羽生雅の雑多話

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ショート5位、見えてきた羽生結弦の限界~2017世界フィギュア感想

 フィギュアスケートの男子シングルは、猛者たちがしのぎを削る戦国時代に突入したと言ってよいのではないでしょうか。

 マキシム・コフトゥン
 ジェイソン・ブラウン

 今年の世界フィギュアの男子シングルショートプログラムの第6グループのメンバーです(滑走順)。新旧の世界王者が3人いて、今年の四大陸王者のネイサン・チェン選手や昨年の世界フィギュア銅メダリストのボーヤン・ジン選手、ソチ五輪銅メダリストのデニス・テン選手が入れないという、すさまじい群雄割拠状態(笑)。

 そんな中で、日本のエース、注目の羽生選手は相変わらずでした。雑な演技です。彼は手の使い方がまったくなっていないんですよね。第5グループのコリヤダ、テン、チェン、ブレジナ各選手のほうがきれいで、演技もよかったです。このグループでは、中でも、ミハイル・コリヤダ選手のキレと、デニス・テン選手のステップシークエンスが印象的でしたね。

 次代を担うと思われるネイサン・チェン選手の今回の出来はイマイチでした。スピードがなく、演技が小さくなってしまった上に、トリプルアクセルも失敗してしまったし。かなり硬くなっているように見えました。まあ、まだ17歳で世界フィギュア初出場なのに、いきなり金メダル候補とか言われて、しかもオリンピックの出場枠3枠取ってこいとかプレッシャーかけられて、緊張しないほうがおかしいです。もっと気楽に滑らせてあげればいいのにと、気の毒に思いました。

 宇野選手はよく頑張りました。大健闘です。まだ手の使い方がうまいとは言えませんが、それでも彼の場合は、指先まで意識しているのが伝わってきました。

 最終グループのラストの3人――ハビエル・フェルナンデス選手、パトリック・チャン選手、ジェイソン・ブラウン選手の3連続演技は圧巻でした。凄すぎて、見ながら笑いが止まりませんでした。比較にならないというか、ユヅと比べるのも悪いような気がして……。特にハビエルとパトリックは、もう次元が違いました。ジャンプやスピンなどの技はさることながら、根本的なスケーティングの質、体の使い方、全体的なまとまり感というか完成度が違いすぎる。さすがは世界選手権2連覇の現チャンピオンとと3連覇の元チャンピオンです。

 ショートが終わって順位は、1位フェルナンデス、2位宇野、3位チャン、4位ジン、5位羽生、6位チェン――はっきり言って順当です。ということは、つまりユヅの今の演技では、限界が見えてきたということではないでしょうか。

 彼の演技には引き込まれない――魅せられるものがないことは、今日の場合特に、続く選手の演技を見れば、否応なしに感じて、わかってしまうことです。羽生結弦が王者だという意識ももうジャッジにはなく、ここ3年で彼に対する見方は変わり、評価も落ちて、オリンピック直後のひいき目は薄れてきて、より厳しい目で見ていると思います。ジャンプが決まらなければメダル圏外であり、決めてもハビエルより上ではないという評価です。

 解説は何故か彼の演技をべた褒めしていましたが、それもいけないと思います。歴代チャンピオンたちに比べればまだまだなのに、ユヅが勘違いして増長するというか、ビッグマウスになっている一因を作っていると思います。フジの実況アナウンサーはともかく、解説者はちゃんとだめな点を解説するべきです。ユヅファンの反応が怖いかもしれませんが、甘いことばかり言っていては、本人のためにも、ひいては日本のフィギュア界のためにもなりませんから。

 本田武史さん、髙橋大輔さん、もっとビシッと言ってください。長野の世界フィギュアで観た本田さんのアランフェス協奏曲、最高でした。それまで女子に比べるとレベルが低いと思われていた日本男子シングルの世界への扉を開いたのは、間違いなく彼です。国内ライバル不在の中、孤軍奮闘して、日本人でも世界大会の表彰台に上がる力があると証明し、世界のフィギュア関係者に意識づけてくれました。そのおかげで次の世代は当然のように世界でメダル争いをするまでになり、国内外のライバルと切磋琢磨するよりよい環境の中で、ついに大ちゃんが世界のトップに立ってくれました。あなたたちは今の日本男子シングル隆盛の礎を築いたパイオニアです。あなたたちがいなければ、羽生結弦宇野昌磨も今、世界のあの舞台で戦っていません。だから、あなたたちには、他の人間には言えないことが言えます――厳しいことでも。それが真に後輩のためです。よろしくお願いします。日本のフィギュアスケート男子シングルの選手であなたたちの言葉が聞けない人間は、もはやその時点で終わっていると思います。