羽生雅の雑多話

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朝夏まなととhydeと濱田めぐみ~「王家の紋章」さらっと感想

 常日頃から時間がない上に、気温差が激しかった今週は久しぶりに風邪を引いてしまい、体力も気力もなく、借りた『進撃の巨人』と買った『マギ』の新刊もそのまま放置し、フィギュアの国別対抗戦があることすら忘れていて、ショートは見そびれてしまいました。本日のフリーをテレビ観戦しながら、先週観てきたミュージカル、「王家の紋章」について書こうと思います。
 
 宝塚以外では「貴婦人の訪問」以来のミュージカル鑑賞になります。今年の本公演は再演で、昨年の初演は自分が観たいキャストのチケットが取れなかったのでパスしましたが、今回は希望キャストのチケットが買えたので行ってきました。ミュージカルもキリがないので、最近は観たいキャストでチケットが取れなければ行きません。不本意なキャストで観ても不満が残るのはわかっていますから。昨年の「エリザベート」も井上・花總コンビの回が取れなかったので結局観ませんでした。もともとエリザベート皇后が好きな上に、一番好きなミュージカルなので、一昨年までは毎年2回は観ていたのですが。私の中ではトート=山口祐一郎さんなので、武田真治さん、内野聖陽さん扮するトートも観ましたが、山祐以外で納得できたのは、石丸幹二さんと井上芳雄さんぐらい。なので、城田・蘭乃コンビとかだったら、もういいかと……(ファンの方、スミマセン)。マテも悪くなかったですが、マヤ相手にやはりドイツ語でこそ本領発揮です。
 
 今回の「王家の紋章」は、細川智栄子さんのマンガが原作のミュージカルです。原作は1976年に連載が始まった『ガラスの仮面』に匹敵する長編マンガで、マンガ好きには馴染みの深い作品なのですが、私は細川さんの絵が苦手なので、まったく読んだことがありませんでした。「ベルサイユのばら」は原作のオスカルが大好きで、宝塚を観はじめる前からファンだったので、文庫もアニメのレコードも持っていますし、基本的にマンガ好きなので、学生の頃は「王家の紋章」が掲載されていた雑誌「プリンセス」も読んでいて、中山星香さんや青池保子さんの作品は大好きでした。中山さんの『花冠の竜の国』とか青池さんの『エロイカより愛をこめて』などは夢中になって読んだものです。
 
 そんなわけで、エジプトが舞台のタイムトラベル漫画ということ以外ストーリーなどは詳しく知らずに観に行ったのですが、はっきり言って、観ていてつらくなるほど内容が薄っぺらで、こっぱずかしい話でした。いくら古いマンガが原作とはいえ、あそこまで内容のない物語もないと思いました。古代エジプトにタイムスリップした現代人(と言っても、1970年代のアメリカ人ですが)の娘キャロルが、白人なので肌の色が白くて金髪で、しかも未来の人間であるがゆえにいろいろなことを知っているので、エジプトの若き王メンフィスとヒッタイトの王子イズミルが惚れ込んで奪い合うという話。わかりやすいという意味ではいいのかもしれませんが、全然おもしろくありませんでした。単純な純愛ものでも「アイーダ」とか「ロミオとジュリエット」とかは観ていてまったく問題がないのですが……むしろ好きなくらいですし。
 
 私は『古事記』や『日本書紀』も好きですが、中学生の頃からギリシャ神話が大好きでして……なので昔から古代史にも興味があったので、社会人になって自由に海外旅行ができるようになってからは、水を得た魚のようにあっちこっちに行きまして、ギリシャやエジプトにも行きました。また、二十代の中頃にはヒッタイト帝国にも興味が湧いたので、トルコにも行って、ギリシャ神話好きにとってはトルコにおける聖地であるトロイの他、ヒッタイトの都ハットゥシャがあったボアズカレにも行ってきました。ギリシャ神話に興味を持ったのは、阿刀田高さんの『ギリシャ神話を知っていますか』などの入門書をきっかけに『イリアス』にハマったからですが、ヒッタイトはマンガがきっかけで、篠原千絵さんの『天は赤い河のほとり』を読んだからです。『王家の紋章』と似たような設定で、日本人の女の子が古代ヒッタイト帝国に飛ばされて云々という話なのですが、この話を読んでヒッタイトに興味を持ち、遺跡発掘に携わる大村幸弘さんの『鉄を生み出した帝国』などを読んでどうしても現地に行きたくなり、このマンガを読みはじめて数か月後にはアナトリアに飛んでいました。ここ数年のトルコは危なくて足を踏み入れられないという、とても残念なことになっていますが。
 
 というように、それぐらい古代のギリシャやエジプト、トルコは好きなので、今回の舞台の時代背景はバッチリ好みに合っていたのですが、それだけにストーリーがお粗末すぎて、つらかったですね。「マリーアントワネット」や「レディ・ベス」など、東宝が作らせ帝国劇場で観たミュージカルで満足したためしがないので、やはりこんなものかと思いましたが。
 
 とはいえ、「エリザベート」の作曲担当であるリーヴァイの楽曲と出演者の歌はそれを補って余りある出来でしたから、観て後悔したということはありません。特に出色だったのは濱田めぐみさん。裏切られたことがないミュージカルスターさんですが、今回も素晴らしかった。力があり、それでいて伸びやかな声が秀逸です。主演した「カルメン」も駄作ではありましたが、彼女の歌だけはよかったですし。
 
 それと、予想外によかったのが、舞台では今回が初見だった宮野真守さんです。声優としては押しも押されぬ売れっ子で、以前からいい声だとは思っていましたが、抑揚に富んだ歌は、さすがに声で勝負している人だと思わせる表情豊かな、引き込まれる歌でした。やや表現がオーバーな感じもしましたが、コテコテの少女マンガの世界なので、それはそれで二次元の人物ぽくてよかったです。
 
 主演の浦井健治さん、新妻聖子さん、伊礼彼方さんなど、ミュージカルでおなじみの面々は期待どおり。浦井さんと伊礼さんは「エリザベート」のルドルフ役でいいと思って以来注目していますし、新妻聖子さんは「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ以降、いずれも長年観てきた役者さんです。あゆっち(愛加あゆさん)は宝塚退団後はじめて観ましたが、実力派トップスターだったえり(壮一帆さん)の相手役に抜擢された実力派娘役トップスターだったので、まったく問題なし。愛すべき山祐はさすがの貫録で、存在感が違いました。なんか一人だけ人間じゃないというか……神様か預言者みたいな感じ(笑)。
 
 タイトルに挙げた3人は、今月に入って生で歌を聴き、印象に残った人たちです。ホント、歌にもいろいろありますよね。先月聴いたドミンゴみたいな正統派もあれば、ミルバみたいに上手い下手を飛び越えた強烈な個性を放つものもありますし。一つの表現方法として、本当に奥が深いものだと思います。