羽生雅の雑多話

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奈良寺社遠征~壷阪寺、飛鳥坐神社、岡寺

 今月は、西国三十三所草創1300年記念で第6番札所の壷阪寺と第7番札所の岡寺で特別開扉が行われているので、来月初めにある橿原神宮の特別昇殿参拝と合わせて月末に奈良に行く予定だったのですが、月の半ばに仕事で京都に行く用事ができたので、今月末の奈良旅行はキャンセルし、木曜に井波、金曜に京都で仕事を終えて、土曜に奈良に寄ってきました。

 
 急きょ京都行きが決まった先月、11月の週末の京都なんか今からじゃホテルが取れないだろうと思い、夕方仕事が終わったら奈良入りするつもりで橿原のホテルを押さえてから検索をしていたら、八条大宮のホテルが今年オープンしたばかりだからなのか朝食込みで14,000円という奇跡的な値段で空いていたので予約を変更しました。ということで京都泊になったため、仕事が終わったあと業者さんと四条大宮で食事をすることにし、9時頃まで玉乃光を飲んでいたので、翌朝は早起きできず、9時半にホテルをチェックアウト。この時間から壺阪山駅に行って乗れる壷阪寺行きのバスは11時45分発なので、近鉄線の京都発10時13分の急行でも十分に間に合ったのですが、乗車時間が1時間ほどあって、その間のんびりとコーヒーでも飲みたかったので、特急券を買って改札内のコインロッカーに荷物を預けたあと、「チャオプレッソ」というカフェでテイクアウトのコーヒーを調達し、10時10分発の特急に乗りました。京都~橿原神宮前の特急指定席券は900円ですが、各座席に電源があり充電しながらスマホもいじれたので、損した気にはなりません。
 
 橿原神宮前駅で吉野行き特急に乗り換え、11時22分に壺阪山駅に到着。何もない駅前で20分ほど待って当初の予定どおり45分発のバスに乗り、12時前に壷阪寺に着きました。バス停からすぐ近くにある受付で入山料600円を払い、一番最初にある講堂をざっと見たあとは、他の建造物は後回しにして本堂である八角堂へと向かい、御本尊に参拝。
 
 当寺の御本尊は十一面千手観音。なかなかの迫力がある強烈な御姿でした。かなり間近で見られるので、目力やら威圧感やらが直接的に伝わってきて、ずっと対面していたい気になります。引き込まれるというよりは、その力に打たれるような感じがして、神妙な気分になるというか……。御本尊が祀られている八角堂内は一周できるようになっていて、出土品などいろいろなものが展示されているのですが、御本尊のインパクトが強すぎて、あまり目に入りませんでした。

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壷阪寺の御本尊、十一面千手観音。現在の像は室町時代に造られたものとのこと。そのせいもあるのか、珍しく撮影が可能だったので、引き上げる前に写真を撮らせていただきました。
 
 八角堂の縁に出ると二上山が眺められました。何度も見ている山ですが、この距離で見ると非常に特徴的で、目立って美しく、何故古来特別な山とされてきたのか、その理由がわかりました。

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八角堂から見える二上山(中央)
 
 八角堂を出て、礼堂前にある御朱印授与所に寄ると、1300年記念特別印入りの御朱印と、江戸時代の復刻御朱印というのがあったので両方をいただき、その後、隣の御守り授与所で御守りを物色していたら、コレクションをしている覗き瓢箪があったので購入。それと、スイーツ巡礼の壷阪寺のスイーツである、めぐすりの木の飴をお土産に買いました。
 
 それから1300年記念で特別開扉されている三重塔の大仏如来を拝み、塔前に期間限定で公開されている大眼鏡をくぐり、同じく特別開扉されている多宝塔の大仏如来を拝み、灌頂堂で豊臣秀長像などを見たあと、バスの時間までまだ余裕があったので、境内にある「つぼさか茶屋」という店で昼食を摂ることにしました。壷坂寺にはインド招来の大石像がたくさんあるのですが、新しい仏像には興味がなかったので。

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大眼鏡が奉納されていた三重塔
 
 ところで、私は知らなかったのですが、人形浄瑠璃や歌舞伎の演目に「壼坂霊験記」というのがあるらしく、これは壷阪寺の霊験譚で、簡単にまとめれば、観音様に目が見えるように夫婦でお参りし続けた盲目の座頭沢市とその妻であるお里に、観音様が霊験をあらたかにし、沢市の目が見えるようになったという話みたいです。メニューにその沢市の名を冠した「沢市定食」というがあったので内容を訊いたら、山菜うどんかそばと、高菜ごはんか梅しらすごはんのセットとのこと。沢市とどう関係があるのかまったくわからないごく普通の定食でしたが、無難でハズレはなさそうだったので、それを頼みました。

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沢市定食。「め」と書かれている湯呑みのお茶は、めぐすりの木のお茶でした。
 
 食事後、バスの時間の15分前になったので店を出てバス停へ。駐車場には来たときにはいなかった大型バスが2台ほど停まっていて、団体客が来たようだったので、かち合わなくてよかったと思いました。1時半発のバスに乗って壺阪山駅に戻り、次の目的地は岡寺だったので、近鉄線に乗って橿原神宮前駅で下車。それから14時11分発の明日香周遊バス(通称赤かめ)に乗るつもりだったのですが、時間を調べたときに私がネットで見た明日香村のホームページの時刻表は古かったらしく、ダイヤが改正されていて、停留所に行って時刻表を確認したら、6分に行ったばかり。しかも次のバスは38分発だったので、思わず「オーマイガー!」と叫びそうになりました。赤かめバスの乗り場がある橿原神宮前駅東口の駅前にも時間をつぶせそうな店はなかったので。
 
 他にやることもないので、仕方なくバス停のベンチに座って待つことにし、何か有益な情報はないかと、駅の窓口で一日乗車券を買ったときにもらった地図と時刻表を、建部大社のたけるくんストラップの時のようなお得情報を見逃さないようにと隅々まで見ていたら、社務所が開いている時間内に飛鳥坐神社にも行けそうなことに気づきました。やさぐれた気分が一気に吹き飛び、俄然やる気が出てきて、京都発19時35分の帰りの新幹線に間に合うように綿密にプランニングを開始。
 
 式内社の中でも特に格の高い名神大社である飛鳥坐神社はずっと行きたかったのですが、何分駅から遠くて、何かのついでに行けるところではないため、飛鳥周遊をするときに他の神社と一緒にまとめて行くつもりでいました。この秋の特別公開を調べていたら、12月2日まで寺巡りをしている西国三十三所の壷阪寺と岡寺で特別開扉、12月2日にやはり神社巡りをしている旧官幣大社橿原神宮で特別参拝があったので、飛鳥を巡るならこの機会しかないだろうと思い、月末に二泊三日で奈良旅行の予定を組んでいたのですが、奈良行きが前倒しになり、今回は一日しか時間が取れなかったので、橿原神宮飛鳥坐神社はあきらめていました。
 
 そうこうしているとバスが来たので、とりあえず乗り、引き続きスマホで乗り換え時間やらお寺の開門時間やらを検索。バスが動き出したあとは気分が悪くなるのでスマホいじりをやめ、20分ほどで飛鳥大仏バス停に到着。下車後、バス停前にある飛鳥寺は無視して、飛鳥坐神社へと向かいました。

 御朱印授与所でいただいた社務所発行の栞によると、当社の祭神は八重事代主神飛鳥神奈備三日女神大物主神高皇産霊神の四神。そして事代主神については「大国主神の第一子で、国譲りの際信頼を受け、父神のご相談にのられました」とあります。

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栞と同じ内容の境内の説明書き
 
 ――ということなのですが、今回現地を訪れて摂末社を確認したら、元々の祭神の正体が見えてきたので、機会があったら考察を書くことにします(長くなって、投稿から十日経っても記事が終わらなかったので)。端的に言えば、天照大御神ことアマテルの性別が女性と改竄されたことによって正史から消された、アマテルの姉ヒルコや皇后セオリツヒメホノコのような存在です。
 
 境内を隈なく見たあとは、飛鳥坐神社がある鳥形山の全景を撮るため、歩行者専用の畑の中の道に入り、撮影後、バスは30分に1本なので、乗ってきたバスの1時間後の便に乗るべく、バス停へと向かいました。

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畑から撮影した飛鳥坐神社がある鳥形山。なんとなく古墳ぽいです。
 
 飛鳥大仏バス停に着くと、バスが来る時間までまだ10分ほどあったので、飛鳥寺は無理でも門前の土産物屋ぐらいは覗けるかと思い、お店に行くことに。何かが欲しいわけではなかったのですが、店内に入ってすぐに衝撃的な物を発見し、文字どおり固まりました。なんと「飛鳥の蘇」があったのです。
 
 今から8年前の2010年、平城遷都1300年祭天平茶会で初めて蘇を食べたのですが、あまりに美味で感動し、ずっと忘れられずにいました。「蘇」とは古代のチーズで、1300年祭を機に復元されると知ったので、わざわざ天平茶会が開催される日程をねらって1300年祭にも行きましたし。私は無類のチーズ好きで、中でも一番好きなのがウォッシュチーズで、ワインを飲むときにはとりあえず好きなチーズがあればいいという人間ですから。飛鳥寺の前のお店――「大佛屋」でも味見をさせてくれましたが、記憶していた味だったので、即決で買いました。残り二つしかなかったので、二つとも欲しかったのですが、要冷蔵で日持ちせず、しかも蘇は生乳から水分を蒸発させたものなので、普通のチーズより濃厚で、そういっぺんには食べられないため、一つで我慢することにしました。その日のうちに帰るとはいえ、神奈川県の自宅に辿り着くのは7時間後ぐらいでしたし。

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買ってきて開封した「飛鳥の蘇」。サイズは約5×6×3㎝。これで1個1,080円になります。

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「飛鳥の蘇」に入っていた栞
 
 気休めとは思いましたが、保冷剤を入れて包んでもらい、支払いを済ませて店を出ようとしたら、「蘇やねん橿原」という、ややふざけた、しかし「蘇」という漢字が何とも気になる名前の土産用の菓子が目についたので、レジの店員さんに蘇と何か関係があるのかと訊いたら、蘇の風味のフィナンシェで日持ちもすると言うので、それも買うことにしました。バスの時間が迫っていて、悩んでいるヒマはなかったので。再び会計をしているときに、菓子の名は橿原神宮宮司さんが付けたのだと教えてくれました。正直なところ、センスがいいのか悪いのかわからないビミョーな名前だと思いましたが。
 
 バス停に戻ると、ほどなくバスが来たので乗車し、岡寺前バス停で下車。橿原神宮前駅行きの帰りのバスは16時59分発で、1時間弱しかなかったので、脇目もふらずに岡寺を目指しました。
 
 坂道に息切れしつつ受付で入山料400円を払っていたら、御本尊公開は4時までとか書いてあるので、一瞬ハンマーで殴られたようなショックを受けましたが、即座に気を取り直し、まだ拝観できるかと確認したら、大丈夫だと言うので、急ぎ本堂へ。なんとか間に合って御本尊と対面することができました。
 
 当寺の御本尊は如意輪観音。日本最大の塑像であり、如意輪観音としては最古の像でもあるそうです。壷阪寺の御本尊とはまた違ったド迫力の、たいへん威厳の感じられる仏像でした。本音を言えば、なよやかなイメージのある如意輪観音ぽくない感じがしましたが……けれども一見の価値ある像で、何故今まで見に来なかったのかと思ったほどでした。仏像は同じような物を見ていると飽きますが、今回拝観した壷阪寺の十一面千手観音も岡寺の如意輪観音も唯一無二と言ってよい個性的な御姿だったので、大満足でした。今までさんざん京都や奈良に行きながら訪れなかったのだから、このたびの西国三十三所草創1300年記念事業がなかったら一生来ないで終わったかもしれないので、とてもありがたいイベントだと思い、改めてよい機会を与えてくれたなと感謝しました。
 
 御本尊は正面から拝めるのはもちろんですが、10月20日~12月2日まで1300年記念公開で、内々陣の脇の扉が特別開扉されていたので、すぐ横からも眺めることができました。これほど大きな塑像をこれほど近い距離で見たことはなかったので、かなり感動的でしたね。今までにおぼえのない感覚を味わいました。
 
 たいそう名残惜しくはありましたが、あまりゆっくりもしていられなかったので、御本尊の裏を一周し、こちらでも1300年記念の御朱印と復刻御朱印が授与されていたので、両方をいただいて本堂を出ると、ちょうど陽が沈む直前で、振り返れば本堂が西日に照らされ、オレンジ色に輝いていました。本堂周辺には、この季節によく見る菊ではなくダリアの鉢が飾られ、大ぶりの見事な花を咲かせていて、陽が落ちて次第に暗くなってきて地味な色合いになりつつある境内に、文字どおり花を添えていたのも美しかったです。

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秋の西日を受ける岡寺の本堂。この瞬間だけまったく違う雰囲気でした。

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鉢植えのダリア。人間の顔ほどの大きさがある、まさに大輪の花でした。
 
 本堂よりさらに上に行ったところに、奥の院石窟というのがあったので、そちらにも寄ってきました。石窟の最奥に弥勒菩薩の石仏像が安置された、岡寺の原点と思われる場所でした。岡寺は、天智天皇2年(663)、大海人皇子(のちの天武天皇)と讃良皇女(のちの持統天皇)の息子である草壁皇子の岡の宮を仏教道場に改めたのが起源とのこと。古代天皇家ゆかりの、正真正銘の古刹名刹です。

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奥の院石窟の前

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奥の院石窟の中。岡寺発祥の地だと思います。
 
 まだ時間的に余裕があり、お寺の閉門も5時だったのですが、だんだん周囲の光量が乏しくなってきたので、足元が確かなうちに――と思い、下山。10分前にバス停に着きましたが、近くのカフェに入ってコーヒーを飲んでいるほどの時間はなかったので、あきらめました。いかにも観光客相手の、古民家を利用したようなお洒落なカフェだったので残念です。地元民一人通らない道の、誰もいないバス停でしばし待ち、時間どおりに来たバスに乗車。橿原神宮前駅に到着したときにはまだ5時半前でしたが、すっかり暗くなっていました。
 
 帰りは時間もあり、始発で座れたので、急行で京都に戻ることにし、駅構内の店で柿の葉寿司を買ってから、17時39分発の電車に乗りました。18時48分に京都駅に着いて改札内のロッカーから荷物を引き取り、とりあえずやるべきことを終えると、新幹線の時間まで30分以上あったので、いつものように車内で飲むタカラ缶チューハイをゲットし、残りの時間は間に合ったら買えばよいという感覚で、久しぶりに551蓬莱の行列に並びました。20分強並びましたが、ちょうどいい塩梅で、ホームに行って5分ほど待ったら新幹線が入線してきて乗車。これにて今回の遠征終了です。
 
注)飛鳥坐神社について書いていたらかなり長くなってしまって、この記事を実際に書き終えたのは12月1日でした。