羽生雅の雑多話

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ネイサンとアリョーナ時代の到来~2019グランプリ・ファイナル感想

 10月11月は毎週末友人知人と食事をしたり飲んだりするハードな日々を過ごし、かつ休日は休日で京都・奈良に行ったり皇居や御岳山に行ったりしていたので、疲労のため家にいる休みの日は記事を書く気力もなく、昼まで寝ていたり昼寝をしたりして体力の回復と温存に努めていました。にもかかわらず風邪を引いて、仕事も二日ほど休む羽目に……。体の節々――特に左半身が痛くて、風邪のせいかと思っていましたが、風邪が治っても痛みはなくならず、はや3週間になります。左手は握力がなく時折痺れてバッグを手持ちするのもつらく、腕を組むのも電車の吊革を持つのも痛いという状態。どうにかしたいと思い、会う人会う人にどうしたらいいか訊いても「年だから仕方がない」と言われ、目下のところ手立て無し。ということで、心身ともにかなり滅入っていますが、フィギュアスケートのグランプリファイナルの試合が素晴らしいものだったので、久しぶりに感想記事を書きたいと思います。

 

 まずは男子シングル。ネイサン・チェンvs羽生結弦、今回も凄まじい戦いでした。歴史的な、後世まで語り継がれる至高の一騎打ちだったと思います。激戦だった世界選手権以来の直接対決でしたが、二人ともグランプリシリーズはぶっちぎりの強さで2勝し、他なんてまったく眼中なし。お互いにライバルはユヅでありネイサンだけで、相手が出場していない大会では、ライバルは己自身であり、目標は過去の自分を超えてパーソナルベストを出すこと、あわよくば世界最高を更新することで、NHK杯なんか全然試合になっていなくて、つまらないものでした。

 

 で、今大会ですが、二人がそれぞれに、自分のすべてを出さなければ勝てない、出し惜しみしていたら――難度を下げて安全策を取るような無難にいったら勝てない、相手のミスを待っていても勝てないと思い、最初から全力で戦っていました。そしてショートでミスをしたユヅは自分の持てるものを最大限出してもネイサンには勝てないので、今までの己の限界を超える挑戦をし、ユヅが逆転をあきらめずに挑戦してくることを確信していたネイサンは、現在の彼がノーミスで滑ることのできる限界の内容で迎え撃ちました。それが4種5本の4回転対決です。一切手を抜かず手加減せずに相手になり、そして40点以上という大差をつけてオリンピック2連覇中の王者を完膚なきまでに負かしました。これほど敬意にあふれた仕合があるでしょうか。ユヅも潔く負けを認めることができ、いっそ清々しい思いすらあったと思います。今の力のすべてを出し切って、やりきって敵わなかったのですから……。だから新たな闘志が湧き、再び上を目指して前を向けるのでしょう。自分にそう思わせてくれるネイサンに本当に感謝していると思います。

 

 二人のジャンプ対決は単に4回転の種類と回数が多いだけではありません。一番難しいルッツの4回転対決は、二人とも完璧に決めて、ユヅは3.94、ネイサンに至っては4.27の加点を引き出しました。4回転からのコンビネーションも二つずつ入れて、4回転以外の残り二つのジャンプは、ネイサンがトリプルで一番得点の高いアクセルと次に高いルッツ、ユヅはルッツとトゥループの3回転3回転のコンビネーションと、トリプルアクセル×2のコンビネーションを入れていました。しかしユヅの体力はもはや限界で、最後のコンビネーションは跳べず、二つのトリプルアクセルの得点が無しに……。ここで勝敗は決まりました。タラレバになりますが、加点はないまでも2本のアクセルの基礎点だけでも獲得していたら、滑走が後のネイサンにさらなるプレッシャーを与えることができ、違う結果になっていたかもしれません。

 

 一方のネイサンは、冒頭の4回転フリップ+3回転トゥループの5.03を筆頭に、すべてのジャンプに加点が付く取りこぼしのない出来栄えでした。回転が早く、ランディングは柔らかく余裕があり、安定感がありました。そして、なんといっても特筆すべきはダンス。衣装は確かにもう少しどうにかしたほうがいいと思いますが、あのキレのあるダンスを踊るプログラムの衣装がユヅのような王子様系だと違和感があるので、ヒラヒラキラキラよりはいいかと思っています。

 

 ネイサンもそうですが、ユヅのライバルになれるスケーターは、みな突出して体の使い方が巧く、踊るのが上手いような気がします。ハビエルしかり、大ちゃんしかり。裏を返せば、それが上手くなければ羽生結弦と戦うこと――ガチの真っ向勝負はできないということかもしれません。ユヅはダンサーとしてのセンスと身体能力は正直イマイチで、体全体からにじみ出る表現力にはやや難がありますが、それ以外は非の打ちどころがなく、難点を補って余りある高度な技術力と、持ち前のビジュアルのよさを最大限に生かす表現力を持っているスケーターですから。

 

 それにしても、ユヅはライバルに恵まれていますね。長年後ろから自分を脅かしてきたショーマが今季大失速して、当面追い越される危機感がなくなり、モチベーションが保てなくなりそうなときに、自分たちを目標として追いかけてきたネイサンが追いついて、いつのまにか自分たちを抜き、簡単には越えられない壁となった――その高い壁に、もはや挑まなくてもいいのに挑戦せずにいられないのが羽生結弦なのだと思います。究極の負けず嫌いだから……。

 

 女子の覇者はコストルナヤ選手。やはり来ましたね~。完成度の高さと美しさで他を圧倒し、男子もビックリの4回転4本をフリーで跳んだ驚異の4回転ジャンパーのトゥルソワ選手、最高難度の4回転ルッツを2本跳んだシェルバコワ選手を抑えて、ネイサンと同じく世界最高得点で優勝。4回転は1本も跳びませんでしたが、納得の金メダルでした。

 

 4回転なしでも文句なく1位であると認めさせる質の高い演技で強力なライバルに打ち勝ち、何度も表彰台の頂点に立ってみせる彼女の存在は、フィギュアスケートの可能性を示していて、けっしてジャンプだけの競技ではないことを体現してくれているようで、嬉しく思って見ています。若くして世界女王となったメドベージェワ選手やザギトワ選手が苦しんでいるように、女子は成長期で体型が変わるので、ジャンプはいずれ思うように跳べなくなります。ですが、16歳の今ジャンプを武器にしていないコストルナヤ選手はおそらくその壁をあまり苦労せずに乗り越え、もしかしたら壁と感じることもなくオリンピックまで行けるかもしれません。ともあれ、彼女の存在は紀平選手にとっても光明だと思います。4回転が跳べなくても勝てることを身をもって証明してくれているのですから……。

 

 前回優勝の紀平選手は残念ながら今回はメダル圏外の4位でしたが、上はすべて今年シニアデビューしたロシア三人娘なので、彼女たちを除けば最高位であり、彼女たちがいなければ連覇できるだけの力はあったと思います。だから焦ってクワドなんかに挑戦せず、コストルナヤ選手を手本にして、トリプルアクセルやスケーティング技術、演技全体の完成度を高めることに精進してほしいですね。

 

 そして忘れてならないのが、ジュニア男子シングルを制した佐藤駿選手。おめでとう! フリーの演技が素晴らしく、見事な逆転優勝を果たしてくれました。今15歳とのことですが、シニアデビューが楽しみですね。このまま伸びてくれれば、北京オリンピックの最有力候補だと思います。フリー決戦日に25歳になったユヅはそこまで現役を続けられるかわからないし……本人がやりたくても脚はもうボロボロだと思うので。気合いとか気持ちだけでなんとかなるものではありませんから。

 

 では、最後にひと言……

 

「ガンバレ、ショーマ!」