羽生雅の雑多話

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羽生結弦の驚異の精神力と、宇野昌磨の年に似合わぬしたたかさ~2017世界フィギュア感想

 いやー、すごい戦いでした。先ほどテレビ観戦し終わった2017世界フィギュア男子シングルフリー。ディフェンディングチャンピオンハビエル・フェルナンデス選手が301.19の300点超えを果たしながら、メダル圏外の4位ですから。


 ともあれ、羽生結弦選手、世界最高点321.59での3年ぶりの金メダル獲得おめでとうございます。今日のフリーは見事でした。とにかくジャンプが素晴らしかった。ただ跳ぶだけじゃなくて、跳び上がりから着氷までの姿勢が完璧でした。全部が美しいジャンプでした。4回転がからんだジャンプすべてに2点以上の加点が付いたのも納得です。技術点126.12は異次元です。シーズン一番の大舞台でノーミスの演技をやり遂げた強靭な精神力には脱帽です。後は手です。手先まで気にしてください。

 ユヅは圧巻でしたが、個人的には、今日はなんといっても宇野昌磨選手に感動しました。ノーミスだったユヅに対して、ショーマはトリプルルッツをミスし、4回転のランディングもこらえた感じだったのに、319.31という僅差の2位。彼はとにかく手先まで行き届いていて、見る者を引き込む表現力があります。今日も抑揚とキレのある演技に魅了されました。次の動きを見たいと思えるのですよ、ショーマの演技は。ユヅの点数は知らなくても、彼がいい演技をしたことは会場の雰囲気でわかったと思います。それでも動揺や緊張をコントロールし、ミスを最小限に抑え、最後まであきらめずに戦い抜いた彼の精神力も、ユヅに負けず劣らず大したものです。こちらも天晴れな銀メダル獲得でした。おめでとう。

 ということで、もしショーマがノーミスだったらユヅの点数を超えていたかもしれないとも思うのですが、勝負にタラレバはありません。時間が長いフリーをノーミスというのは本当に難しく、ショートはほぼ完璧だったハビエルとパトリックも打って変わって大小のミスを連発し、奇しくもグランプリファイナルと同じような展開。ノーミスと言えるのはユヅだけで、その演技と点数がプレッシャーを与え、新旧チャンピオンたちのミスを誘ったのだとしたら、滑走順にも恵まれていました。しかし、それを差し引いても、高難度の演技をノーミスでやり遂げたユヅの技術と精神力は称賛に値します。ですが、あえて辛口なことを言わせてもらえば、今日のような演技は出来てシーズンに1回でしょう。そのタイミングを世界選手権のフリーに持ってこられたのは成長の証かもしれませんが。完璧にやれば勝てるというのは、完璧にやらなければ勝てないということです。やはりこの勝利に慢心せず、少しでも表現力を磨いたほうがいいと思います。

 表現力といえば、今大会は、ジェイソン・ブラウン選手が本当に素晴らしかった。4回転で点が取れないので、どうしても全体の点数は出ませんが、現役スケーターで一番好きなスケートです。美しく繊細で、コレオシークエンスなんかため息が出ます。彼がトゥループ1種類でも4回転の確実性を増し、単独とコンビネーションで4回転を2回でもプログラムに入れてきたら、とんでもないことになるでしょう。ネイサン・チェン選手は平昌の次の北京五輪を目標にしたほうがいいですね。また、完成度が低ければ、4回転の回数をいくら増やしても藪蛇なことを学んだほうがいいと思います。けれども、この二人でアメリカは、ワンツーフィニッシュの日本と同じオリンピック出場枠3枠を確保したので、そういう意味では、見事な戦いぶりだったと思います。ネイサンが挑んだ4回転6回という無茶な演技も、それを意識してのことだったのかもしれません。少しでも点数を稼いで、一つでも順位を上げたいという……。元世界王者パトリック・チャン選手と元四大陸王者ケビン・レイノルズ選手というソチ五輪団体銀メダリストの二人で臨んだカナダも、ハビエルに次ぐ欧州選手権2位のマキシム・コフトゥン選手と同3位、昨年の世界選手権4位のミハイル・コリヤダ選手という二人で臨んだロシアも、結局2枠にとどまったのですから。キビシイ~。

 というほどに熾烈な、まさしく手に汗握る戦い――近来稀に見るハイレベルないい試合でした。選手の皆さん、いいものを見せてくれてありがとう。フィギュアスケートの素晴らしさを堪能しました。来季はオリンピックシーズン。今季からどんな成長を遂げて、どんな演技を見せてくれるのか、楽しみにしています。くれぐれも怪我には気をつけて。