本日まで、昨年10月22日に行われた即位礼正殿の儀で使用された高御座と御帳台が、東京国立博物館で一般公開されていましたが、次の機会はないだろうと思ったので、開館時間が長い10日の金曜に仕事を早めに終えて見に行ってきました。
無料で見られたのですが、せっかく行くなら常設展も見たかったので、チケットを買って入館。本館入口を入ったところに設置されていたセキュリティチェックを受けて展示室に入りました。動画とフラッシュは禁止されていましたが、撮影自体は許可されていたので、写真を撮ったのですが、ガラスに人が写り込んで、なかなかうまい具合にはいかず。けれども、オールカラーの説明パンフレットが無料でもらえたので、まあいいかと思いました。
本館入口を入ったところに設置されていたセキュリティチェックの上の垂れ幕
高御座
高御座内部の御椅子。左右に、剣璽と国璽および御璽を置く小卓があり、これは御帳台にはありません。剣璽は三種の神器のうち草薙剣と八尺瓊勾玉、国璽は国家印、御璽は天皇印――つまり天皇のみが有する物を置く場所なので、皇后には必要ないからです。
御帳台
総ガラス張りの向こうに、こんなふうに並んで展示されていました。向かって左が高御座で、右が御帳台です。
無料配布されていたオールカラーパンフレット。無料公開、撮影可も含めて、ずいぶん太っ腹だと思いました。
別室で、即位の礼にあたって儀式の威厳を整えるために捧げ持つ威儀物も展示されていました。
威儀物(パンフレットより)。ちゃんと実物が展示されていて写真も撮れたのですが、わりとサイズが大きく、引きにしないと全部が入らず、しかし引きにすると人が入ってきて物にかぶって邪魔になり、まともな写真が撮れなかったので、撮影しませんでした。
即位礼正殿の儀における服装(パンフレットより)
威儀の者の装束。武官の束帯姿です。パンフレットに写真がなかったので撮ってきました。
威儀物捧持者の装束。向かって右は文官の束帯姿です。
ひととおり特別公開の展示を見たあと、本格的に常設展を見る前に腹ごしらえをしておきたいと思い、「ホテルオークラ ガーデンテラス」のオーダーストップに間に合いそうだったので、法隆寺宝物館にある店に行って、スパークリングワインと本日のパスタを注文。入店時に1組いた客も途中でいなくなり、客が一人だけのせいか、ワイングラスを空ける間もなく、すぐに料理が出てきたので、冷めないうちにパスタを平らげたあと、しばらくワインを飲みつつ、もらってきたパンフレットを読み込みました。そして、閉店10分前になったので、店を出て平成館へ。来たときにはまだ明るかったのですが、食事を終えて法隆寺宝物館を出ると、すっかり日も暮れて、美しい月夜になっていました。
ライトアップされた東博本館の上空に煌々と照る月。帰って調べたら、翌11日未明に満月を迎えたとのことでした。
平成館では何の特別展も開催されていなかったのですが、東博に来たら、この建物の1階にある考古展示室を見逃すわけにはいきません。
今年初の埴輪「盛装女子」(重要文化財)
「盛装女子」の解説文。埴輪の詳細な解説などいつもないので、細かいことは気にしていなかったのですが、改めて「なるほど」と思わされました。やっぱり奥が深いです、埴輪。
今年初の土偶「山形土偶」。すっきりスマートな埴輪とは全然違う印象(笑)。どちらも魅力的で、甲乙つけがたいですが。
今年二番目の埴輪「杯を捧げる女子」。こんなに彩色が鮮やかに、しかも緻密にデザインされた状態で残っている埴輪はめったにありません。ちょっとビックリでした。
続いて、連絡通路を通り、再び本館へ。
今年初の春信「追羽子」。春信画の「鼠、猫と遊ぶ娘と子供」という、子年ならではの作品も展示されていましたが、こちらのほうが好みだったので。
今年初の若冲「松梅孤鶴図」
興味がある展示室を見終わると、ミュージアムショップを物色。考古展示室の前にある企画展示室で見た「天皇と宮中儀礼」という展示がおもしろかったので、東博発行の「『旧儀式図画帖』にみる宮廷の年中行事」という本を購入しました。
本館を出たあとは、隣の東洋館でカタール王族のコレクションを展示する「人、神、自然―ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界―」を開催していたので、特別展だけを見て東博を後にし、次に西洋美術館へと向かいました。
現在開催中の「日本・オーストリア友好150周年記念 ハプスブルグ展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」のチケットを持っていたから行ったのですが、こちらの企画展はかなりイマイチでした。ベラスケスのマルガリータとかありましたが、いわゆるハプスブルグ家の肖像画展といった感じ。あまりにおもしろくなかったので、せめてエル・グレコでも観て帰ろうと思い、常設展も鑑賞したのですが、新館の版画素描展示室で開催していた内藤コレクション「ゴシック写本の小宇宙――文字に棲まう絵、言葉を超えてゆく絵」の展示が実に興味深く、こちらを見られたので幾分救われた気分になりました。ハプスブルグ展よりずっと見甲斐がありました。企画展だけだったら、東博を全部見ずに切り上げて西洋美術館に来たことを激しく後悔していたと思います。