羽生雅の雑多話

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5分で見終わったフェルメール展とムンク展コラボメニュー

 入場料2500円――プレミアムフライデーということで30日19時からの回の前売券を事前に買って行ってきましたが、これほどコスパの悪い美術展はおぼえがありません。上野の森美術館で開催されているフェルメール展――ガッカリして、ソッコー引き上げました。日時指定入場制のわりには1回に入れる人数が多く、フェルメール・ルームの人垣は三重ぐらいで、絵を鑑賞するような環境ではないし。フェルメールは寡作なので展示作品数が少ないことはわかっていて、それはそれで納得していましたが、同じ寡作の画家の展覧会でも、国立西洋美術館で開催されたアルチンボルド展のほうがまだ楽しめました。フェルメール展に行く前に、例によって東京都美術館にあるレストラン「サロン」に寄り、当館で開催中のムンク展のコラボメニューを食べたのですが、それが美味しかったのがせめてもの救いです。

 最高傑作である「真珠の耳飾りの少女」はマウリッツハイス美術館の至宝なので、来なくても仕方がないと思っていましたが、せめて「デルフトの眺望」ぐらいは来てほしかった。私がフェルメールという画家の名を記憶することになった作品なので。ウィーン美術史美術館の「絵画芸術」もドレスデンのアルテ・マイスターにある「窓辺で手紙を読む女」も来ていませんし。展示作品については展覧会特設サイトのホームページにすべて紹介されていたので、調べていなかった私も悪かったのですが……。今回の目玉である「牛乳を注ぐ女」も代表作ではありますが、個人的には、あんなに群がって観るほどの絵ではないと思っています。ブルーが印象的で、その点は「真珠の耳飾りの少女」に通じる、いかにもフェルメールらしい作品ですが、少女ほどのインパクトはありませんし。風景画や寓意画といった「真珠の耳飾りの少女」とは傾向が違うタイプの絵で、それでもひと目見てフェルメールではないかと思った、彼の特徴が表れている絵と比べて見たかったですね。

 フェルメールの絵の魅力というのは、色彩の中における光の存在――これの表現に尽きると思います。影や夜闇などと対比させると光は表現しやすいですが、様々な色彩が目に入ってきて、青や黄などいくつもの色が視界において主張する昼の風景や光景の中で、光という具体的には目に見えない漠然としたものを表現するのは、高い技術が必要です。なおかつ、ランプやガス燈、松明や暖炉の炎が直接的に照らし出す灯の光ではなく、太陽の、しかも窓越しの陽光というのは、間接的なので淡く儚い上に、遠くから世界をあまねく照らすだけにやわらかいので、表現するのがとても難しいはずです。けれども、フェルメールはその光を敏感に捉えて、見事にキャンバス上に描き出しています。その点が秀逸だと思います。

 この、いわゆるフェルメール的な特徴が現れているのは1658年以降の作品であり、らしさが取り立てて感じられないそれ以前の作品には正直見るべきものはないと思っています。あくまでも個人的には――ですが。なので、たとえフェルメールといえども、初期の作品を生で見ても感動はありませんし、見に来ている人たちにも、もっと違うフェルメール作品を観てほしいと切実に思いました。はっきり言って、初期の作品は一緒に展示されていた別の画家作品と大差ないので――いずれもよくあるオランダ絵画の一枚にすぎません。フェルメール作品を年代別に展示して比較することで、58年以降の彼の作品において、より光の表現が研ぎ澄まされてきて進化していることはわかりますが……そんな対比を見るよりも一枚でも多くいい絵が観たいです。美術館を後にしながら「こんなものではない、フェルメールは。彼の作品の凄さを全然語り切れていない」と心中で唸っておりました。久しぶりに魚料理と肉料理の両方があるコースを食べたせいもあって、いろいろな意味で消化不良な感じでした。

 ちなみに、ムンク展コラボメニューの詳細は下記のとおり。ムンクに関しては「叫び」以外興味がないので、藤田嗣治展の時と同様、レストランで食事をしただけで展覧会展自体には行っていないのですが、ムンク展では彼の一番の代表作である「叫び」が展示されています。何枚か描かれた中の一枚ですが、ザ・ムンクと言ってもよいこの作品が生で観られるだけでも、こちらのほうが行く価値はあるのかもしれません。

ノルウェー海の氷河に浮かぶサーモンマリネ ウイキョウの香り
・干し鱈と海老のトマトスープ バカラオ風
・骨付き子羊とキャベツの煮込み フォーリコール風
・ブルートカーケ ムンクの叫び

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メインの肉料理は骨付きだったのですが、骨は取ってほしいと希望したら、取って出してくれました。ラムはあまり得意ではないのですが、この一品はとても美味でした。溶けるようなお肉の柔らかさと、一緒に煮込まれながらもサクサクとした食感が残っているキャベツとの相性もよかったし、プレートの縁の上に配された付け合わせは、苦みと甘み、硬さと柔らかさの両方が味わえ、デミグラスソースを飽きさせませんでした。

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デザートは、スポンジケーキにコケモモのジャムを塗ったノルウェー伝統のケーキで「叫び」を表現。これぞまさしく、アイスクリームでスクリーム、です。