羽生雅の雑多話

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兵庫寺社遠征 番外編~姫路城&姫路城プレミアムナイトツアー

 先月末に、やっと姫路城に行ってきました。

 

 一度行ったことがあるのですが、世界遺産になる前という大昔で、世界遺産に認定されたので改めて行こうと思っていたら平成の大修理が始まってしまい、2015年にようやく終わったと思ったら、白すぎて違和感をおぼえたので、数年経って色が落ち着いてきたら行こうと思っていたらコロナ禍になってしまいました。ということで、20年ぐらい前から再訪したいと思っていたところ、今年の7月15日から8月31日まで特別公開をするというので、「これは行くしかない」と思い、ちょうどお盆休みに宝塚大劇場のチケットが取れていたので、その前後に行くことにしていました。

 

 ところが、舞台関係者に陽性者が出て公演が中止になり、ならば暑い上に一番混むときに行くこともないだろうと思い、お盆休みが終わってから行こうと思ったのですが、コロナ感染による半月隔離生活の影響もあって仕事が忙しく、時間的にも体力的にも遠征が難しく、けれどもあきらめきれなくてイライラしながらネットで特別公開関連の情報収集を続けていたところ、姫路市が主催する「姫路城プレミアムナイトツアー」の情報をゲット。史上初の夜間の大天守登閣ツアーで、姫路城研究の専門家が非公開区域も案内してくれ、姫路城が見えるレストランでの夕食と伝統工芸品のお土産付きで、参加費はなんと一人50,000円……。申し込む人がいるのかと気になって申込み状況を見てみたら、設定日が9月の五日間のみで、一日限定10名のためか、すでに三日は満員で、まだ空いている日がちょうど行ける日だったので、5分ほど悩んだ末に申し込みました。高いとは思いましたが、申し込んでいる人がいるので、それなりに身のある内容かもしれないと思ったこと、どんな人が参加するのか興味が湧いたこと、今夏も海外旅行に行けなかったことなど理由はいろいろありましたが、何よりも、行きたいのに行けない状態が続き、このままイライラして過ごすよりは精神衛生上よいだろうと思ったからです。やりたいこと好きなことを好きにやるために仕事をしているので、仕事のせいでそれができないとなると本末転倒でストレスが大きく精神的にきつくなります。稼いで日々の糧を得なければ生きていけないので、やむなく仕事をしていますが、真面目にやれば確実に心身を消耗する労働というものは、単に食い繋ぐことだけが目的で何年も続けられるほどたやすいことではないので……。思ったとおり、なかば清水の舞台から飛び降りるような気持ちで申し込みましたが、8月末までの特別公開はすっぱりとあきらめがつき、とたんにイライラも解消して、怒涛のような仕事に集中することができました。

ツアー申込後に姫路市から書類とともに送られてきたリーフレット

書類やリーフレットと一緒に入っていた本。ツアー当日の城内は、この本を監修している工藤茂博さんが案内してくれました。

 

 当日は17時30分に姫路城迎賓館に集合とのことだったので、前日仕事を終えると品川発18時37分ののぞみに乗車し、21時30分に姫路駅に着いて、駅近のホテルにチェックイン。明けて翌日、ナイトツアーはおもしろいだろうけど、現実的にはよく見えず歴史的建造物の見学には適さないと思ったので、明るい時間帯にしっかり見ておこうと思い、朝食後に姫路城へと向かいました。集合時間より早めに行って見学するというのもアリでしたが、午前中の陽の光の中で見たほうが姫路城は美しいのではないかと思ったので。

テルモントレ姫路の朝食会場から見えた姫路城

姫路城と桜門橋

姫路城と世界遺産の碑

左から、リの渡櫓、チの櫓、西小天守、大天守、井郭櫓(多分)、帯郭櫓(多分)

左から、大天守、リの渡櫓、チの櫓、二の丸跡

右から、チの櫓、リの一渡櫓、ニ渡櫓、ぬの門、中央奥は大天守

黒田官兵衛普請の石垣。自然石を積み上げる野面積みです。

チの櫓の下の石垣。内側の野面積みは豊臣秀吉時代に築かれた石垣。

 

 チケットを購入すると、改札口を入る前に姫路城インフォメーションに寄って、プレミアムオーディオガイドをレンタル。従来の松平健ナビゲーターのバージョンと、今年の7月から登場したという声優バージョンがあったので、そちらを借りました。鳥海浩輔さんが千姫の夫である本多忠刻小野友樹さんが宮本武蔵の養子で忠刻に仕えて殉死した宮本三木之助に扮し、ラジオドラマ形式でナビゲートしてくれます。ガイドの順番は資料館になっている西の丸から天守でしたが、人が少ないうちに天守を見たほうがいいだろうと思ったので、先にそちらへと向かいました。聞きたいガイドは数字ボタンで選べるので、まったく問題ありません。

プレミアムオーディオガイド声優バージョンを借りたときにもらったリーフレット鳥海浩輔さんは「イケメン戦国」で豊臣秀吉のCVを担当しているので耳馴染みがあり、イケボであることはわかっていたので、こちらを選びました。

菱の門

姫路城鳥瞰図

天守と三国掘

はの門と将軍坂。将軍坂は、実際に江戸将軍が通ったことは一度もなく、暴れん坊将軍が通ったことに由来する俗称だそうです。

ほの門(左下)と乾小天守

石落とし

天守内その1。1階にある天守出入口。

天守内その2。破風の屋根裏部分。

天守内その3。高いところから攻撃するための石打棚

 

 大天守の最上階には長壁神社があり、播磨富姫神が祀られていました。私が好きな泉鏡花の戯曲『天守物語』の主人公である富姫は姫路城の天守に棲みついている妖ですが、彼女は播磨富姫神がモデルなのでしょう――今の今まで知りませんでしたが。説明板によると、主祭神は姫路長壁大神で、富姫はその娘とのこと。工藤さんが監修した姫路城の本には、刑部姫宮本武蔵の伝説について書かれていて、姫川図書之助のモデルがどうやら宮本武蔵であるらしいことも、このたび初めて知りました。

長壁神社

長壁神社についての説明板

不思議な形の桐紋の瓦。下の揚羽蝶の丸紋は江戸時代初期に城主だった池田氏の家紋。

天守を支える東西2本の大柱。ナイトツアーで東大柱は樅の一本柱と説明されました。

右から、大天守、西小天守、乾小天守

怪談『播州皿屋敷』ゆかりのお菊井戸。城外にありましたが、明治期に城内の井戸に移したとのこと。

 

 チの櫓とリの一渡櫓の常設展示を見て、三国堀の脇を通り、天守コースと西の丸コースの分岐点である菱の門の前に戻ってくると、続いて西の丸へ。

大名行列についてのパネル展示その1。大名行列の持ち物

大名行列についてのパネル展示その2。姫路から江戸までの行程。

大名行列についてのパネル展示その3

大名行列についてのパネル展示その4。プチトリビアです。

西の丸から見る天守

西の丸についての説明板

百間廊下

百閒廊下についての説明パネル

百閒廊下から見る天守

 

 西の丸の内部は資料館で、歴代城主についてなどの説明パネルが展示されていましたが、池田家→本多家→松平家→榊原家とコロコロと城主が変わった城なので、興味がなくスルー。徳川家康の孫で豊臣秀頼の妻、のちに姫路城主本多忠政の嫡男である忠刻に再嫁した千姫についても、大坂城時代に比べると興味が薄いのでスルーし、化粧櫓から出てくると、時刻は12時をまわったところ。午後は西国三十三所の札所である圓教寺に行くことにしていたので、約2時間の見学を終え、改札口の横にある売店で御城印を購入し、インフォメーションに寄ってオーディオガイドを返却すると、姫路城大手門前バス停へ。(圓教寺については別記事を書く予定)

 

 5時過ぎに書写山から戻ってくると、集合時間が17時30分で受付開始が15分からだったので少し早かったのですが、他に寄るところもないので、集合場所の姫路城迎賓館へと向かいました。すでにスタッフがいたので受付を済ませ、迎賓館内でお茶と姫路銘菓の「玉椿」をいただきつつ説明を聞き、時間になるとガイドに伴われて出発。姫路城の職員、姫路市観光課の職員、JTB姫路支店の社員と思われるスタッフが同行し、参加者よりスタッフのほうが多いツアーでした。まあ、姫路城には夜間公開の設備がないので、ほとんどが照明要員で、行く手を照らしたり、足元を照らしたり、説明箇所を照らしたりしてくれました。

姫路城と桜門橋。午前中とは全然印象が違います。

大手門

夕映えの姫路城

迎賓館の待合室。黒田官兵衛の甲冑と、官兵衛が賜って黒田家の家宝となった織田信長所有の名刀、へし切長谷部の飾り物がありました。

配られた案内ルートの地図

菱の門。開門時間外なので、職員が後ろの閂を開けてくれ、ツアー客が扉を押して開けました。

菱の門の裏側。開門時間内には見られないものです。開けて入ったあとに、また職員が閉めて、施錠の状態を見せてくれました。ちなみに、江戸時代の城の城門の名前は、転封などで城主が代わっても鍵の引き渡しが間違いなく行われるように、すべて幕府に届けられ、勝手に変えられるものではなかったそうです。

乾小天守

乾小天守と二の櫓。スタッフが電灯で照らしてくれないと見えません。

ロの渡櫓の中にある井戸。こちらも真っ暗なので、スタッフが数人がかりで照らして見せてくれました。

天守にある厠その1。下にあるのは備前焼の甕だそうで、厠の甕としては高級すぎるので、実際に使われたものではないだろうとのことでした。

天守にある厠その2。特別公開で見せるのは甕ありのほうで、こちらは公開していないそうです。

夜の長壁神社その1。光源が行灯風ライトだけだとこんな感じと、戦国~江戸時代の暗さを体験。

夜の長壁神社その2。窓の戸を開けると、天守内に電灯がなくても、現代は外のネオンが明るいので、ある程度見えます。

天守最上階から見る大手前通り

シャチホコと月

土壁と月

備前丸から見る大天守と西小天守

お菊井戸とチの櫓

化粧櫓内の千姫に関する展示品。復元着物のパネルなども展示されていました。こちらも特別公開中しか見られません。

化粧櫓から見る天守

 

 西の丸の見学が終わると、1台2名ずつ5台のタクシーに分かれて、姫路城の中堀の外側を一周し、ライトアップされた姫路城を四方から眺めたあとに、レストラン「SORA NIWA」へ。和洋折衷の創作コース料理で、デザート後のコーヒーまでサーブされると、あとは自由解散。ホテルか姫路駅まで個別にタクシーで送ってくれることになっていたので、姫路駅まで行ってもらい、駅構内のコンビニに寄って水などを調達してから、10時前にホテルに帰着。これにて日程終了です。

姫路城が見えるレストランで、全員が窓を向く席でした。

夕食メニュー。これにアルコールも選べるドリンクが1杯が付いていて、2杯目から有料でした。

帰りに渡された姫路城のイラストの紙袋と、中に入っていたクリアファイル。伝統工芸品のお土産は後日自宅に発送してくれるそうです。

 

 正直なところ、プレミアムツアーの内容が価格に見合っていたかは微妙ですが、本来明かりがないところに不自由さを感じないほど電灯を用意し、夜間のイベントで、その設備がない施設で参加者の怪我や文化財の破損などの事故が起こらないように細心の注意を払い準備をする必要があることを考えると、通常のツアーであれば生じないスタッフの人件費などもあると思うので、妥当な金額のような気もします。海で同じような遊覧を楽しむにしても、定期的に運行される観光船に乗るのと定期観光船がないところでチャーター船に乗るのとでは、かかる金額が違うのと同じようなものです。すべてのツアー参加者がそこまで考えてツアー料金に納得するかはわかりませんが。

 

 ということで、夜の姫路城も純粋におもしろかったのですが、世界遺産姫路城というコンテンツを使って姫路市が実験的に試みる企画に参加できたことは貴重な体験で、興味深いことでした。しかしながら、主催者側も参加者側も「プレミアム」は人それぞれなので、今後も続けるならば、できるだけ多くの人々が共感でき支持される落としどころを探っていかなければならないと思います。そのためにも、今回とはまた違った特別感のあるツアーを今後も企画し催行してほしいですね

 

 それにしても……善光寺の時もそうですが、再訪したいと思っていても、なかなか叶わず、気が付くといつのまにかけっこうな月日が経ってしまっています。そんな状態なので、「二度と行くことはないだろう」と思う旅先もたくさんあります。また、ここ数年足を運んでいる旅先でも「もう来ることはないかもしれない」と思って、自分に散財を許し、できる範囲内で豪遊しています。長寿時代で平均寿命が長くなり人生は長いのかもしれませんが、健康寿命は短く、安定した経済環境も残念ながら寿命ほど長くはないと思うので、今後もおもしろい旅の機会は逸しないように、旅先では再訪できなくても悔いのないように楽しみたいと思います。