒアイスの時にはまったく思えなくて、「もしかして、朝夏まなとが二番手なの?」という感じでしたから。

 話を元に戻すと、正塚さんの作品は、一言でいえば「スタイリッシュ」。「豪華絢爛」とか「夢の世界」とか通常宝塚に対して使われる形容詞がまるであてはまりません。だから好き嫌いが分かれるのも仕方がないと思います。私は昔は蜷川作品なども観たので、作品としておもしろければ宝塚らしかろうが、らしくまいがどっちでもよく、こだわりません。男役と娘役がいてトップ至上主義である時点ですでに宝塚ですから。

 で、ステージもストーリーも明るくない正塚作品ですが、得意の盆を駆使した場面転換は今回も健在で、スピード感、疾走感があるとまでは言いませんが、話が流れるように進んでいきます。宝塚作品にありがちな中だるみが全然なかったと思います。それと、月組の「ルパン」もそうでしたが、正塚作品ってトップコンビと二番手以外にも役者が二枚三枚揃わないとできない演目だと改めて思いました。四枚目以下がいつも非常に重要。月組の時はみりお(明日海りおさん)が異動したばかりで二番手が不在だったため、その役どころとしてみっちゃん(北翔海莉さん)が専科から参加しましたが、みやるり(美弥るりかさん)、カチャ(凪七瑠海さん)、コマ(沙央くらまさん)の役も重要な役でした。その時と同じ役で、みやるりとカチャのダブル主演でスピンオフ作品ができたぐらいですし。今回の三番手さき(彩風咲奈さん)、四番手(別格?)ナギショー(彩凪翔さん)、月組への異動が決まって番手不明のレイコ(月城かなとさん)も個性がはっきりした重要な役でした。そのうえ、衣装や舞台装置、音楽などが地味なのでごまかしがきかないから、役者の力量がはっきり出ます。さきはずいぶん歌がうまくなった上にヤンキーぽかった個性が薄れてきて路線の男役に近づいてきたし、レイコのカッコよさと存在感は……末は間違いなく月組のトップスターですね。「るろうに剣心」の蒼紫、「ローマの休日」のマリオ、今回のマクシミリアンと、すごい勢いで成長しています、この人。マクシミリアンは二番手のだいもん(望海風斗さん)がやってもおかしくない役で、主役のチギ早霧せいなさん)と互角に渡り合っていましたよ。月組の「1789」で、あり(暁千星さん)がフェルゼンを演じたときより違和感のない抜擢でした。もしかして、まさお(龍真咲さん)の次のトップに、みやるりとカチャをすっ飛ばしてたまきち(珠城りょうさん)をもってきたのは、レイコをその後にと考えているからかもしれませんね。歌に難ありのカレー(柚香光さん)より三拍子そろっていて不安要素がないですし。

 ショー「Greatest HITS!」は、はっきりいってイマサンぐらいの凡作でした。チギの残り少ないショーなのに残念。今月の14日はなーちゃんの命日だったので、勤労感謝の日の休日に久しぶりに「ジタン・デ・ジタン」と「ザ・フラッシュ!」の実況CD(古いっ)を聴いて、YouTube大浦みずきの動画を漁り、アップされていた「ザ・ゲーム」を観てしまったのがいけなかったかもしれません。印象を悪化させた一因だと思います。「ジタン・デ・ジタン」、「ザ・フラッシュ!」、「ジャンクション24」は宝塚のショーの中でも1、2、3位に挙げられる傑作です。比べてはいけません。古い作品を観ながら、ちぎみゆの退団発表直後だったので、昔は退団が予想されるような安直なタイトルは付けなかったのになぁと思っていました。もう少しひねってほしいです。その点、正塚さんとか上田さんは、作品タイトルにもこだわりが感じられます。ジョンとかボギーじゃなくてケイレブだし、「星逢一夜」とかちょっと思いつかない言葉ですよね。二人とも、このまま独自の路線を保って突っ走ってほしいです。